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公開質問状の質問内容を解説!

 Fridays For Future Japanでは、気候変動対策についての公開質問状を主要8政党(自由民主党、立憲民主党、公明党、日本共産党、国民民主党、日本維新の会、令和新撰組、社会民主党)に送付し、回答をいただいています。回答をいただけた政党の回答はnoteにて公開していきます!

 今回はまず、その公開質問状の質問内容を簡単に解説していきます!

質問内容

(1)現在のNDCは46%ですが、NDCは何%が理想であると考えていますか?また、現実的に何%であるべきと考えますか?年度比も含めてお答えください。

(2)国連は、高効率のものも含め、先進国に対して2030年までの石炭火力の廃止を求めています。それを踏まえ、石炭火力は何年までに廃止すべきだと考えますか?

(3)日本の気候変動対策は、他の先進国と比べると遅れを取っていますが、現在の日本の気候変動対策における最大の課題は何であると考えますか?

(4)将来世代を中心とした一般市民との意見の共有が重要であるという内容が第6次エネルギー基本計画案にも記されていますが、現状はそれに対して十分の意見交換が行われていると思いますか?また、どのように市民、特に若い世代との意見交換、もしくは政策への反映を行いますか?

(5)気候変動において、将来世代がより大きな被害を受けることが指摘されています。こういった将来世代への被害の責任について、責任は誰にあると思われますか?

質問1の解説

(1)現在のNDCは46%ですが、NDCは何%が理想であると考えていますか?また、現実的に何%であるべきと考えますか?年度比も含めてお答えください。

 NDC(Nationally Determined Contribution)とは、各国が決める温室効果ガスの削減目標のことです。どの国も、「何年の排出量と比べて、何%減らす」という数値を決め、COP(Conference of Parties)に提出します。COPとは、毎年各国の政策を作る官僚や政治家、企業の人、活動する人が集まって気候変動の議論をする場所です。今年のCOPは10月31日~11月12日とNDC提出直前の今が最終調整のタイミングなんです!

 NDCは、日本全体でどれぐらい気候変動対策を頑張るのか、ということに直結するため、この目標はとても重要なポイントです。

 今の日本のNDCは2013年度比46%で、欧米などの先進国と比べると低めです。ちなみに、2013年という微妙なタイミングを比較の基準に選んでいるのは、福島での原子力発電所事故によって日本中の原子力発電を止めたことに関係しています。一時的に火力発電で電力を賄うことになり、2013年が日本の歴史上、最も温室効果ガスの排出が多かった年なのです。

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(ハフポスト日本版より)

 それに対して、パリ協定で定められている1.5℃目標達成のためには、2030年までに世界中で2010年度比45%を達成しなければいけないとされています。

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(https://theconversation.com/ipcc-report-global-emissions-must-peak-by-2025-to-keep-warming-at-1-5-c-we-need-deeds-not-words-165598)

 また、Climate Action Trackerという研究機関はレポートで、日本に限って言えば、1.5℃目標を達成するためにはNDCを62%以上にする必要があると示しています。

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(https://climateactiontracker.org/press/japans-paris-agreement-target-should-be-more-than-60-by-2030_analysis/)

 こうした中、各政党がどんな目標を掲げるかが、各政党がどれぐらい気候変動対策を重視しているのか、という指標の一つになると思います。

質問2の解説

(2)国連は、高効率のものも含め、先進国に対して2030年までの石炭火力の廃止を求めています。それを踏まえ、石炭火力は何年までに廃止すべきだと考えますか?

 国連のグテーレス会長は、スピーチでG7に入っている先進国は2030年までに石炭火力発電をすべて廃止させるよう求めていました。

 なぜいろいろな発電方法がある中で石炭火力発電の廃止にこだわるかというと、石炭火力発電が数多くある発電方法の中で最も多くの温室効果ガスを排出するものだからです。なお、石炭を燃やす際の大気汚染も指摘されており、日本でも数件の石炭火力発電所の停止を求める訴訟が起きています。

 IEA(国際エネルギー機関)という研究機関では、2050年のネットゼロを達成するためには2030年までに石炭火力発電はすべて廃止させる必要があるということをレポートの中で示しています。

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 日本の現行の政策では、2030年までに非効率な石炭火力を停止するということになっています。しかし、そうした場合でも2030年時点で日本全体の電力の約19%が石炭火力になると計画されています。

 電力を安定して供給すること、発電のコスト(今は石炭火力のほうが安いですが、2030年には太陽光のほうが安くなります)などを踏まえて各政党の回答を伺います。

質問3の解説

(3)日本の気候変動対策は、他の先進国と比べると遅れを取っていますが、現在の日本の気候変動対策における最大の課題は何であると考えますか?

