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2021年刺さったアーティスト Part.4

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 皆さま、いかがお過ごしでしょうか?年内も残り2週間足らずってところで #今年の9枚 をまとめている時期かと思いますが、絶賛悩んでいる最中でしょうか?、僕は先日「結城友奈は勇者である 大満開の章」がきれいに幕を閉じたことで絶賛ロス中です。一方「白い砂のアクアトープ」は観る前からストレスになりそうと思って切ってしまいました(すいません)。Ryotaです。

 今回は第4弾として、16組ほど琴線にぶっ刺さったアーティストを紹介して行きます。第1回から続いておりますが、国内と海外、ジャンルを混ぜているのは意図的なものです。ジャンル関係なく良いものは良いので。そういうことです。

1. PROMPTS /  Asphyxiate feat. Ryo Kinoshita (シングル)

 東京発ニューメタルコア・ハイブリッドメタルコアのシングル。来年でPROMPTS始動10年&現体制が始まって5年になりますが、今年はキャリア初の全国ツアーを実施したりアメリカのレーベルModern Empire Musicと契約したりと、「2021年一番伸び幅がすごい国内メタルコアバンドは?」って聞かれたら僕はPROMPTSって答えます。

 PROMPTSといえば徹底的にダウンチューニングした地鳴りのごときリフとモッシュパート、ワーミーなど飛び道具的に繰り出してくる不穏なサウンドエフェクト、さりげなく挟まれる変拍子、「誰もコピーできないくらいテクニカルな演奏をしよう」としているフュージョン畑出身のDr.Heaven氏の変態的なドラミングなど上げられますが、今作では以前から凶悪なスクリームを放つ韓国出身のVo.PK君の「自分が出せる声を全部入れてみよう」という意欲的なアプローチと、持ち味の一つである叙情パートとクリーンパートを排除して、ALPHA WOLFVCTMSといったニューメタルコアとも通じる、不穏かつ病的なヘヴィネスとアグレッシブ性にステータスをガン振りした凶悪な新曲に。初めて聴いたときPK君のスクリームで家の窓ガラスが割れそうになりました。また、ライブでもサポートしているFrom The Abyss(活休中)のヤスイ君がPK君と「人がいっぱい◯ぬ感じ」をイメージして作ったサウンドエフェクトのアレンジにも要注目。

 活動10周年&現体制5周年が近づき、世界に挑戦状を叩きつけたバンドにとってターニングポイントになること間違いなしの1曲。


2. Phinehas / The Fire Itself (アルバム「The Fire Itself」収録)

 アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス出身のクリスチャン・メタルコアバンドの新しいアルバムから。クリスチャンバンドご用達のレーベルSolid Stateに移籍して初のアルバム「Dark Flag」はミサイルを飛ばしている某北の国の非人道的行為を取り上げたことで(個人的に)話題になりました。音楽的な側面としては初期からずっと温故知新な北欧メロデス直系メロディック・メタルコアであり、「Till The End」から加入した新世代のギターヒーローDaniel Gaileyが加入してからは更に純度が上がった印象です(最近はFit For A Kingでも活動しております)。今作もメタルコアをPhinehasらしく清々しいほどに突き止めた作品に仕上がっております。

 Phinehasの音楽性は上述した通りのテクニカルなシュレッドリフ、アグレッシブなブレイクダウン、キメるところはしっかりとキメるクリーンボーカル(クリーンとスクリームパートの切り替えが自然)、を、そしてどこまでもストレートでクサいギターソロなど、温故知新ながらも一発で彼らの音楽だとわかるメタルコアなんですが、その要素をさらに煮詰めた傑作になっています。最近ありがちなローチューニングのヘヴィネス要素やオルタナティブ要素を取り入れて耳障りを良くしたニューコア要素は飽和状態だったので、その点もこのバンド独自の進化を遂げたんじゃないかと思います。

 歌詞も今どきのメタルコアにありがちな「不安や苦痛に浸る」ようなものではなく、魂を滾らせるような背中を押してくれる熱いものになっており、前述のメタルコアサウンドも相まって聴いているだけで体と心が熱を帯びてくるそんな1枚。


