見出し画像

「クリエイティブを共有!」

「クリエイティブを共有!」(オースティン・クレオン 千葉敏生 実務教育出版)

絵を描く作家で、新聞記事の黒塗りで作った詩集の作者として知られる著者による、作品を共有して、世の中に知ってもらうための本。以下のサイトにも"Austin Kleon is a writer who draws."とある。

作品を作って公開し、興味を持ってくれた人とコラボしたりして、新たなものを作り上げていく、そのような創造的なプロセスで大切なことをきちんと述べている良い本だと思った。

 世界は急速に変化していて、僕たち全員がアマチュアになりつつある。プロでさえ、成功するためには、アマチュア精神を持ちつづけ、不確実性や未知のものを受け入れることが何より大切だ。(26ページ)

 作品を共有する最高の方法は、「自分の学びたいことは何か」と考え、みんなの前で学習すると誓うこと。それが第一歩だ。そして、天才ではなく地才になり、ほかの人々が共有しているものを観察し、みんなが共有していないものに着目する。君の努力で埋められる"穴"を探すわけだ。初めはどんなに下手くそでもかまわない。当面はお金や出世のことなんて気にしないこと。専門家やプロになることなんて忘れて、アマチュア精神(ハート、愛情)を前面に押し出そう。君の愛するものを共有すれば、同じものを愛する人がきっと君を見つけてくれるはずだ。(27ページ)

 見せるものが何もないときは、どうやって作品を見せればいいのか?その第一歩は、君のプロセスの断片や残骸を拾い集めて、みんなと共有できる何か面白いモノを作ることだ。つまり、目に見えないものを、ほかの人が見えるものへと変えるわけだ。ジャーナリストのデイヴィッド・カーは、学生へのアドバイスを訊かれると、こう答えた。「モノを作りなさい。誰も君の履歴書になんて興味はない。君のその小さな指で作ったモノが見たいのだ」
 だから、君自身の行動を記録するドキュメンタリー作家になろう。まずは業務日誌をつけはじめることだ。自分の考えをノートに書き留める。音声レコーダに吹き込む。スクラップブックをつける。仕事のプロセスの色々な段階を写真に撮りまくる。仕事の様子を動画に撮影する。これはアートの制作じゃない。君の周囲で起きていることを記録していくだけでいい。手元にある安くて便利なツールを活用しよう。最近では、ほとんどの人が本格的な"複合メディア・スタジオ"をスマートフォンに入れて持ち歩いている。
 共有するかどうかはともかく、仕事をしながら君のプロセスを文書や動画として記録することは、それなりの価値がある。自分の仕事がより鮮明に見えてくるし、前進している気分になる。しそて、いざ共有する準備が整ったとき、ありあまる素材の中から選べるわけだ。(49-51ページ)

 たとえ完璧でない未完成の作品でも、フィードバックがほしいなら、隠し立てせずに作品を共有することが大切だ。でも、何もかも共有しないこと。「共有」と「共有しすぎ」では大違いなのだ。
(中略)
 他人に何かを見せるときは、必ず「だから何?」と問うようにしよう。考えすぎは禁物。直感に従おう。共有するかどうかで迷ったら、ひとまず24時間だけ寝かせてみる。引き出しにしまって、部屋を出よう。次の日、引き出しから取り出して、新鮮な目で見てみる。そして、「これは役立つだろうか?面白いか?上司や母親に見られても平気か?」と自問するのだ。あとに取っておくのは悪いことじゃない。(65-67ページ)

 だから、この本から1つだけ学ぶとしたら、ぜひこれだけは覚えておいてほしい---ドメイン名を登録すること。「www.[君の名前].com」というドメイン名を買おう。君の名前がありきたりだったり、自分の名前が気に入らなかったりするときは、ハンドルネームでも別名でもいい。とにかく登録しよう。そうしたら、Webホスティング・サービスを契約し、Webサイトを立ち上げる(というと専門的で難しく聞こえるが、実際はそうでもない。何回かGoogle検索をし、図書館で何冊か本を借りてくれば、やり方がわかるだろう)。自分でサイトを作る時間や気力がなくても、何人かのWebデザイナーの手を借りることならできる。おしゃれなWebサイトを作る必要なんてない。存在するだけで十分なのだ。
 Webサイトを自己アピールの道具ではなく、自分づくりの道具と考えよう。オンラインなら、君が本当になりたい自分になれる。Webサイトを君の作品やアイディア、興味のあるもので埋め尽くそう。(75ページ)

