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2021年刺さったアーティスト Part.5(終)

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いつもお世話になっております。突然ですが、皆さまはクリスマスのご予定はいかがでしょうか? 筆者は人生すみっコぐらしなので今年のクリスマスも上の画像みたいな感じです(かなしい)。Ryotaです。

 今回は2021年ぶっ刺さったアーティストをまた16組ほど紹介していきます。前述の前振り通りクリスマスまでには間に合わせたいな~とか考えてたんですが、予定よりも早く終わってしまいました。ただ決して手を抜いているわけではありません。今回が最終回なので、自分語りの散文にもうちょっとだけお付き合いいただければ。文末に今後の方針も述べておりますのでチェックしていただけると嬉しいです。


1. You Exist / Still (シングル)

 大阪発若手メロディックメタルコアバンドの新譜から。今の大阪のライブシーンにはほぼ見かけないような、As I Lay DyingMiss May Iなど2000年代~2010年代前半の正統派メタルコアに共通するストレートなアグレシッヴさとテクニカルな一面を持ち合わせたメタリックなギターリフが目立つ反面、叙情ハードコアから影響下を受けた泣きのメロディを上手く混ぜ合わせた流麗さを添えたドラマ性が持ち味です。ちなみに、Gt.のうめけん君は今NSC生で「軍艦」というコンビを組んでいて、最近はM-1グランプリ準々決勝まで勝ち進んだことでその界隈で話題が上がっているのですが、それはまた別のお話し。

 話題がそれましたが、今年の夏ごろに公開された新曲は今まで以上に彼らの個性が凝縮された名トラックになっており、「(NSCに入る前に)東京のアパートで曲を書いた」とされるこの曲は、硬質なメタリックサウンドの背景に「ポストロックから影響を受けた」と語るピアノやアコースティックギターの音をバックに入れた実験的なサウンドを展開。

 ここ最近バンドとしては目立った活動がないうえ、最後のライブも2年近く前になるので、また新曲引っ提げてマイペースに活動してほしさありますね。


2. Kings & Queens / Piece of Peeps (シングル)

 名古屋を拠点に活動するポップパンク・イージーコアバンドで、2019年にはSink The Shipの来日ツアーに帯同したことをはじめ、Knocked LooseやAS IT IS, SET IT OFF, Sylarなど、名だたる海外のバンドとの共演を果たしたことでも知られております。そのサウンドは「メタルやハードコアなどのバックグラウンドをなんでもポップパンクに変換する」と言われており、メタリックかつ明るくキャッチーなギターリフと、スクリームはもちろん少年のようなクリーンや要所で挟まれるトラップ・ラップスタイルからArchitectsのSamさながらのセミ・クリーンまで放つVo.アヤト君の多彩なアプローチが売り。

 昨年末(Winter Wakesの音源と同じ紹介しきれなかった)公開されたシングルは、ジャンルの概念を取り払ったかのようなポップパンクの新しい境地をリスナーに見せつけております。嫉妬するほどかっこいい。ちなみにFOADのKSKN氏がみっちり作曲に携わっており、ボーカルレッスンやレコーディングはもちろん、トラップ・チルアウトっぽいビートを始めとするアレンジを手掛けています。Vo.アヤト君のサビのセミクリーンも必聴。

昨年から今年にかけて相次いでメンバーが脱退していたこともあり、水面下で活動していましたが、12/16に活動再開を発表。来年1/30に新体制での音源をリリースするので楽しみです。


3. SheeSawHarm / 空蝉 (EP「リコ」収録)

  メンバーの多くが高知出身で、現在は京都を拠点に関西圏で活動しているポストハードコアバンド。個人的には最近関西で現れたラウドシーンのバンドの中で一番衝撃を受けました。何がヤバいかはとりあえず上にあげた「空蝉」のMVを観ればわかると思います。

 京都で活動しているメタル・ハードコアシーンのバンドの多くはF.P.DHSILL MOMENTあたりに当てはまるタフで叙情的なメロディックハードコアか、不祀VISION OF FATIMAなど混沌とした魑魅魍魎感を醸し出した強烈なインパクトを与えるバンドのどちらかに分かれる傾向があると思ってますが、このバンドもその例にもれず、初めてこのMV観たときメンバーの強烈なビジュアルも相まって不祀の系譜をなぞった日本式の妖怪百鬼夜行が頭に浮かびました。90秒に詰め込まれた現代に生きる人間の負の感情が詰め込まれたアグレッシブなメタルコアサウンドと難解かつ意味深な日本語詞には注目。

Twitterではしょっちゅう言及していますが、まだ一度もライブ観れてないんですよね...