3. RiTTLEBOY / 自分が自分でいられるうちに (アルバム「Isolation」収録)

 東京・町田を中心に活動しているポエトリーハードコアの最新アルバムから。昨年も東京発メロディックハードコアStrandedとのスプリット「flat side」で取り上げておりますが、等身大で飾らないポエトリーと感情をストレートに引き出したシャウトを交えた、フリーで飾らない日本詞のリリック、More Than Life, Touché Amoré,  Defeaterあたりからインスピレーションを受けたであろう、浮遊感や静と動が顔を出しながらも、徐々に盛り上がりを見せる楽曲が心に刺さるのは今回も変わりません。自分も何度か東京遠征したときにライブを観ており、その度に心が震えます。

 些細なことに関する、皆にも経験がありそうな日常レベルで感じるフラストレーションを代弁しているかのようなリリックに注目してほしいとは思っており、自分にも歌詞の状況に当てはまりそうでグサグサ刺さってしまいました。また、コロナ禍でなければ生み出されなかったであろう歌詞も内包しており、Tr.6のMV曲「自分が自分でいられるうちに」ではコロナ化での自粛期間の「孤独」の中での葛藤と選択を、Tr.8「君のおかげで」では、人と人のつながりがコロナ禍という出口の見えないトンネルの先の光を照らすであろう希望の唄になっております。

 あと、12/26(日)に昨年4月にやろうとしてコロナでポシャった前述のスプリットアルバムリリースツアー大阪編が火影で開催されるので、遊びに行こうと思ってます。膝ついて泣きましょう。


4. Distinguisher / We All Suffer (シングル「Nothing Is Real / We All Suffer」収録)

 アメリカ・ネバダ州ラスベガス発ニューメタルコアバンドの最新シングルより。こちらもPROMPTSと同じくModern Empire Musicのバンドであり、8弦ギターを用いた地を這うようなサウンドを用いたグルーヴィーなニューメタルコアサウンドを放ちます。このバンドを知ったのは、前作のフルアルバム「Hell From Here」から先行でリリースされた「Lucy」のPVだったんですが、音源フルで聴いてみるとそこら辺の同じようなことやってるバンドとはドラムやリフ回し、また時折挟まれるメロウかつ不穏なパートとクリーンボーカルなど、楽曲のアレンジが頭一つ抜きんでる印象でした。

 フルアルバムのリリースを経て、2曲入りのシングルを3月にリリースしたのですが、Tr.2 「We All Suffer」はニューメタルの影響を受けつつもメロディアスな路線に楽曲を展開。実際にバンド側も「他の曲のパートは自然に思いつくのに、この曲のボーカルラインは本当に難産だった」と語るほど挑戦的なアプローチが伺えます。歌詞も「生きているうえで絶対に不可避なことで、誰もその答えを知ることはないもの(=死んだ後はどこに行くのか?)」とかなりストレートに書いたとのこと。

 RNRが「Sworn Inのメンバー曰く最高のライブバンド」とのことなので、 そういう現地の声を信用すれば間違いなく盛り上がると思います。来日したときはBloom in the CrevasseSUGGESTIONSかPROMPTSあたりと対バンしてほしいです。


5. Squall of Scream / 金糸雀 (EP「What Color」収録)

 昨年Stay Nerd / Stay Emotionalにも出演していただいた「激しく、儚く、切ない」をコンセプトに活動している同人サークル兼バンド。2016年に東方同人サークルとして始動、2019年の暮れにはバンドとしてライブ活動も開始した彼らですが、「このまま同じことを続けて、その先には?」と自問自答の末、新たなリスナーへのアプローチとしてオリジナルEPの制作を決めたとのこと。アルバムのコンセプトとして「リスナーにとって、僕たちの音楽はどのように映るのか?」という問いかけだったと思います(ここら辺記憶があいまいです、すいません)。

 「オリジナル曲を製作する過程で、東方のメロディの良さを改めて痛感した(意訳)」と語る今作は、Vo.タクトさんのスクリームが全編にわたり日本語詞で繰り広げられ、クリーンVo.のユイさんも今までの音源(S.O.S.加入前含)ではやらなかったボーカルスタイルなど、意欲的なアプローチが見られ、特にユイさんのそれは「これ本当にユイさんが歌ってんの?」って疑ってしまったほどです。中心メンバー以外にもライブメンバーも編曲に携わった、ある意味「バンド」としての初音源。

