#4 「退屈」を描く

鉄道マニアにとって鉄道は面白いものです。しかし、鉄道の全てを面白いと思う人はほぼいないのではないでしょうか。

読者のあなたが鉄道マニアだったとして、例えば「枕木」「架線」「貨物のコンテナ」「路線の歴史」「最新の通勤型車両」、全てに興味がある人はそうそう見つからないと思っています。

上記の例は極端としても、ただ一つの路線に注目しても、興味が湧かない(あるいは、大して惹かれない)部分というのはあるはずです。

小田急線のダイヤが好きだとしても、新宿発の各停本厚木行きや、江ノ島線の上り各停相模大野行きに多大な想いを馳せる人はあまり多くはないと思います。

しかし、新宿発の各停小田原行きとか、本厚木発初電の各停松戸行きといえば、注目した人もいるのではないでしょうか(いずれもここ10年のダイヤで実在しました)。

鉄道の面白さは、より多くの日常・平凡があるからこそ見つかります。

それは鉄道マニアが日常生きている中で、それ以外の興味を持てないもの。鉄道の中に限定すれば、食指の動かない鉄道。
それらがあるからこそ、自分の琴線に触れるものが際立ち、面白いと思えるのです。
(これは鉄道趣味意外にも言えます)
それを私は「退屈」と呼んでいます。

おそらく新宿〜小田原の各停が終日にわたって運転されていたら、本厚木発着の各停の方が珍しく、注目されるはずです。


架空鉄道においても、自分が理想とする要素、自分が興味を持てる要素を描くためには、必然的に「退屈」を描く必要があると思っています。

その作業はまさしく退屈、なんなら苦行です。

しかし「退屈」を描くことにより、自分の理想が自然と際立ちます。

各停本厚木行き。しかしレアもの。

上の写真の各停本厚木行きは、同じ種別・行き先でも非常に珍しいものでした。
なぜなら、

・下りではなく上り列車。
・新松田〜本厚木間の各停は急行・快速急行が各駅に停車するため本数が少ない。
・4両編成(通常は8両、時期により10両も多く設定)。
・箱根登山線で使われた車両が充当。

という特徴があったからです。

私はこうした運用上の珍列車を架空鉄道で表現する場合、退屈な運用も合わせて描写するように心がけています。
その方が、自分の好きなものがより説得力を持って現れるからです。

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