4. Like Tears In Rain / 416 (シングル)

 神戸を拠点に活動している叙情メタルコアバンドの最新シングルから。今年活動を開始し、2021年4月に初のEPをリリース。その時はダウンチューニングを用いたヘヴィーなメタルコアサウンドながらも、アンビエント感漂う浮遊感とメロディアスか絶妙なバランスで両立していた作品でした(Part.2で紹介したSpiritboxあたりのサウンドが好きなら是非)。

そんな処女作を経てリリースされた2作目のデジタルシングルは叙情要素を切り捨ててダウンテンポデスコア方面を意識した、NOCTURNAL BLOODLUSTDIR EN GREYから影響を受けているBa. Shotaroさん原曲のグルーヴィーなヘイトソング。仮タイトルが「〇〇燃やす」だったらしく、Voの夏川さんも当時ストレスがピークに達していたからできた曲らしいです。前作の浮遊感をかなぐり捨てた攻め一辺倒の曲でVo.夏川さんのデスコアチックな低音グロウル、高温シャウトもその一端を担っております。

 来年1月には初のライブも決定しており、SUGGESTIONSのGt.OWENさんの目にも留まったこの曲、皆さんも聴いてムカつくことに中指を立てて生きていきましょう。


5. Justice For The Damned / Sever What Makes Me Like Them (シングル)

 オーストラリア・シドニーを拠点とするダウンテンポ・デスコアバンドの最新シングルから。以前も述べた通り、ALPHA WOLFDiamond ConstructPaleduskなど流行の最先端を行くようなモダンなバンドが多いGreyscal Recordsの中では異質なバンドだと感じており、ざらざらした音像(決してチープという意味ではない良い粗さ)でメタリックで鋭く刻まれるリフから繰り出される重苦しいモッシュパート主体のダウンテンポデスコアにメタルの要素をブレンドしていてオリジナリティにあふれています。

 元々前作のフルアルバム「Pain Is Power」の時に曲を作っていたものの、他の収録曲との兼ね合いでお蔵入りになった...とのことですが、この曲もこのバンドらしいデスコアサウンドは損なわれておらず、Thy Art is Martyrを彷彿とさせるファストなパートや、メタルの要素を受けていることがわかる邪悪なギターソロなど、聴きどころが盛りだくさん。インタビューではこの曲のことを「問題と闇だらけのこの世界に生まれることに対する怒りとフラストレーションについて書いた」とあり、曲からもその憤りが垣間見えます。

 「Pain Is Power」リリース時にあるメディアとのインタビュー記事では「アジア、アメリカでツアーしたことがないから行ってみたい」と述べているので、渡航ができるようになったらBLOODAXEあたりが日本呼んでくれないかな~とか思ってます。


6. Laika / Bride (シングル「Two Sides of the Same Love Story」収録)

 Curse of my Hands(現Invert Hourglass、詳細は後述)に在籍していたボーカリストLyuを中心に、今年新潟で結成された叙情ハードコアバンド。実はこのバンド、Vo.のLyu以外のメンバーは叙情系のジャンルに触れたことがなく、作曲するにあたってメンバーがお互い国内外の叙情系プレイリストを作成して共有したり、叙情系界隈のライブに足を運んで観に行ったりなど、相当な試行錯誤と勉強を重ねたとのこと。