 楽曲はアニメやゲームから着想を得たと語っており、個人的にはTr.5の「金糸雀」に注目してほしいです。聴いているとなぜか某Keyのゲームに出てくる「むぎゅむぎゅ言ってる金髪ツインテールの女の子が灯台にいる」情景が思い浮かぶから。きっと気のせいではないです。次は「白昼夢の青写真」から着想を得た曲をやってほしい(願望)。


6. Annalynn / Closer To The Edge (アルバム「A Conversation With Evil」収録)

 微笑みの国タイを代表するメタルコアバンドの最新アルバムが、Crystal LakeのレーベルであるCUBES RECORDSからリリース。昨年はColdrainが主催するBLARE FESTやRNR主催のVoid Of Vision(前回参照)の来日ツアーでも帯同。その時は8~9弦ギターから奏でるローチューニングのブルーヴィーなニューメタルコアで衝撃を受けたのを覚えています。わかりにくい人に説明すると、最近のEMMUREみたいな感じでした。そのあと家で聴いてたら音源の低音を地震が起こったのと勘違いしました。

 アルバムのコンセプトとして「抑鬱との戦い」をタイトルに込めた今作は、前作「Deceiver / Believer」で観られた上述のニューメタルコア要素は残しつつもメロディアスなギターソロやクリーンボーカルを取り入れてより間口を広くした印象です。特に顕著なのがTr.2「Closer To The Edge」と、前述のColdrainのVo.Masatoがfeat.しているTr.4「Damage Control」でよりキャッチーで聴きやすくなった曲もあれば、Thy Art Is MartyrのVo. CJがfeat.しているTr.5「Holy Gravity」やTr.7の「Levelling God」など前作路線のソリッドでアグレッシブな楽曲もあり、作風を壊さない程度の絶妙なバランスでバラエティを持たせております(個人的にはアグレッシブな曲調のほうが好きですが)。

パフォーマンスもプロダクションもすでに世界と戦えるレベルに到達しており、コロナ明けて海外渡航が復活したら再来日待ったなし。


7. Lenoria / Prologue

 Draw The EmotionalForeground Eclipseなど同人ラウドミュージックに影響を受けた、「あなたの心に何か1つ残せますように」という志を胸に抱き、生きるうえでこの胸を刺す切なさを歌と叫びとサウンドに込めたどこか切なくキャッチーな「セツナラウドロック」を放つサークルから待望の1stフルアルバム。社会人メンバーで構成されており、一生音楽を続けることをモットーに取り組むスタンスには敬意を払っております。元々静岡で活動していたのですが、Gt/ComposerのKTSさんとダミーメンバーのまゆゆさんは昨年大阪に引っ越してきました。まだ一緒に遊びに行ったことないけど。

 今年の春M3でリリースされたフルアルバム「Prologue」は間違いなくKTSさんのこれまでの音楽活動の集大成的作品なんですが、どこまでも他人や自分の弱さに向き合い寄り添ってくれる女神めいた慈愛が垣間見える印象です。Tr.2のRayとかまさにそういう作風です。また、随所でバックで鳴っているピコピコしたトランス調・暖かなピアノ調のシンセは彼のルーツとなるVOCALEAMOや2010年代初期~中期のポストハードコアからの影響下を感じます。

 作品通して彼らが自分自身の青色の心象風景を朧げかつ不完全ながらも確かに形にする過程にあるからこそ「Prologue」というタイトルを付けたんだと考えます。彼らとKTSさんが思い浮かべる少女「Lenoria」の物語はどのように展開していくのか楽しみな1枚。

 あとこの作品と関係ない話ですが、来月のPerLeのラストライブ&余日とのツーマン一緒に観に行きましょうね、KTSさん?


8. Wildheart / Backburner (アルバム「Global Crisis」収録)

 オーストラリア・クイーンズランド州ブリズベン出身のメタルコア・メロディックハードコアバンドWildheartの最新作から。馴染みの薄い方も多いバンドなので簡単に紹介すると、For The Fallen Dreams初期のDream On Dreamerあたりから影響を受けたダウンチューニングの古き良き叙情メタルコアサウンドに、Vo. Axelの獰猛なシャウトと男くさくもメロディアスなクリーン、そしてIn Hearts WakeやArchitectsにもあてはまる社会や環境破壊に対する怒りに満ち溢れた歌詞が特徴です。いままでシングルやEPを何度かリリースしてきましたが、11月に待望のデビューアルバムをドロップ。

