マンガ『2.5次元の誘惑』は人間讃歌の物語だ

現在、マンガ『2.5次元の誘惑』のすべてのエピソードが、ジャンププラスで無料公開されている。もし読めそうであれば、是非読んでみてほしい。この文章はそのために書かれる。

『2.5次元の誘惑』は、いわゆるエッチなマンガだ。特に最初の10話分くらいは、少年誌的な描写が多い。主人公の男子生徒は、うっかり女子生徒の裸を見てしまったり、おっぱいを触ってしまったりする。序盤はけっこう激しいことになっているので、とても気軽には勧められない。擁護しようのないラッキースケベ系エロコメマンガなのだけど、途中ですごいマンガに化ける。

「すごいマンガ」に変化してからも、登場する女性たちが半裸になるシーンは頻繁に出てくるので、引き続きやっぱり大きな声では勧めにくい。勧めにくいのだけど、しかし、「このマンガの達成を知らずに、コンテンツ好きとして現代を生きるのは、ちょっともったいない」と言ってもいいくらいの作品だと思っている。

わたしが『2.5次元の誘惑』を読むことにしたのは、るいべえさんのnoteがきっかけなので、迷っている人はこちらを読んでほしい。

わたしは、読んで、驚いた。「この題材をつかって、こんなところに到達できるの?」という驚き。

お色気ハーレムラブコメ世界においても、キャラクターたちはそれぞれの人生を懸命に生きているのだ。過去があり、複雑な感情があり、複雑なままの今があるのだ。まじかよ。

作品のテーマのひとつが「オタクであることやコスプレをすることや他者に認められたいと思うことは、恥ずかしいことなのだろうか」というものだ。
恥ずかしいことではない、好きなものを愛することは素晴らしいんだと訴えかけるのが、『2.5次元の誘惑』というマンガだ。
「エッチなラブコメ」という、気軽には褒められないタイプの表現方法でそんな人間讃歌を描いているのが、なんとも面白いし説得力がある。

誰がなんと言おうと、好きなものを好きだと言うことの尊さは、決して揺るがない。それがこの作品のメッセージのひとつだろう。だからわたしたちは、このマンガを褒めることをためらわない。

この作品には、オタクコンテンツやコスプレやエッチなラブコメに対する作者の愛がある。オタクを生きるわたしたちへの愛がある。愛を表現することの楽しさがある。だから素晴らしい。

万人に勧められる作品ではない。序盤の描写には眉を顰める人も多いだろう。それでも、読めそうであれば、是非読んでみてほしいと思う。全話無料公開期間は12月25日まで。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?