 実際に音源やライブ映像を通して触れてみると、確かに国内外のあらゆる叙情ハードコアの影響を受けながらも、モダンなポストハードコア・Djent・メタルコアのエッセンスを感じるかと思います。具体的には「Mirage」のテクニカルでメロディアスなリフ回しや「Bride」のチャグパートあたりが上げられます。ちなみに、「○○に似てる」という言及はあまりしないほうなのですが、初めて聴いたときVo.Lyuのポエトリーの声質がFall of TearsのVo.Mochinaga君に似ていてて驚きました。きっと気のせいではないと思います。

 まだ音源として収録されているのは前述のシングル2曲だけですが、未収録曲もセトリに入れてライブ活動もしているようです。これからどのような作品を発表するのか今から楽しみです。


7. ERRA / Divisionary (アルバム「ERRA」収録)

 アメリカ・アラバマ州バーミンガム出身プログレッシブメタルコアバンドの5thフルアルバムかつ古巣Sumerian RecordsからUNFD(以前紹介したLike Moths To FlamesやHollow Frontも在籍してるオーストラリアのレーベル)移籍して初のアルバム。ex-Texas In JulyのJT (Vo) とex-I The BreatherのConor  (Ba) が加入後より盤石な体制になって久しいですが、今作は間違いなくプログレッシブメタルコアのハードルを押し上げたセルフタイトルに値する最高傑作になったと思います。

 中心人物Jesse(Gt/Vo)によるメロディックで様々な表情を持ったボーカルワークと、Djentやメタルコアを基軸としジャズやフュージョンを経由したテクニカルフレーズ、そして新たに嫌味にならない程度に味付けされたインダストリアルやニューウェイブ的アレンジは、ERRAが持つ多層的で奥行きのある近未来的世界観を観ることができます。リスナーも移籍後最初にリリースされた「Snowblood」や、上にMVを載せている「Divisionary」でその一端を垣間見たかと思います。また、Jesse曰く「アルバム全体としては、JTが加入する前の2作品(Impulse / Augment)と加入後の2作品(Drift / Neon)のバランスを取ることがセルフタイトルを銘打つ今作に相応しいと感じた」とインタビューで話しています。皆さんがどう感じるかが知りたいところ。

 緻密に設計された楽曲がプログレッシブメタルコアの新しい時代の夜明けを切り開く、ERRA出現後に出てきた多くの似たジャンルのバンドに格の違いを見せつけた1枚。


8. Invert Hourglass / Deep Inside (シングル)

  新潟を拠点として活動している、プログレッシブメタルコア・Djentバンド。前体制はCurse of My Handsという名前で活動しており、前述の現LaikaのVo. Lyuも在籍していた当時は、近未来(アンドロイドが台頭して人類が蹂躙される未来)を思い浮かべつつもダークで無機質なDjentサウンドを展開していました。Vo.Lyuとギタリスト一人が脱退後、半年間の沈黙を破って現在のバンド名に改名&現Vo. Yukiが加入して最初にドロップしたのがこの曲です。

 ミックス・マスタリング・動画はもちろん、ジャケットのアートワークまで完全DIYの彼らの新曲、前体制の近未来的で無機質なサウンドは大きく変わってはいないのですが、現体制ではERRAを彷彿とさせるよりメロディックで流麗なサウンドスケープを展開。無機質ながらもどこか温かみのある綺麗なシンセが顔をのぞかせる1曲になっています。また、Gt. Tatsuyaのギターソロもフィーチャーされている部分も現体制の方向性を象徴しているかと思います。

 今年、GraupelやPROMPTSやMAKE MY DAYのツアー新潟編では必ずローカル枠として出演していたこのバンド、今後も大きく躍進していくと思うんで今のうちにチェックしておきましょう。


9. Fears Away / Shadows (EP「Breakthrough」収録)

 スペイン発メロディックハードコア・メタルコアバンドの解散発表の際にリリースされた最後のシングル。このバンドはマイナー過ぎてSpotifyが無ければ絶対に知りえなかったバンドです。フルアルバム「Beyond Reflections」あたりではFFO: The Ghost Inside, For The Fallen Dream, Obey The Braveあたりのタフな叙情メタルコアサウンドなんですが、昨年リリースされたシングル「Loser」は思いきりヘビーなモッシュコア・ビートダウンに寄った印象です。同じくスペイン発メタリックハードコアバンドBrothers Till We DieのVo.  FelipeとGt./Cho. Marioのfeat.もイケてます。