 タイトルやアルバムのアートワークの通り、この作品もオーストラリア国内を取り巻く様々な物事に対する怒りが込められており、先行でMVが公開されている「Backburner」では環境や生態系の破壊(特に2019~2020年に同国で発生した森林火災)、「The Lucky Country」「Rising Tide」はオーストラリアの先住民の権利を蹂躙している資本主義に対して、彼らの憤りを感じるようなブチギレトラックをどこか懐かしいメロディに乗せており、遠い異国で起こっていることを対岸の火事とスルーさせない気迫を感じます。

 来年にはオーストラリアの名だたるバンドが集うUNIFY Gatheringにも参戦が決まっているこのバンド、これからの活動が楽しみですね。


9. Lost in Seiren / Perish (シングル)

 名古屋を中心に活動する、メタルコアを軸にエモーショナルな独自の世界観を放つバンドから。ピアノやオーケストレーションなど多種多様な楽器を駆使して作られる彼らの音楽は、大胆ながらも繊細で美しく、まるでバンド名がそれを表すかのように人魚が泳いでいる情景が想像できます。Vo.のりゅうと君が表現するクリーンボイスとスクリームも、そのバンドの世界観を築く一端を担っております。個人的には今までの名古屋では見なかったスタイルだと思います。この記事で後述するUNWAVERINGのレコ発の時に初めて生で観たのですが、メタルコア中心の魂を燃やす系のイベントなのに燃やすはずの魂が抜け落ちました。

 当記事で取り上げる彼らの中で最もアグレッシブな曲「Perish」は、上述の世界観の強さはそのままに、2ビートの疾走パートやブレイクダウンを交えた攻め一辺倒のトラックで、ローEのチューニングが放つ重低音もポイント。海外のバンドでいえばInvent Animateあたりが好きな人ならハマると思います。「死ぬことってなんだろな」と思いながら歌詞とコーラスワークを考えたらしく、実際彼らの楽曲の中でも一際ドス黒くて濁った、それでいてなおそこに一筋の光が差す印象を受ける、そんなダークで美しい一曲。この記事を読んでるあなたも是非一度Lost in Seirenの唯一無二の世界観に溺れてほしい。


10. Knocked Loose / Permanent (EP「A Tear in the Fabric of Life」収録)

 アメリカだけでなく、3度の来日で日本のハードコアリスナーの間でもその勢いが知れ渡っている、アメリカ・ケンタッキー州はオールダムの次世代ハードコアバンド筆頭格。今作もライヴの激しさをそのまま詰め込んだかのような生々しい音像、タフなBEATDOWNのスタイル+ハードコア/メタルの要素をセンス良く織り交ぜたサウンド、徹底的に落とすブルータリティ溢れるモッシュ・パートと90年代のスラッシュメタル・メタルコア影響下のファストなパートの緩急は変わっておらず、それらをアーティスティックな方法に深化したのが今作のコンセプトEP。

 元来の彼らの不穏と緊張感と怒りが入り混じるハードコアサウンドをさらに引き立てるアニメーションショートフィルム(AdeptUnderoathのMVも手掛けた方らしいです)と曲間に挟まれるThe Beach Boysのサンプリングやスコップを突き立てる音みたいなSEはまるでホラー映画を見ているような没入感を与えてくれます。また、ショートフィルムの物語自体はフィクションなものの、「パーソナルな歌詞をずっと書いてきた中で、どのように実生活で感じる負の感情や苦い経験を物語に落とし込むか、かなり挑戦した」とVo. Brianが語っているとおり、さも現実にあったかのような気迫を感じます、多分。また、「ボーカルや楽器隊の音のレイヤーを何十にも重ね、5つの楽器+声をよりアトモスフェリックに感じられるように挑戦した」と、意欲的なアプローチも見られます。まさにハードコアの新しい可能性を感じさせる一枚。


11. UNWAVERING / Dawn (EP「Dawn」収録)

 名古屋を拠点に活動する叙情メタルコアバンドの1stEPの表題曲から。ex. Reborn From IsolationのVo.ヨースケ君が2018年に始動したバンドで、初期~中期のParkway Drive, The Ghost Inside, For Todayなどのタフガイ系メロディくハードコア・メタルコアを軸に、時折A Ghost of Flareのような日本語詞を交えながら重厚感とともに駆け抜けていくスタイルです。僕も9月に彼らのレコ発に遊びに行きましたが、10年間バンドを続けてきた中で脱退や解散を幾度となく経験したヨースケ君の揺らぎない意思を感じました。彼がつけたバンド名からもしかり。

