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厚塗りのススメ(グリザイユっぽいやつで)

初めまして、Fiesta(フェスタ)といいます。
本業のウェブデザインの傍ら、オリジナルキャラクターや好きなゲームなどのファンアートを描いています。あと極々稀にネットラッパーになります。

さて、自己紹介もほどほどに本記事の概要について。

こちらの記事は、僕が普段行なっているいわゆるグリザイユ画法のような厚塗りのメイキング&解説記事になります。
制作途中における分かりづらい点を、あくまで自分のための備忘録として記述したものになりますので、過度な期待はしないで頂けると幸いです。

またこの記事が、絵に関して悩んでいることを解決する何かしらのキッカケにでもなれば嬉しく思います。
それでは、順を追って制作過程を解説して行きますので、少しの間お付き合いください。
※注意:制作ツールはiPad proとProcreateになりますが、他のソフトウェアでも十分に応用可能な方法となっています。小難しい機能等は使っていませんので、Procreateじゃないよ!という方も目を通して頂ければ幸いです。


1.ラフスケッチ

今回は初めからこの記事を執筆する予定でしたので、僕のオリジナルキャラクターを用いて夏をテーマにした絵を描こうと思います。

具体的には、オリジナルキャラクター(以下ローザ)は元気溢れる健康的で活発な女の子という設定なので、"夏の暑さを吹っ飛ばすような快活な印象"と"今年くらいはリゾートみたいな海行きてーなーという願望"の二つをテーマに据え、これらをラフに起こしていきます。

で、完成したものがこちら

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海の方向を指差し、早く行こうよとでも言いたげにこちらに向かって手を差し出しています。ラフスケッチの段階では、"なんかこんなんにしよかな"というのをひたすらに描き出して行きます。上記の画像では綺麗に線が整いつつありますが、実際の僕のラフスケッチはさらにぶっといブラシで画面全部が真っ黒になるような状態になっています。それを消しゴムで削り出すような形で上記画像の状態まで持っていっています。

ラフスケッチの時点では大した技術は必要ないのかなと思います。強いて言えば、ただひたすらにイメージを膨らませることが重要でしょうか。僕の場合は、"なんかこんなん"を具体的にするために、画像検索を繰り返し、イメージに合致した画像をストックしていっています。今回の場合は、ビーチの写真を集めまくりました。

※1 ここでいうイメージとは写真全体の雰囲気や色合い、波の動きや雲の形など"あーこれこれこの要素が欲しかってん"というものです。

※2 個人的に思うことで、実際のところは分かりませんが…画像検索は英語で行うことで高いクオリティのものを見つけられる可能性が非常に高くなる気がします。まあインターネット上の情報のほとんどが英語を用いている以上当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが。


2.明度およびライティング

さて、グリザイユ画法と呼ばれるものを行うに当たって最も重要なものがこの明度を決めることではないかと思います。どれだけ色がちぐはぐでも、この明度がしっかりと定義されていればそこまでぐちゃぐちゃな絵にはならないと思います。

ところで、なぜ僕がこのグリザイユ画法を用いるのかというと、この明度をモノクロの状態で描きたいからに他なりません。

なぜならば、カラーで直接色を塗る際には考えなければならないことが多すぎるからです。肌や髪、服やアクセサリーそれぞれにある固有色、それに光が当たった色、反射光、落ちた影の色、徐々に色が変わっていく陰の色等々。

これらを考えながら色を塗っていくことに非常に疲労感を覚えます。書き慣れたものであればそうでもありませんが、新しく描き出すものなどはそれはもう億劫になってしまいます。それでも描くことは描くんですが。

で、そのような状態を少しでも和らげることが出来たらばと思い考えた末にグリザイユ画法というものに出会い、明度、色彩と段階を踏んで描けることの素晴らしさを謳歌するに至りました。ビバデジタル。

さて、では段階を追って先のラフスケッチを明度のみで塗り分けていきます。

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先のスケッチから少し進展していますね。ラフスケッチはこの段階でだいぶラフな線画にしています。この太い線で線画というのもおこがましい気はしますが。

レイヤー構造は、線画色のベース背景となっています。

さて、この状態をベースにしてモノクロで塗っていくのですがここで一つヒントがあります。

その昔僕は2年ほどデッサン教室に通っていたことがありました。鉛筆デッサンと言うと通常数種類の濃さの鉛筆を用意して臨むと思うのですが、その教室の先生はHB一本で鉛筆デッサンをさせる方でした。

その理由としましては、白と黒の範囲をHB一本で描ける範囲に限定することで明度を描きやすくするということでした。(たぶんそうだったと思います。なにぶん数年前のことなのでうろ覚えです…先生すんません)

さて、そこで一番最初に学んだことがHB一本を用いて白と黒を九つに塗り分けたグレースケールを作ることでした。これを作ることにより、HB鉛筆の白黒の最大値を知ることでデッサンを描きやすくする、という意図だったと思います。(再三言うように数年前のry)

