見出し画像

OODAループの根幹にある概念とビジネスへの適用について、書籍『OODA LOOP』から考える

先日、そう言えばOODAって聞いたことはあるけれどしっかりとその概念について学んだことがないなと思い、『OODA LOOP』を読みました。そんなOODA ループについて、その重要な基礎概念、ビジネスへの適用、OODAループを実現するための文化的特性についても本書の内容を元に紹介してみます。

PDCAと何が違うの?

この記事にたどり着く方がどんな方かはわかりませんが、おそらく「OODA」ってなんだろうとか、PDCAと何が違うんだろうとか思っている方が大半なのではないかなと思います。

結論から言うと、OODAループはPDCAやTOC(制約条件の理論)、PTS(トヨタ生産システム)などの傘になるような概念であり、別物として扱うものではなく、同じ傘にある親子・兄弟、あるいは親戚のような関係であると考えた方が良いと思います。実際、『OODA LOOP』では以下のような記述があります。

なので、PDCAとの比較とかそういうのはあまり意味のない議論だと個人的には感じています。

アジリティ(機敏性)

OODA LOOPの生みの親は、故ジョン・ボイド氏とされており、アメリカ合衆国の戦闘機操縦士・航空戦術家・軍事著作家です。戦略という言葉が戦争から生まれてきたように、ジョン・ボイド氏も戦闘機操縦士として自身の経験やあらゆる戦争を分析して、「アジリティ(機敏性)」こそが戦争に勝つ上で重要であると結論付けています。

どういうことか?
1900年初頭までの戦争の仕方は、兵士の規模と兵力(武器の性能)を大きくすればするほど戦争に勝つ確立が高くなるという考えがあったそうです。ただ一方で、兵士の規模や武器の性能がそこまで高くないと思われる側が敵陣を倒すことも散見されていました。その象徴が1940年のドイツの電撃戦です。
勝ち目がないと思われていたドイツ軍が、イギリス・フランスの連合軍の意表をつき、軍事的な成功を収めたというものです。ここから戦争のデファクトスタンダードは電撃戦/機動戦になっていったというわけです。

つまり、兵士の数や武器の性能ではなく、現場レベルでスピーディに相手を欺くような行動に出ることが重要であるということがここで分かってきたわけです。

ボイド氏はハード面よりもソフト面を重視した。

上記の図で引用した図の通り、味方側が電撃戦を実行するためには、ソフト面の能力が重要です。これらのソフト面の能力があることで、電撃戦/奇襲戦を実行することができ、相手側をパニックに落とし込み、無理な戦いをせずに成功を収められるというわけです。

また、この電撃戦は、1回きりの行動ではなく、複数回相手の先手を取りながら行動する積み重ねが重要であるとも『OODA LOOP』では述べられています。

ビジネスにどう適用されるのか?

戦争のことは分かったが、ビジネスではどういうことなのか?
1つの象徴的な事例は、ホンダ・ヤマハ戦争と本書で呼ばれる事例です。

上記のスライドでまとめているように、最終的に勝ったとされるホンダは、当時多くの新モデルを市場に投入することで、顧客の欲求を学び、それを充足する製品を並行で開発していったということです。スピーディに生産ができる体制があったことはもちろんですが、がむしゃらに作るのではなく、市場ウケする商品を作ることをしっかり回すことができていたのがこの勝利の所以です。

何度も商品を出すことはもちろん、ヤマハを出し抜くためにはより顧客にウケなければならない。それを理解して、市場ウケするものをスピーディ(機動性高く)に展開していったこと。その積み重ねが重要だということです。

自身の仕事などの姿勢にも当てはめることができるます。例えば、ある案件が競合数社いる案件だとわかったら、その他の会社がどこなのか、どのようにそれらの競合を出し抜くのか、をスピーディに判断して、実行していくことが重要という教訓が得られます。

OODA LOOPとは

上述してきた「ドイツの電撃戦」などから、ボイド氏はOODAループという概念を見出していきました。それらの現場では、絶えず観察(Observe)が行われ、それに基づき情勢判断(Orient)、決定(Decide)を行い、実行に移すというものです。

これらが高速に回されて、相手を出し抜き続けることで、勝利が収められるわけです。

ボイド氏は、ドイツ軍の電撃戦のみならず、孫子の兵法や宮本武蔵の五輪書などの影響、そしてトヨタ生産システムなどにも影響されビジネスの世界にもOODA LOOPが適用できると考えたそうです。

OODA LOOPでは、特に情勢判断(Orient)の段階が鍵と言われており、この段階において想定と合わないデータを見つけ、行動に移すことが重要であると言われています。情報収集を絶えず行い、そこからどういう状況ができつつあるのかをスピーディに行うことが重要であると言えます。

また、この情勢判断(Orient)のあとに意思決定(Decide)の段階がありますが、最も良い状態は、明示的な意思決定を行わずに、行動(Action)ができることだとも言います。本書では、これをOrientからActへの暗黙の誘導・統制、と呼びます。

例えば、新規事業を起こす際の稟議書を考えてみましょう。

ある担当者レベルで、顧客のペイン/ニーズを掴み、「この課題をしっかり解決してあげればビジネスになりそうだぞ」と感じたとします。これは現場が観察(Observe)したものです。

ただ本当にビジネスになるかはまだわからなかったので、先輩/マネージャーと相談してビジネスの試算を立てます。これは行けそうだと部署内で合意が形成できたので、ようやく稟議書を書きはじめます。

稟議書にはあらゆる部署からのツッコミが入ってくるので、根回しが必要です。根回しや、経営会議に行くまでには、本部承認、事業部承認、などのステップが必要となります。

要約経営会議で承認されて、さあスタートしようと考えたところ、競合企業が同じサービスを大々的に発表してきました。

妄想ケースです

もちろん必要な分析などはあるかと思いますが、以下にスピーディにOODA LOOPを回していくことが重要であるということがなんとなく伝わったらと思います。

OODA LOOPを高速で回す文化的特性

前述の通り、OODA LOOPを高速で回すことこそが戦略のベースとなるというわけですが、本書では高速で回すための文化的特定である4つのポイントを提示しています。これは実際に電撃戦をおこなったドイツ軍へのインタビューなどから出てきた言葉にニュアンスが含まれているため、ドイツ語での紹介も本書では簡単になされています。

OODAループを高速で回す文化的特性

ここにある内容は実は他の書籍などでもよく言われているないような気がします。方向性を明確にし、行動自体を指示するのではなく現場に任せる。そのためには相互信頼性が必要であるというのはよく言われている内容でしょう。さらに現場に任せるには、現場がしっかりと情勢を理解し判断できるスキル、つまり皮膚感覚のように判断ができることが必要である。となります。

おわりに

OODAループについて概念レベルで理解することはできても、これを実際にチームで実践しようとするのはかなり難しいものがあると思いました。

ただ、情報連携をしっかり行い、そこからシナリオを予想し、自分たちの理想に持っていくために現場が何をできるのか、こういったことを日々チームとして実践していくことで徐々に作られていくものだと思いました。

このループを作るために、リーダーは日々現場が足りないスキルを身につけられるように日々コーチングなどをおこなう努力は必須であると考えられるでしょう。ただ「OODAループ回せ」という指示では何も動かないはずです。

OODA ループは一日にしてならず。という感じでしょうか。

もしも活動をサポートいただけるようでしたら、書籍の購入費用に当てさせていただきますm(_ _)m