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漢方でも起こる重篤な副作用

皆さんこんにちは

産婦人科医の内田美穂です。

皆さんの疑問に思っていることにお答えしていきながら、産婦人科を身近に感じていただくことでかかりつけの婦人科を探す際のご参考にお役に立てればと思っています。

今回は、「漢方でも起こる重篤な副作用」についてお話したいと思います。




代表的な副作用


漢方でも起こる副作用について説明します。

代表的なものとして、低カリウム血症、腸間膜静脈硬化症、間質性肺炎、肝機能障害があげられます。


低カリウム血症


血液中のカリウムの濃度が低下してしまう状態を指します。

悪心嘔吐、筋力低下、麻痺、不整脈などの症状が起きます。

漢方薬に入っている甘草(カンゾウ)という生薬が原因であることがわかっています。

以下が、特にその報告が多いものです。

  • 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)

  • 抑肝散(ヨクカンサン)

  • 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)

  • 六君子湯(リックンシトウ) 

  • 大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)


この他、甘草の含有量が2.5gを超えるものは特に注意が必要です。


基本的に、甘草が含まれている漢方を長期内服する際は、定期的な採血で血中のカリウム値を測定するようにして下さい。


腸間膜静脈硬化症


この病気は、大腸の血液の流れが悪くなる病気で、腹痛、下痢、悪心・嘔吐などの症状が生じることがあります。

便潜血が陽性に出ることもあります。

漢方薬に入っている山梔子(サンシシ)という生薬が原因となります。

<山梔子が含まれる漢方>

辛夷清肺湯、茵蔯蒿湯、黄連解毒湯、加味逍遙散、五淋散、清肺湯、加味帰脾湯、荊芥連翹湯、温清飲、柴胡清肝湯、防風通聖散、竜胆瀉肝湯

血液検査で確認することができないため症状が出たときは、この病気を念頭に置き消化器内科で精密検査を受けてください。

サンシシの総投与量が5000gを超える場合に特に発症が増えるため5年以上の長期投与をする場合は特に注意が必要です。


間質性肺炎


これは肺胞の壁が厚くなって酸素がうまく取り込めなくなる病気です。

病気が進行してくると息切れやから咳が出てきます。

重篤な場合は命にかかわることもあります。

<間質性肺炎になる可能性のある漢方>

乙字湯、大柴胡湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏瀉心湯、黄連解毒湯、小青竜湯、防己黄耆湯、麦門冬湯、補中益気湯、荊芥連翹湯、潤腸湯、抑肝散、五淋散、温清飲、防風通聖散、芍薬甘草湯、竜胆瀉肝湯、二朮湯、清肺湯、柴朴湯、大建中湯、辛夷清肺湯、牛車腎気丸、小柴胡湯加桔梗石膏、清心蓮子飲、柴苓湯、三物黄苓湯

この中でも、以下のものは間質性肺炎の報告が多くあがっています。

  • 柴苓湯(サイレイトウ)

  • 防風通聖散(ボウフウツウショウサン)

  • 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)

  • 清心蓮子飲(セイシンレンシイン)

  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)


予防は難しいため症状が出た場合はすぐに病院を受診し、原因となり得る漢方を使用していることを伝えるようにしてください。



肝機能障害


肝機能障害についてはどの薬剤でも起こる可能性があるためこちらも定期的な血液検査が必要です。


どんな薬でも副作用のリスクはつきものです。知識を得て安全に使用しましょう


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