 今年1月にリリースされた最後のシングル「Breakthrough」は「Loser」の延長線上にある、叙情要素を排除したモッシュコア・ビートダウンメタルコアサウンドにWhammyを利かせたリードやDealerさながらのピックスクラッチサウンドや曲中にチューニングが下がるピッチシフターetc.のモダンニューメタルコア要素も垣間見えるアグレッシブなトラックになってます。話題になってないけど嫉妬するほどカッコいいです。


10. Falling Asleep / Underneath (SUGGESTIONSとのスプリット「Feed Maggots Until We Die」収録)

 長野出身、現在は東京で活動しているメタルコアバンド(このジャンル分けももうこのバンドには不適切だと思いますが便宜上)の最新曲/ SUGGESTIONSとのスプリットシングルから。個人的にはずっと1stアルバムの「My Heart Still Goes On」が傑作で昨年「Vertigo」がリリースされたときそれまでのモダンなメロディックハードコア/メタルコアスタイルから大胆に方向性が変わって絶句したことを覚えてますが、今回もその延長上にあります。最初MVやライブを観たときは正直あまり受け付けなかったのですが、聴くたびにハマって言った結果今年Spotifyで5本の指に入るくらいヘビロテしてました(事実)。

 昨年「Vertigo」をリリースしたとき、もっと言えばEP「Dear Death」の時から既存のスタイルから脱しようとインダストリアル調アレンジやグラムンビートなど意欲的なアプローチを続けてきたのですが、今回はローD#の低音弦のヘヴィなパートと妖しい光を放つかのような美しいメロパートのコントラストが癖になってしまいます。前述の1stアルバムがリリースされてからもう3年くらい追いかけていますが、Vo.Vin君の色気溢れる佇まいやパフォーマンスもだいぶ確立されてきたところがあります。

 ジャンルという概念にとらわれず、よりアーティスティックに深化し続けるFalling Asleep、そろそろ未発表の新曲をライブで演奏し始めるとか噂がささやかれてるので、次もリスナーをあっと言わせる作品になるかと期待しています。


11. Embrace The Wings: The Reprisal (EP 「Embrace The Wings」収録)

 今年結成されたバンドでHopeless Raven, makeshift, Street Sleep Crew, ex-Nimbus etc.のメンバーで構成されている、メロディックハードコア&叙情派ニュースクールバンド。先日のIRISのVo.コーヘイ君&Ba.デレク君脱退前ラストライブ「Today is Yesterday's Tomorrow」で初ライブが行われたのも記憶に新しいです。

 SHAI HULUDに代表されるフロリダ叙情派ハードコア、Misery Signalsのような叙情派メタルコア、Counterpartsの台頭によって盛り上がりを見せるメロディックハードコアをルーツに、メタリックなパートと2ビートを織り交ぜながら、熱いリードギターに拳を掲げずにはいられないはず。Vo.のプロテイン太郎の力強いボーカルアプローチと聞き手の胸を打つポエトリーリーディングは本当にバンド未経験者?と疑ってしまったほど(それ以前にも「Dégueulasse/燕子花」という楽曲でVo.をしていましたが、Bandcampのページが削除されてました・・・)。

先行公開されたTr.4の「The Reprisal」は、同じくStreet Sleep CrewかつEx-HER NAME IN BLOODのVo.IKEPYさんの猛獣のようなスクリームも聞くことができ、彼らの処女作に華を添えているのですが何がどうしてそうなったのは是非本人たちに聞いてみて下さい。結構ぶっ飛んでる(と思う)ので。あと、フィジカルのみ収録されている楽曲「Slaves」が間違いなく素晴らしい(特にvo.プロテイン太郎のポエトリーが)ので、是非ディスクユニオンや礎やNERDSなどで購入してほしいです。本当に。


