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「キャリアをつくる独学力」

「キャリアをつくる独学力」(高橋俊介 東洋経済新報社)

キャリア開発や組織の人材育成についての研究を行う著者による、社会人の学びについての解説の本。全体的に、やや抽象的な感じがした。ただ、学ぶ際には道なき道を行く必要があるとの主張は、その通りだと思った。

 しかし、「リスキリング」と私が本書で提唱する「学びの主体性」としての独学とは、意味がまったく異なります。
 というのも、「リスキリング」には、会社の指示に従い、会社が用意した学習プログラムに沿って、表面的なスキルの再獲得を目指すような受動的な例が多く見られるからです。
(中略)
 いくら「リスキリング」を行っても、「学びの主体性」が低いと、変化に対応できず、「仕事自律」も「キャリア自律」も望むことはできません。(57ページ)

 中国人のマネージャークラスは、自社のビジョンやミッションへの渇望感が非常に強いといいます。
 彼らは「自社が優れたビジョンやミッションを掲げ、社会的使命を果たしている」という納得感があるからこそ、誇りを持って外にでて、多様な人たちと信頼関係を結び、関係性を広げていけると考えるのです。
 ところが日本人のトップは、ビジョンやミッションに対する関心が低いため、中国人のマネージャーたちは不安になるといいます。
 「安心社会」に染まった日本人のトップとの間で、意識のギャップが生まれるわけです。
 しかし現在、日本も「安心社会」から「信頼社会」への移行が強く求められています。(72-73ページ)

 予測可能性が低いなかで、「キャリア自律」に向け、どのようにすればチャンスを活かせるのでしょうか。
 ひとつの答えを提供してくれるのが、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した「プランド・ハプンスタンス・セオリー」(計画的偶発性理論)です。
(中略)
 クランボルツ教授は、500人以上のビジネスパーソンのキャリアを分析した結果、「キャリアの80%は予期しない偶然の出来事によって形成される」という興味深い結論を導き出しました。
(中略)
 自分では想定しなかったものの、結果的によいチャンスに恵まれた人とそうでなかった人の違いは何でしょうか。
 クランボルツ教授が着目したのは、「チャンスを活かすよい習慣」でした。
 キャリアが偶発的な出来事によって形成されるにせよ、日ごろから習慣として能動的な行動パターンをとる人はより好ましい偶然が起こるし、そうでない人はあまり起きない。
 つまり、偶発的に見えても、結果的には必然化できるということです。(86-87ページ)

 求められるのは「野球型組織」ではなく「サッカー型組織」(101ページ)

 地元のコミュニティ誌に、ジョンさんのインタビューが掲載されていました。
 「ジョンさんはチーズづくりをどこで修業されたのですか?師匠の方はいますか?」と質問され、ジョンさんは、
 「いいえ、どこでも修業していません。誰にも教わっていません。インターネットと本で自分で学びました」
 と答えたあとに、こう続けたのです。
 「日本人って先生病なんですよね。お師匠さんについたり、修業したりしないと学べないと思っていませんか。そんなことないんです。いまはインターネットもあるし、何だって自分で学ぼうと思えば、できるんですよ」
 学びの師弟関係から脱せよ。
 ジョンさんの独学のすすめは、とても示唆的です。(108ページ)

 歴史に学ぶときにも、リベラルアーツは大きな役割を果たします。
 「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」とはアメリカの作家、マーク・トウェインの言葉です。
 歴史は1回限りのもので、置かれた社会情勢や事情がすべて異なるので、そのまま繰り返されることはありません。とはいえ、現象には必ずそれを引き起こした背景となる構造があり、その構造が似ていれば、異なる相貌で似た現象が起こりえます。(229ページ)

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