 そして、EPのリリースに先行して公開された表題曲ですが、まさに今のコロナ禍や前述の苦しい経験を乗り越えるためのアンセム。どこまでもストレートな歌詞と曲調が美しい一曲です。日本語詞を交えた1サビ後の失踪パートと終盤の夜明けをイメージしたギターソロがポイント。ちなみにMVの映像を撮影したのは後述するex. AFTERGLOWのBa.のリョウ君です。彼も本当に写真撮影&映像制作が板についてきましたね。。。

 また、EPリリース後に前述のレコ発のライブの様子がわかるTr.3. 「From This Well」のMVが公開されているのですが、実は一瞬だけ僕がPV写っているんで暇な人は探してみてください、そんな人いないだろうけど。


12. Cancer Game / Collect Skins (EP「Dot」収録)

 Crystal Lakeの中国ツアーでオープニングアクトを務めた経験もある、マカオを拠点に活動するメタルコアバンドの待望の1st EPから。中国やマカオや香港やシンガポールあたりには、あまり日本の間で知名度はないけどかっこいいメロディックハードコア・メタルコアがいるよって話をよくTwitterでもしてるのですが、このバンドもその例にもれずマジでかっこいいです。かっこよくなければそもそも記事にはしませんが。

 メタルコアを軸にしながらも、まるで宇宙をイメージしたかのような浮遊感やメロディックハードコア譲りの疾走感と泣きのリードパート、MV曲Tr.4「Collect Skins」にも出てくるいかついモッシュパート、同じく「Collect Skins」で時折挟まれる不穏さを醸し出す、おどろおどろしい近未来的でインダストリアルなサウンドエフェクトなど、アメリカやヨーロッパはもちろん、日本を含む他のアジアの国とも違う独自のメタルコアサウンドを展開しています。現地のライブでもPaleduskの「KOUBOU」のような、ヒップホップやクラブシーンとの異種格闘技戦を積極的に行っており、現代のラウドシーンのトレンドをガッツリと走っている様子。

 韓国のライブシーンと比べると知名度がほぼ皆無ではありますが、中国やマカオ・香港あたりのシーンは今のうちにチェックしておくと、間違いなく見識が深まります。


13. AFTERGLOW / Burning Life (ベストアルバム「AFTERGLOW 2016-2021」収録)

 惜しまれながらも今年解散し5年間の活動に幕を下ろした東京発メタルコアバンドの最後の曲から。筆者はそれまでEP「UNDERWATER」リリースツアーで大阪に来た時観たっきりだったのですが、ラストライブは東京に足を運んで観に行きました。激しくも叙情的なメタルコアサウンド、特にハードロックからの影響を大きく受けているGt.フジ君(最近Nimbusに加入しましたね、NimbusについてはPart.1参照)のどこまでもストレートで熱いリードパートは拳を掲げる事必至。また、「Below The Surface」はリバーブがかかった神秘的な空間の中でクリーンなギターの響きが泳ぎ回る、P.A. WORKSの名作アニメ「凪のあすから」をメタルコアにしたようなサウンドで素晴らしいです。多分意識してなかったと思うけど。あと、Vo.けいと君の命をすり減らすがのような咆哮も定評があります。

 2020年2月に解散を発表してから1年以上ラストライブが延期になっておりましたが、その間にも製作は続けていたらしく、上記の「Burning Life」もその一つ。タイトル通り燃え尽きて灰になる覚悟の表れになった最後の曲です。それまで「解散が伸びるんなら撤回してくれないかな」とか希望的観測を抱いてましたが、この曲のリリースで受け入れるほかないと悟らされたことを今でも覚えています。6分越えの長尺で上に列挙したAFTERGLOWの全て余すところなく詰め込まれた5年間の集大成、4:51~からのパートは両膝をついて慟哭すること間違いなし。


