#7 マクロな都市感覚

前々回の記事で、架空地図のミクロとマクロの自論を展開しました。今回は、私が思うマクロな都市感覚について書いていきます。


今回の話で欠かさない概念が「広域性」です。ある土地とある土地の間に物理的に広い距離感を持ち、それでいて繋がりがあるという性質と定義します。この時、ある土地にはミクロな都市感覚を感じさせます。


交通のオタクとしては、鉄道路線と道路の話は外せません。

先に道路の話をすると、国道があり、地域と地域を結ぶ名前を冠した県道があり、高速道路のインターがあり、土地の広域性を感じさせる要素が沢山あります。
私は国道の○○バイパスというものが好きです。地元にも西湘バイパスがありますが、地図で見ていると浜名バイパスとか姫路バイパスとかが目を惹きました。無料の道路なのにインターチェンジや時にパーキングエリアがあり、高速道路よりも多くのインターチェンジがあったり、そうしたものは多くの地名を扱っているので魅力的です。

そしてそれぞれが繋がっています。ついでにいうと高速道路のような規格や役割を持っていても、地図の色は普通の国道と同じというところも面白いです。

国道16号八王子バイパスを南に走れば、片倉ICや鑓水ICといった地名を見つつ、保土ヶ谷バイパスに名前を変えて本村ICや新桜ヶ丘ICへと繋がります。よく知る地名も、知らない地名も、繋がっているという感覚があります。


私がより好きな鉄道の話をすると、特に広域性を感じるものは優等列車です。JRの特急(やかつての急行)は100〜数百kmを走行し、その一部の駅に停車していきます。

一例として新潟〜酒田・秋田を結ぶ特急いなほを上げます。全区間を長時間乗車したり、週末パスを利用するのであれば酒田で乗り換えたりと、乗り鉄として利用価値の高い列車です。新潟と酒田、秋田を繋ぐ広域性がありますが、途中にも新発田や村上、鶴岡といった停車駅があります。新潟や酒田、秋田は降りたことがあっても、それ以外の駅で降りたことがない人もいるのではないでしょうか。
しかし新発田には新発田の、村上には村上の、鶴岡には鶴岡の街並みや歴史、物語があります。

各都市はミクロなものですが、それらを繋ぐ特急いなほ(や白新線・羽越本線、新潟県・山形県の日本海側地域全体)はマクロなものです。
そして大切な役割として、知らないミクロな都市に想いを馳せることができるというものもあります。

名前もかっこよく、寝台特急あけぼのも停車していた鶴岡


他にもミクロとの合わせ技として、大学のキャンパスの位置関係というものもマクロ寄りの話になります。早稲田大学には東京都新宿区の早稲田(とその周辺の)キャンパスの他に、埼玉県所沢市の小手指にキャンパスがあります。さらに同法人が埼玉県本庄市に高校を設置するなど、広域性を感じさせます(この時、キャンパス間を股にかけたイベントや、本庄早稲田駅の存在は「物語」となります)。
さらに、自分の通っていないキャンパス・大学には、どんな生活、「物語」があるんだろうと考えさせられます。

架空国家という巨大な一地域という話をすると、全世界の中ではミクロといえますが、その架空国家の中に存在する無数のミクロを含む全体といえばマクロなものです。

国家や道路、列車をマクロなものと呼ぶと、もしかしたらタイトルにつけた「都市感覚」というものはズレていると思うかもしれません。
しかしミクロを前提に考えれば、マクロは都市感覚の集合体や、都市感覚のネットワーク形態といえるでしょう。そして集合やネットワークの中の知らないものを想起させるという役割を持ちます。

架空鉄道等を制作する上で、マクロな感覚を持つこと、マクロな描写をすることは、詳しく書いていないミクロな部分=知らない都市感覚の可能性を想起させ、創作の世界を膨らませることに繋がるでしょう。

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