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「ソニー技術の秘密」にまつわる話

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ここでは、ソニー株式会社の研究技術開発の要を果たし、「ソニー創成期の基礎技術」を確立させた 木原信敏 (きはら のぶとし) の著書『ソニー技術の秘密』に記された研究開発の歴史を振…
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2020年12月の記事一覧

150分の映画をわずか1分でダビング!レンタルビデオ産業を活性化させた 〜 高速ビデオテープダビング装置『スプリンター』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (57) 『U-matic』や『ベータマックス』といった家庭用 VTRの商品の誕生により、誰もが簡単にテレビ映像を録画できるようになり、いつでも好きな時にテレビ番組を視ることができるようになりますが、ソニーの技術者・木原信敏は ビデオを単なるタイムシフトマシンに留めたくない と考え、映画などの娯楽映像を見られるのもホームビデオの楽しみであると考えるようになります。 家庭用VTRが普及すれば、それだけパッケージ映像の市場は拡大すると考え

自分は失敗のノウハウを全部持っている! 『失敗をラッキーと思え』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (58) ソニー創業者の一人・井深大 (いぶか まさる) 氏の秘蔵っ子といわれ、日本初のテープレコーダー、世界初の家庭用VTRなどの開発者・木原信敏 (きはら のぶとし) 氏は、1988 (昭和63)年に発足した『(株)ソニー木原研究所』の代表取締役として、「三次元コンピューター・グラフィックス」のシステム開発を主に、独創かつ創造的商品の研究開発を行い、開発に苦労する多くの優秀な若き技術者たちへの応援の言葉として、自身の経験から「失敗をラッ

画像・映像処理分野における、最先端技術の研究・開発及び商品化を行う 〜 『ソニー木原研究所』 設立

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (59) 1988 (昭和63)年10月、東京通信工業の時代からソニーの発表する日本初・世界初の製品のほとんどに関わっていたソニーの技術者・木原信敏は『ソニー木原研究所』を設立します。 私は定年になりまして、「ソニー木原研究所」を設立させてもらいました。 一番最初に、 「木原研究所」というのは何をすべきか? と井深さんに問われまして、私はもう絶対に画像をコンピュータで記録したり、編集をしたい。そういうことの出来る時代になるから、その研

技術屋の心を理解して下さった井深さん 木原信敏

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (60) 平成9年12月19日、ソニー創業者の一人・井深大氏は89歳の生涯を全うしました。ソニーの前身である東京通信工業の時代より、井深氏の秘蔵っ子といわれ、初期ソニーを代表する数々の世界初、日本初の製品を世に送り出して来た技術者・木原信敏はその訃報に接し、井深氏との思い出を「電子情報通信学会誌」に寄稿していました。 木原を始めとする多くの技術者から「オヤジさん」と親しまれた井深氏が、いかに優れた、また愛された上司であったを窺い知る文章となっ