12. Orbit//Arclight: Eternity Flames (1stデモシングル収録)

 Eversolitude(Pt.3参照)のGt/ChoのGen SunamiとFall of TearsのVo.Mochinagaの二人が今年東方叙情メタルコアサークルを結成。ティーザーが出たとき、東方アレンジリスナーや国内のメタル・ハードコアリスナー双方が震撼したのを今でも覚えています。筆者も東方メタルコア・ハードコアがルーツ、特にCLOCKWORKS TRACERは個人的には同人の枠を超えたメタルコアヒーローだと思ってるので、その意志を継ぐ(であろう)ヒーローの再来には滾らずにはいられませんでした。

 肝心の楽曲は、Solitude A Sleepless Nights(現Eversolitude)時代に見られた、三国無双のステージBGMめいた熱いメロディを奏でるリードギターと高速テクニカルな単音リフ、そして二人の高速ポエトリーパートが印象的な、極限まで純度の高めたメタルコアアレンジ。アレンジャーが影響を受けてきた、2000~2010年代のメタルコアバンドのオマージュを彼らなりに解釈したトラックには拳を掲げずにはいられないはず。Solitude A Sleepless Nights時代の楽曲で言えば、「Ikaros」や「Aldebaran Eyes」あたりが好きな人は是非聴いてほしいです。

同人ラウドを好むオタクは皆無意識にメタルコアヒーローを求めてるんだと思いますが、このサークルはまさにヒーローの再来、一言でいえば最高ってことです。


13. Structures: Planet of Garbage (EP「None of the Above」収録)

 カナダ・トロント発プログレッシブ・メタルコアStructures。その伝説の1stアルバム「divided by」は、タイトで質感抜群の重量感を持つプログレッシヴメタルコアサウンド+変幻自在のタフなシャウト&メロディコーラスの対比、そして何よりも予測不可能の変則的で複雑な展開は当時のリスナーの心をつかんだとお伺いしております。2015年に無期限活動休止、Gt.のBrandonがNorthlaneのベーシストとして活動しておりましたが(すでに脱退)、今年6年の時を経て活動を再開してEPがリリースされました。

 レビューを書くにあたって、全ての音源をチェックしたのですが、過去作よりも攻め一辺倒の激しめのトラックが多く、ソリッドで余分なところがそぎ落とされた印象ではあります。特にTr.2の「6」はCounterparts/ENDのVo.Brendanもfeat.しているのですが、ダイナミズムとグルーヴを重視したトラックのせいかどこかEND寄りのアプローチをとっているように感じました。また、Tr.3「Gone / Dead」のようにモダンニューメタルコアの流れを汲んだインストやグルーヴ、ラップ調の吐き捨てるようなシャウトも取り入れられており、Structuresとしての個性を殺さずにトレンドもがっちりつかんでいて当時を知らないリスナーも引き付けることができると思います。

 I The BreatherやPart.1で述べたThe Air I Breatheもそうですが、昨今よく見られるバンドの復活がただ単にノスタルジーを狙ったものではないということが分かる作品の一つ。


14. Gates of Hopeless: to KILL (アルバム「In The Twilight Of Nocturne」収録)

※公式のストリーミング&MVがないので、上記動画になることご了承ください。

 2004年に大阪で結成されたニュースクール/フューリーエッジを主軸とするハードコアバンドが活動開始から17年の時を経てついに1stフルアルバムをリリース。今まで数々のデモやスプリット、コンピレーションアルバムに参加し、自主企画「FIGHT TO SURVIVE」の主催や礎企画「KNOW REASON WHY」出演など、着々と大阪のハードコアシーンで存在感を示してきました。unite asiaで取り上げられたときインタビュアーに経歴を聞かれたときも「We love true edge metal.」の1文だけで回答したことから、筋金入りだということが分かりますね。

 筆者はそのあたりのジャンルは勉強中なのでどうしても浅い感想になりがちなのを承知で取り上げているのですが、ハードコアのアグレッションとメタルからの様式美を感じる(いい意味で)荒いざらついた音像の単音リフや緊張感とドラマ性を感じるリードは、膝をつきながらこぶしを突き上げて「TRUE」「JUSTICE」みたいなミリタント構文しか出なくなること間違いなし。中世ヨーロッパを感じさせる厳格でいなたい(決してダサいという意味ではない)ジャケットや、オーケストレーションを採用したイントロやインタールードもこのバンドの世界観への没入を深める要素の一つ。

