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はじめましてのカヌレ

 一人の時に甘いものを買う回数が年毎に減ってきた。その分買う時は特別感があり、コンビニスイーツやアイスを買った時のうきうきが1日ある。イヤーな仕事の朝も冷蔵庫に眠るスイーツを思えば布団から出るのも億劫にならない。
 手軽にうっきうきな気分にさせてくれるスイーツ最高。
 そんな手軽なスイーツとはまたちょっと違うスイーツを買うことももちろんある。

 家の近くにある美味しいと評判のお店のマカロンや専門店のドーナツは食べる時は少し緊張する。「美味しいものをじっくり味わって食べたい!」という気持ちが前面に押し出されるのである(決してコンビニスイーツと比べてるわけではない。緊張が無いという点でコンビニスイーツのカジュアルさを愛している)。
 また最近は食べものを記録としてだけでなく、見て美味しいと思えるような実感をわき立てる写真を撮る練習をしているので、上記のスイーツ系を買うと無駄に力が入るのだ。

 そして今回買ったのは先日日帰りで行った飛騨高山にある"Le pain Mujo"というパン屋さんのカヌレ(日帰り旅行についてはまた後日書く予定)。店員さんのおすすめで買ったのだが、なんとこれが初めてのカヌレである。
 パン屋さんのカヌレ!小さくて可愛らしいビジュアルのカヌレ!初めてのカヌレ!なんとまあ二重に三重に力が入る代物を手にしてしまったものだ。まずはとにかく大事に家に持って帰るのが第一。朝に買ってしまったものだからその日ずっとリュックの中を気にしながら歩くことになったが、考えてなかった自分の為のお土産を買ったという満足感が旅の最初で味わえたのだった。

Le pain Mujo

 そもそもカヌレってなんなんだろう。私のファーストインプレッションは映画版『四月は君の嘘』でヒロインの宮園かをりちゃんが主人公の有馬公生くんにおねだりをしていたお菓子であるということ。『カヌレ買ってきて!』というセリフにハテナマークを浮かべそれ以降カヌレに興味を持っていかれてシーンが頭に入ってこなかったのが始まりだ。
 それ以降あのポテっと小さなビジュアルを可愛く撮った写真がSNSのそこかしこで見掛けるようになり、見るたび食感や味を想像して楽しんでいた。想像だけでなんか満足していたのでなかなか手に取る機会に巡り合わず約5年の月日が過ぎ…ついにこの手に、そして口に入る時がやってきたのだ。

カヌレは、フランス南西部ボルドー地方の伝統的なお菓子です。
正式名は『カヌレ・ド・ボルドー』。カヌレとは「溝のついた」という意味で、カヌレを焼くための“カヌレ型”には、12の溝がついています。この型に蜜蝋を塗って焼くことで、外側が香ばしくカリカリとした食感に仕上がります。その一方で、内側はしっとり柔らか。しっかりと食べ応えのある洋菓子です。
『Sweeten the future』サイトより

 なるほど、フィナンシェみたいにフワッとしてるのかと思っていたけど蜜蝋で外はカリッとしているのか。パン屋さんでは指さしで店員さんが取ってそのまま袋に詰めてくれるスタイルだったので家に帰って袋から出すまで本当にどんなものか分からなかった。
 小さな部屋で一人と一つのカヌレがついにご対面なんて…ドキドキする。
 カメラの準備も万端。いざ。

 うーーんかわいいね〜
 お菓子屋さんで見かけるよりは少し大きめだけど、溝の部分が繊細で、蜜蝋で塗られているからか出っ張り部分が均等に光で照らされてる光景がたまらない。

この真ん中のとこ!!蜜が固まって綺麗!!

 上から撮るとお花みたいだ〜かわいい〜
 さてさて切ってみようかと軽い気持ちで包丁を差し込もうとし…入らない。想像ではサクッ、スッ、と入っていたのだけど上が思った以上に硬い。真下に力を入れると下の部分に負荷が掛かってるのが分かる。これでは切れたとしてもビジュアルが変わってしまうと思い、次は木こりスタイルで角に少しずつ刃を前後させてみると少しの切れ目が。

上手くいってホッ…

 さっきの写真と比べると多少下に負荷が掛かった感じが否めないが、中もよく写真で見たやつだ〜卵感を彷彿させる真っ黄色がそそられるな〜。卵好きにはたまらない色。
 写真もあとで食感や味が思い出せそうに撮れていい感じ。今書いてて涎が出てきた。パブロフの犬を思い出す。

 トースターで3分ほどリベイクし、いただきます。
 さっきなかなか包丁が入らなかった通り、上はかなり力を入れて噛んだ。ガリガリと噛みながら蜜の甘さに癒される。中は本当に卵感強くて素朴な甘みが染み出している。大好きな味だ。
 スタバのコロンビアコーヒーがまた甘さを引き立てて美味しい美味しい。

 一口食べれば緊張が癒しに変わり、口の中の幸せを噛み締める。幸せな夜のカフェタイムでした。

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