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鞘師里保「似」三部作について-1

今、手がけている作品についてお話ししましょう。
ちょっと長くなりますので、何回かに分けます。

ヘッダーに示した写真をご覧ください。これは小下図(エスキース)といって、作品の計画書になります。今回の作品は三部作で、独立した「紅」「白」「黑」、3枚の絵で構成しています。
全体の題名は「再生」あるいは「復活」とするつもりです。

実は、私は、最近までうつ病を患っており、新しい絵が描けなくなっていました。筆が持てない、まさに「暗闇」の時期でした。しかし、そんな私に再び創造の「光」を与えてくれたのが鞘師里保さんの存在でした。

病の影


私は、美術大学を卒業してから継続して日本画の制作を続け、毎年、個展を含む展覧会を東京で開いていました。アイデアに困ることはなく、順調に制作を続けていました。しかし、ある日、そのアイデアが降りて来なくなったのです。

要因はいろいろありますが、乱暴にまとめていうと「あらゆる面での挫折による疲労」が原因でした。
それから、十数年に渡り、新しい絵が描けなくなりました。
医師の診断はうつ病でした。

「復活祭(BABYMETAL)」紙に水彩, 2021年 (C) FICINO-METAL

福音来たる


そんな闘病中のある日、夫が見ている録画を一緒にぼやっと見ていると、超絶技巧の激しいヘビーメタルバンドをバックに、一糸乱れぬダンスをする三人の娘たちに目が留まりました。それは、BABYMETALというプロジェクトでした。
元々ロックは好きで、コンサートにたびたび行っていましたが、うつ病になってからは全く行かれなくなっていました。しかし、この心躍るサウンドとダンスに心が沸き立つような感覚に陥り、ついに、コンサートに足を向けるようになったのです。
まさに「復活の福音」でした。
そして、あるBABYMETALのコンサートの時に、一際目を引くダンスをする「新顔」が現れました。公には名を臥された仮のメンバー、それが鞘師里保さんでした。

「仁王立ちになる鞘師里保」紙に鉛筆, 2019年  (C) FICINO-METAL

蘇る画家の魂


美しい指先、カッと見開く眼光、回転のたびに正面を向く白い顔(かんばせ)、ぶれない重心、弾む、いや弾みすぎるステップ、あふれるエネルギー、、、それらは私を魅了しました。そして思いました。この熱量は只事ではないと。
聞けば鞘師さんは、モーニング娘。の中心メンバーとして活動した後、数年間芸能界を離れて外国にいたといいます。私が見たのは、そんな彼女が日本に復帰した初めての公演だったのです。
そして、その容姿、顔つきや肌の色は、私の好みにぴったりでした。

「鞘師里保」紙に鉛筆, 2020年 (C) FICINO-METAL
「想い」1989年ごろ, F10, 和紙に岩絵具、墨、胡粉 (C) FICINO-METAL

上にあげた1989年ごろの作品「想い」をご覧ください。何となく鞘師さんに似てることがわかると思います。鞘師さんは1998年生まれですから、この作品を描いた頃は影も形も無かったことになります。
大袈裟ですが、突然目の前に現れた「私好みの弾ける肉体」は、私の創作意欲を刺激するには十分でした。

描けるかも。

いつしか鉛筆を削り、紙に頭の中のイメージを現出させようとしている自分がいました。
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