14. Silent Planet / Panopticon (アルバム「Iridiscent」収録)

https://wallofsoundau.com/2021/11/08/silent-planet-iridescent-album-review/

 アメリカ発カリフォルニア州ロサンゼルス出身のクリスチャンメタルコアバンドの4thアルバム。過去に2度来日したこともあり日本でも注目度はあるように思えます。初期のころから複雑かつ難解なプログレッシブなリフとポストロック要素あふれる空間的な広がりを見せる静と動の対比、Vo. Garrettの存在感抜群のむせび泣くようで凶暴性も兼ね備えたスクリームはブラッシュアップされてきました。また、生と死のサイクルをテーマにした前作「When The End Began」にもあった哲学的な要素も今回はより多様性を持たせているように思えました。

サウンド面で特筆する場所は、近年のNorthlaneにもみられる不穏な音像かつ鮮やかな電子音が随所に使われており、今までの作風をより混沌かつ難解な印象に仕上げております。特に「Panopticon」あたりはその電子音のアレンジが顕著で、一段とヘヴィなリフも相まって作中いちカオスな楽曲に仕上がっています。もう一つは前述のより多様性を持たせたテーマ性ですが、「Trilogy」「Terminal」はVo. Garrettが精神病院への入院が元になったパーソナルな歌詞が話題になったのをはじめ、「Anhedonia」は彼らの出身地カリフォルニア州をテーマに、2018年に起こった森林火災に関連付けて書いたとのこと。

 アルバムのアートワークデザインも相まってダークかつカオスの中に美しさが内包されている神秘的な1枚。


15. DECEMBER EVERYDAY / Wrath (シングル)

 仙台を拠点に活動するメロディックハードコア・メタルコアバンドの直近のシングルから。10年以上活動を続けてきた中で、叙情メタルコア・モッシュコアを軸に置いていますが、1st FULL「December Everyday」ではスクラッチ音など90's Nu Metal直下のニュアンスを取り入れたり、次作「Upheaval」ではメロディックハードコア路線を追求したりなど、彼らの音楽的バックグラウンドの広さを見せ付けてきました。

 今作は叙情要素を排除した2010年代前半のモッシュコア要素を入れたnice music(当人たちがそう言ってるので例に倣いました)をドロップ。作風でいえば、昨年東北バンドが完全新曲を引っ提げて集結したコンピ「surroundings daylight」収録の「Fatal Fury (feat. Suguru Ohtaka of 提婆達多)」に近しいものがあります。音作りもDr.のひでぽんさんが運営しているSurroundings Studioクオリティでモダンさを残しながら、当時の2010年代前半の粗さ(いい意味で)を意識していると感じました。

 翌年2月には地元仙台で自主企画を計画しているとのこと、自分もそろそろ仙台にはいきたいのですがすべてはタイミング次第ですね。。。


16. Bodysnatcher / King of the Rats (シングル)

 アメリカ・フロリダ州メルボルン発ダウンテンポ・ビートダウンデスコアバンドのシングルから。近年デスコアの概念が徐々に曖昧になってきており、デスメタル + メタルコア = デスコアの方式は崩れつつあるのですが、Bodysnatcherは「メタル要素が無くてもデスコアとして成立させることが出来る」新しい可能性を提示したバンドとも言えます。年のせいかデスメタルから影響下を受けたデスコアは受け付けなくなってきている筆者ですが、こういうグルーヴィーなハードコア寄りの作風は正直好みです。

 今年何曲か新曲をリリースしていますがその中で上記で取り上げている「King of the Rats」は序盤から変幻自在かつ暴力的にテンポを変えつつ、ビートダウンとブラストビートを織り交ぜつつ、最後の2段構えのブレイクダウン~凶悪かつスローなダウンテンポパートで締める重量感溢れる攻めの一曲になっています。筆者は初聴で自室でフルモッシュした結果部屋の壁に穴が空きました。信じるか信じないかはあなた次第ですが。生のライブで観たら間違いなくムカつく人を見つけ次第殴りたくなる衝動に駆られるかもしれない(真似してはいけません)。

 よりダイナミズムにフォーカスし、余計なものは削ぎ落としてよりシャープなっているこのバンド、来年あたりフルアルバムリリースするんじゃないかと期待してます。


 というわけで今年の作品の中で印象に残ったアーティストを16組ほど紹介しました。次回Part.5が最終回になりますので、もう少しだけ散文にお付き合いいただけると幸いです。

 ここまでお読みいただきありがとうございます。Twitterやコメントでも何でも感想とかもらえると嬉しいです。

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