で、明度を塗り分けるということは=デッサンと同じことと僕は思っています。なので当時学んだことと同様に、僕は白黒のグレースケールのパレットをデジタルでも作りました。

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上記画像の右にあるグレスケパレットこれを用いて、想定している固有色と近い明度を持つグレーを塗って行きます。そしてそれぞれの固有色に当たるグレーを塗ったのが上記画像の左のローザちゃんと背景の海と空ですね。

続けてこの固有色のグレーを塗ったベースに光を当てた際の明度を塗り分けて行きましょう。
※この段階では、というよりも全体を通して基本的に縁のボケたエアブラシのようなブラシを使うのはやめたほうが良いと思います。最終的に指先ツールなどでブレンドする形にしたほうが個人的には塗りやすいんじゃないのかなあと思います。

光と影を塗り分ける

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光の当たっている部分と影になる部分を分けました。
写実的な絵柄でもなければざっくりでいいと思います。大体デジタルで絵を書く人&イラスト講座とか読みたい人のほとんどが描くのは秋葉系(死語)のイラストだと思うので(暴論)、このまま進めます。写実的な絵を描きたい人はたぶん見てないよね…?

光の当たっている部分に陰を加える

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薄くて分かりづらいかもしれませんが、先ほど塗り分けた内、光の当たっている部分に陰を加えました。本来の意味と合っているか分かりませんが、これを僕は陰/Shadeと呼んでいます。ミュージシャンの方ではありません。大番長めっちゃ好きやった。

影の部分に反射光を加える

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さて、今度は影の部分に反射光を加えました。今回は分かりやすく反射光用のレイヤーを作成し、オーバーレイ効果を用いたグレーで反射光を塗りました。
普段はめんどくさいので影/Shadowのグレーレイヤーを消しゴムで薄く消していっています。


さて、グリザイユの根幹に当たる明度の設定は以上でおしまいです。

とてもシンプルだったのではないでしょうか。階調でいえばたったの4階調です。

・光の当たっている部分(ベースカラー/Base Color)
・光の当たっていない部分(影/Shadow)
・だんだんと光が減衰している部分(陰/Shade)
・影を照らす光源が反射した光(反射光/Reflected Light)

たった四色のグレーで塗り分けるこう考えるととても簡単に出来そうな気がしてきませんか?個人的にはまず最初にShadeを一切考慮しないことがコツだと思っています。こいつが途中Shadowと一緒くたになることで頭がこんがらがるのかなあと思います。実際、自分の腕を光に当てて見てみると案外shadeってうすーくあるだけだったりします。場合によりけりですが。

とりあえずエアブラシで柔らかく陰/shadeを、っていう感じ、これって往年の美少女ゲームの塗り方が今のイラストにも根強く残ってるからだったりするのかなあと思うことがあります。もちろん僕も大好きな塗り方ではありますが、何でもかんでもすれば良いってもんじゃないと今では思います。メリハリが大事かなと。


3.さあ固有色を塗りましょう…でもその前に

明度を塗り分けました、では固有色を乗せて行きましょう!
と行きたいところですが、まあグリザイユがなんかうまくいかないのがこの段階だと思います。僕も何度もつまづきました。

でもまあとりあえず固有色を置いてみましょうか。(乗算レイヤーです)

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快活とは程遠い印象になってしまいました。
肌に生気がなく死人が三途の川の縁で走っているようです。デッドマンウォーキングです。ランニングですね。

僕はこういった現象に何度も悩まされてはグリザイユを投げ出してきました。固有色をオーバーレイで乗っけても上手くいきませんでした。
しかしここで天啓が訪れます。魂の声に耳を傾けろと神父然としたJBとSam Mooreが語りかけてきます。ジーザス。アーメンハレルヤピーナッツバター。

グラデーションマップを使ってモノクロに色味を足しましょう。

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で、足したのがこちらのグラデーションマップです。夕焼けのようなこちらのグラデ、procreateに元から入っているものです。人間に色味を足すのに一番いいかなとよく使っています。グラデーションマップを多用するプロの方々は色々自作のものを用意されていますが、今のところこれで問題ないのでこれだけでやっています。背景も同じものを適用しました。

※クリップスタジオやPhotoshopでは調整レイヤーというものがあり、グラデーションマップだけのレイヤーを作ることが出来ます。しかしProcreateではその機能がないため、モノクロ絵を複製し、複製したそれにグラデマップをかけるようにしています。

さて、しかしこのまま色を乗っけたのでは流石に色が濃すぎます。
なのでグラデーションマップのレイヤーの不透明度を30~40%くらいにします。

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セピアカラーみたいになりましたね。
さて、これにようやく本来表現したい色を乗っけていきます。

そして乗っけたものがこちら


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だいぶ肌にも赤みが刺して生気が宿りました。
しかし背景の海は未だ物々しい感じがします。夜の海であればそれっぽい感じもしますが、想定しているのはリゾートのような明るい海。これに関しては単純に明度を間違えていますが、重要なのはキャラクターなのでひとまずほったらかしてそのまま進めます。