 君のプロセスの中で、君が関係を築こうとしている相手にとってタメになるものを共有できないか、考えてみよう。君が身に付けた技術は?技は?使うのが得意な道具や素材は?君の仕事から得られる知識は?
 何かを学んだら、すぐに後ろを振り返って、誰かに教えよう。読書リストを共有しよう。役立つ参考資料を教えよう。写真、文章、動画を使って、何かのレッスンを制作し、オンラインに投稿しよう。君のプロセスをステップバイステップで案内しよう。ブロガーのキャシー・シエラはこう話す。「人々がもっと上手になりたいと思っている物事を上手にできるよう手助けしましょう」(125-127ページ)

 ファンがほしいなら、まずは自分がファンになること。コミュニティに受け入れられたいなら、まずは自分がそのコミュニティの善良な市民になること。オンラインで自分の作品をアピールしてばかりいるなら、君はやり方を間違っている。結びつけ役になるべきだ。作家のブレイク・バトラーの言葉を借りれば、「開かれた接点になる」べきなのだ。何かがほしいなら、まずは与えること。気づいてもらいたいなら、まずは気づくこと。たまには黙って話を聞こう。じっくりと、丁寧に。(135ページ)

 人生は「誰を知っているか」に尽きるというのは本当だ。でも、「誰を知っているか」は、「君は誰なのか」や「君は何をしているのか」によって大きく左右される。そして、君が知っている人々も、君がいい仕事をしていなければ、君に何もしてあげられない。「人脈なんて何の意味もない」と音楽プロデューサーのスティーヴ・アルビニは話す。「僕の持っている人脈は、みんな僕のやっている物事の延長上にあるものばかりだ」。アルビニは、自分の仕事の腕を磨くかわりに、人脈づくりばかりに時間と労力を無駄にしている人が多すぎると嘆く。「物事の腕を磨くことこそ、影響力や人脈を手に入れる唯一の方法なんだ」
 君の大好きなモノを作って、君の大好きなことについて語ろう。そうすれば、同じようなモノが大好きな人たちが寄ってくる。単純明快だ。(139-140ページ)

 相手に好きなだけ殴らせる
 作品を世に出すときは、よい反応、悪い反応、そして不快な反応を覚悟しておくこと。作品に目を留める人が増えるほど、批判も増える。そこで、パンチを受け止めるコツを紹介しよう。
・力を抜いて深呼吸する
・首を鍛える
・パンチをかわす
・弱点を守る
・バランスを保つ
(157-160ページ)

 「みんなにどう思われるかを気にするのではなく、肝心な人にどう思われるかだけを気にした方がいい」
 ブライアン・マイケル・ベンディス(アメリカの漫画原作者)
(161ページ)

 だから、野心を抱こう。常に忙しくしていよう。もっとビッグに考えよう。観客の幅を広げよう。「本物を追求しつづける」とか「オレは裏切らない」という言い訳を足かせにしちゃいけない。新しい物事に挑戦しよう。今よりも君のやりたいことに近い仕事をするチャンスが現れたら、遠慮なく「イエス」と言おう。今よりお金は儲かるけれど、君のやりたい仕事から遠のいてしまうようなら、「ノー」と言おう。(182ページ)

 自分のショーを途中でやめない
 「私たちの業界では、絶対にやめちゃいけないの」とコメディアンのジョーン・リバースは言う。「ハシゴにしがみつかなきゃ。手を切り落とされたら、肘でしがみつきなさい。腕を切り落とされたら、歯で食らいつくの。やめちゃいけない。次の仕事がどこからやってくるか、わかったもんじゃないんだから」
 何もかも計画することなどできない。小説家のイサク・デイーネセンは、「希望も絶望もなく、ひたすら毎日」、仕事に励むしかないと記している。成功を当てにすることはできない。君にできるのは、成功の可能性を残し、チャンスが目の前にやってきたら飛び乗る準備をしておくことだけなんだ。(190-193ページ)

 「オレは2~3年おきに、しばらく活動を中止する。そうすることで、オレは常に売春宿の新人嬢でいられるんだ」
 ロバート・ミッチャム(アメリカの俳優) (203ページ)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?