 コロナの状況次第ですが、現状来年2月に名古屋と大阪で観ることが決まってます。特に大阪編はPart.1で取り上げたView From The Soyuzが初来阪なので行ける人は観に行きましょう。個人的にはPHANTOM KILLERを観るのが6年半ぶりなので楽しみです。


15. Sudden Waves: So Swift (アルバム「We're All Connected」収録)

 カナダ・モントリオール出身メロディックハードコアバンドの最新フルアルバムから。カナダ発メロディックハードコアといえばCounterpartsやMayfieldなど、どこか寒々しくて哀愁を感じる印象を持っているのですが、このバンドはメロディックハードコアとはいってもポップパンク・イージーコアをルーツにしており、アメリカの西海岸を連想するような暖かくて陽気で明るいアトモスフィアを感じました。また、タトゥーアーティストとして活動してるメンバーもいて、多分彼らのジャンルを知らなければチェックし忘れてしまいそうなアルバムアートワークもインパクト大。

 彼らの音楽は前述した通り、ポップパンク・イージーコアのエッセンスを入れた明るめのメロディックハードコアなんですが、それに付随してキャッチーでエネルギーに満ち溢れたコーラスワークも特徴です。また、公開されている「F*ck Cancer」や「So Swift」のMVのように、彼らの動画にはコメディでおバカな雰囲気なものもあり、その点もシリアス一辺倒の雰囲気を放つカナダの同ジャンルのバンドのそれと明確に差別化されております。

 Part.3で紹介したsunsetinfallもそうですが、疲れたときに聴くと思わず元気になってしまう、同国の多くのメロディックハードコアとはまた違う1枚、是非聴いてみてほしい。


16. HIKAGE / ISOLATION (EP「Light My Wounds」収録)

 昔The Webs We Weaveというメタルコアバンドでギタリストとして活動していたVo. GENを中心に、札幌を拠点として活動しているポストハードコアバンド。2019年にあいさつ代わりのシングル「The Valley」をリリースしたときはそのキャッチ―なボーカルアプローチに衝撃を受けたのを覚えています。今年に入ってMixing/MasteringにLANDMARKS(Part.3参照)のVo.FlorenceをフィーチャーしてEPを制作していたのですが、数回の遅延の末、12月1日にリリースされました。

 肝心のEPの内容ですが、BeartoothWhile She Sleepsあたりのポストハードコア+Pay Money To My Painなど日本特有のラウドロックをスパイスしたサウンドに、メタルコアを基軸とした爆走気味のトラック&LANDMVRKSのそれに近いエッジーな音像のリフ回し、そしてVo.GENのはちきれそうなシャウトとサビでのメロディーをしっかり唄いあげる柔軟性・メリハリは特筆すべきところがあります。爆走気味ながら、盛り上げる・聴かせる・落とす起伏に聴き惚れて、5曲目の最後まで駆け抜けてしまいます。

 See You Smileや前述のFalling Asleepを招いた前日の自主企画がソールドアウトしたことも記憶に新しいが、さらに来年2月には東名阪のツアーも決定しており、今作のEPを引っ提げて札幌から全国のシーンに挑戦状を叩きつけに行くとのこと。興味ある人は要チェック。


 ということで、全5回にわたって紹介した2021年に刺さったアーティストを約80組ほど紹介させていただきました。今月は良い音源が多くリリースされていて当記事で紹介するのを泣く泣く割愛したバンドもいるのですが、それらは「Fieldism New Songs Selection」として年明けあたりに公開できればと思っておりますので、引き続きチェックしていただけると嬉しいです。というか来年から「音楽情報メディア」として本格的にnoteを動かす予定なのでフォローのほどよろしくお願いいたします。まだまだコロナ禍の影響は尾を引いておりますが、負けずに素敵な音楽で生活を豊かにしましょう。

長くなりましたがここまでお読みいただきありがとうございました。リアクションとか感想とかTwitterやコメント欄でもらえると頑張れます。






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