さらに明るい階調を加える

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モノクロの段階では入れられなかった階調をここにきて加えます。
というのもベースカラーに当たる階調の色を白100%で塗っていたためです。白100%よりも明るい色はありませんので、色味を加えて明度が下がったこの段階で加えることになります。これにより、階調は五つになりますね。

さて、ここまでがいわゆるグリザイユ画法と呼ばれる技法を用いた作画だと思います。
残りは完成に向けて、ただひたすらに塗り重ねていくだけになります。
といっても、明暗の幅はほとんど定義されている状態なので、細かいところを書き込みつつ、必要に応じてオーバーレイレイヤー等を用いて色味を加えたりするだけでいいでしょう。
参考となる資料を見ながら頑張って塗り重ねて行きましょう。


4.あとはひたすら書き込んでいくだけ!

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背景も写真を参考にしながら塗り直し、だいぶイメージ通りのものが出来てきました。

ここで気付いた人もおられるかと思いますが、レイヤーを見て下さい。
ローザちゃんの体がぶつ切りにされているのが分かると思います。
これは、先ほどの段階で全てのレイヤーを統合したものを(背景を除く)塗りやすくするためにパーツごとにぶつ切りにしたものです。
こちらの基準は単純に分かれてた方が塗りやすいと思った部分を分けているだけになります。手前に来るものを上にしておくとより良いですね。

さて、本来はここで完成のつもりだったのですが、ここにきて少し疑問に思う点が出てきました。それは、

快活さを売りにした元気っ子のイメージよりもなんかエッチさが勝ってない?

ということでした。
これはある種想定内でもあるのですが、流石にここまで露骨では品がない。というかメイキング記事を作るにあたり露骨に性的な印象を受ける絵はどないやねん。ということで、より快活さを表現するものを書き加えて行きたいと思います。


1.彼女がせっかく海に向けて指を差しているので、この先に海自体ではなく何か彼女が興味を引くようなものを配置する。

2.こっちに手を差し出してまで一緒に行こうよと誘いつつも、笑顔で大きな口を開けてまで興奮している状態である。

ことを表現として追加することにし、結果以下のようになりました。

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・なんかやばそうな背びれの魚とそれに群がる海鳥たち
・脱ぎ捨てたパレオと飛んでいく麦わら帽子

の二点を追加しました。
これによって、

・やばそうな魚類を見つけても好奇心が溢れる恐れ知らずな印象
・身に纏うものすら気にせず今すぐに駆け寄ろうとする元気さ
・そんなワクワクした自分の感情をこちらにも共有しようとする親しみやすさ

といった印象が彼女に付与されたのではないでしょうか。
エッチさ薄れましたよね?色気よりも快活さが印象付けられますよね?

はい、受けての印象がガラッと変わったところでこれで完成にしたいと思います。最後に書き足したパーツが受ける光を足し、全体の色味を調整して完成になります。

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【パレオを脱ぎ捨て走り出せ!】とタイトルをつけて完成です。

まだまだ書き込む余地はあると思いますが、普段から基本的に長くても大体3,4時間で描く!と決めていたのでここまでとします。個人的にはなかなかお気に入りの一枚になりました。


5.最後に

いかがでしたでしょうか?(いかがわしいブログ記事のように)

初めてのメイキングということもあり、長々とした駄文だったかと思いますが、少しでも参考に、またお楽しみ頂くことが出来たのであれば幸いです。

改めて自分の作業を振り返るということは滅多にないことですので、自分にとっても良い経験になりました。もしこんな記事を最後まで読んでいただけたのであれば感想等を頂けたらと思います。いいねボタンとかあるんでしたっけ?それだけでも十分書いた甲斐があったなあと思えますので、どうぞよろしくお願い致します。

さて、最後になりますが、以下に僕のTwitterアカウントとSkebのマイページのリンクを貼っておきます。もしよろしければTwitterのフォロー&Skebにてご依頼等頂ければ誠心誠意対応させて頂きますのでこちらの方もどうぞよろしくお願い致します。イラストのことを話せる友達がほんと少ないので、しゃあないから付き合ったるわという方がおられましたら是非話しかけて下さると嬉しいです。

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Fiesta(フェスタ)
オリジナルとその時々でハマっているもののイラストを描きます。
最近は主にガルパン、VA-11 Hall-A、LoLにハマっています。
Twitter:https://twitter.com/Fiesta_303
Pixiv:https://www.pixiv.net/users/476722
Skeb:https://skeb.jp/@Fiesta_303


おまけ

今回描いたローザちゃんは、その名をローザ・リンダ・キャンベルといい、剣と魔法のファンタジー世界で化物を狩りながら旅をしている剣士なのである。
炎を纏って二振りの剣を振り回す危ない奴だぞ!気を付けろ!

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※こちらは今回解説したグリザイユ画法を確立する前の塗り方で描きました。

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