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「やっぱり英語をやりたい!」

「やっぱり英語をやりたい!」(鳥飼玖美子 幻冬舎新書)

同時通訳者・大学教員・ラジオテレビ英語講師の著者による、英語学習法についてのさまざまな疑問に対する答えを紹介した本。随所に新鮮さを感じる本で、読んでいて楽しかった。NHK「太田光のつぶやき英語」という番組におそらく芸能人がいっぱい出ていて、そのエピソードについての話が前半は多かった。後半は著者の専門知識に基づいた話が多かったが、例えば生成AIの英語学習への活用など、新しい話題についての話も多かった。「外国語を学ぶ究極の目的は、異文化コミュニケーションだと思います」(265ページ)など、単なる語学習得だけでなく、より広い視点から英語学習をとらえていて、おもしろかった。

 自由に意見を交わす中で、大津さんが高校生になって初めて泳げるようになったときの水泳学習の体験を語り出しました。まったく泳げなかった自分がある日、突然、水にフワッと浮き上がる体験をした。その体験以降は、それまでのことがウソのようにみるみる上達していったというのです。そして、「英語を勉強していて、フワッと浮き上がる感じを体験したこと、ありますか?」と私に質問したのです。
 「フワッと浮く感じ」なんて考えたこともなかったので、とっさには思い浮かばず「浮かび上がるどころか、私は挫折ばっかりで……」とムニャムニャ答えてお茶を濁してしまったのですが、それから気になってかんがえているうちに、これは「進歩したという実感」のことなんだ、と思いつきました。(40ページ)

 「笑い」というのはコンテクストが大きく影響する高度な言語活動ですが、実はごくふつうの会話でも、コンテクストは鍵となるのです。
 英語で会話していて、英語話者が皆で笑っているのに、何が可笑しいのか分からないのは、コンテクストを共有していないからで、英語力の問題だけとは限りません。
 同じ言語を話していても、仲間内でしか通じない冗談は、コンテクストを共有していない人たちには意味不明で、疎外感を味わうことになります。

 付け加えると、言語コミュニケーションにおけるコンテクストとは固定されたものではなく、変化します。対話をしながら新たなコンテクストが生成される動的なものがコンテクストなのです。だから、定形表現を覚えただけでは意思疎通ができないことが起こるわけです。
 最近の異文化コミュニケーション研究では、コンテクストを自分で意識的に移動させることで、認知の枠組みを自分自身で変えることが提案されています。(86ページ)

 Q: テレビやラジオの英会話講座を続けていますが、なかなか話せるようになりません。どうしてでしょうか。
 A: 英会話講座をただ聞いているだけでは、受け身なので、すぐに会話でやりとりできるようにならないのは、やむを得ません。
 インプットは大事ですけれど、「話す」のは発信する行為ですから、自分で口を動かして練習しなければ身につかない。(100ページ)

 Q: 「読む力」「書く力」「話す力」「聞く力」のすべてをまんべんなく身につけなくては、「英語力」はつかないのでしょうか。
 A: 「読む力」「書く力」「話す力」「聞く力」はそれぞれ関連し連動しているので、どれか一つを取り出して「これだけが大事」とは言えない。英語力を高めるには、この4つのどれも大事なのです。
 ちなみに欧州評議会のCEFR増補版では、「伝統的な4技能では、複雑なコミュニケーション現象を捉えるには不十分」だと述べ、「話すこと」を、スピーチなどの「産出」(production)と対話の「やりとり」(interaction)に分けています。「書くこと」にも、ソーシャルメディアを念頭に、対話のように「やりとり」することを入れ、「仲介」(mediation)という技能も加えて、7技能に増やしています。(130-131ページ)

 Q: 英語力をつけるには英語を「読む」ことが大切ということですが、どんなものを読めばよいでしょうか。
 A: 経済に関わる仕事をしているなら英語の経済書を読むなど、得意な分野や興味がある分野の英語の本を読むのが、無理なく英文を読むことになります。(135ページ)

 リスニング力を高めるには、語彙を増やすとともに、英語に触れ、聞くことに慣れていく必要があります。それも聞き流すのではなく、意味をきちんと理解しながら聞くことが大事だというのは当然なのですが、それと矛盾するようなアドバイスもあります。
 全部を分かろうとしないことです。(142ページ)

 効果的に学ぶには、自分に合った学習方略を自分で見つけることが秘訣です。自分にはどういうやり方が合っているのかを自分で探して見つける。もちろん、学校での英語学習は、先生を選べないし、宿題やテストがあるから自分が好きなようにはできないわけですけど、自習や独学なら自分で選べますよね。
 学習方法は多様です。一つに絞る必要はないから、どっちにしようかなぁ、などと迷っていないで両方やってみる。気に入った学習法を好きなように組み合わせれば効果あり。(201ページ)

 Q: 歳のせいか、新しいことを覚えるのに時間がかかるし、すぐ忘れます。中高年向きの英語勉強法はありますか。
 A: あの、「歳のせい」とか言うの、やめません?
 中学生は記憶力が抜群の年代ですけど、それでも英語についての悩みを聞くと、「単語が覚えられません」「暗記が苦手なので英語は嫌いです」という答えが多い。若いからといって、すんなり覚えられるわけではないのです。
 そもそも日本人は、年齢を気にし過ぎじゃないですか? 知的好奇心や「学びたい」という意欲に、年齢は関係ない。
 世界でシニア世代がどれだけ活躍しているかを、ソーシャルメディアで見てみてくださいな。(216ページ)

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