 最初の質問でも見たように、日本の気候変動対策は欧米などに比べて遅れをとっています。

 もともと、2005年ごろまで日本の太陽光発電などの技術は世界トップクラスでした。また、パリ協定の前の気候変動の国際条約だった京都議定書も日本が主導したなど、気候変動などの環境対策は日本が先導していました。しかし、いつの間にか海外に追い抜かれ、いまは足を引っ張っているような状況です。

 こうなってしまって原因は福島原子力発電所の事故や、山が多く平地が少ないという地理的なことだという意見もありますが、政府による決断がいつも遅いことも原因とも言えます。

 例えば、日本が2050年のネットゼロを宣言したのは、アメリカの大統領選で気候変動を否定していたトランプ氏が負け、逆に気候変動対策に積極的だったバイデン大統領が当選を確実にした後でした。国際的に後れを取らないために、なんとか2050年ネットゼロを宣言したような形で、いつも対策が後手に回っています。

 こういったことを踏まえ、課題を聞くことで各政党の考え方を知ることがこの質問の目的です。

質問4の解説

(4)将来世代を中心とした一般市民との意見の共有が重要であるという内容が第6次エネルギー基本計画案にも記されていますが、現状はそれに対して十分の意見交換が行われていると思いますか?また、どのように市民、特に若い世代との意見交換、もしくは政策への反映を行いますか?

 「第6次エネルギー基本計画」というものが10月22日に閣議決定されました。電力や重厚長大な産業などのエネルギーを扱う部門は、日本が排出している温室効果ガスのほとんどを占めています。こういった部門の今後の在り方を決めるのが、この「第6次エネルギー基本計画」です。

 この計画はネットでも調べれば見れるものですが、一番最後のページに、『政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実』というパートがあります。ここでは、国民との対話などについて書かれていますが、とても抽象的な内容だけが書かれており、実際にどうやってコミュニケーションを取るのか、については書かれていません。(https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005.html)

 この部分を具体的にどうやって実現していくのか、どうすればもっと自分たち若い世代は政策決定に関われると考えるか、ということを聞くことがこの質問の目的です。

質問5の解説

(5)気候変動において、将来世代がより大きな被害を受けることが指摘されています。こういった将来世代への被害の責任について、責任は誰にあると思われますか?

 最後になりましたが、この質問が一番重要かもしれません。この質問だけを見て、「責任」と言われても???だと思うので、少し説明したいと思います!

 まず、気候変動の原因と、もたらされる被害についてまずは理解する必要があります。

 気候変動の原因

 気候変動(≒地球温暖化)の原因は、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出です。では、その温室効果ガスは「どこ」もしくは「誰」が多く排出してきたのでしょうか。

 まずは国ごとで見てみると、先進国で多くの二酸化炭素が排出されてきたことが分かります。また、これは2011年までのものをまとめていますが、最近では中国やインドでは、経済先進国の産業が移転することなどによって排出量が増えてきているはずです。

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 次に個人単位で見てみると、富裕層がより多くの二酸化炭素を排出していることが分かります。人口のうち、最も裕福な10%の人々が世界中の二酸化炭素排出のうちの50%以上を占めているんです。

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 気候変動によってもたらされる被害

 それに対して、被害は「どこ」にもしくは「誰」にもたらされているんでしょうか。

 それは社会的な弱者です。具体的には、貧困層やアフリカ系・ヒスパニックの方々、各国の先住民、女性、経済途上国の方々、高齢者などです。

 例えば、経済途上国は赤道付近もしくは南半球に多く位置していますが、そういった地域では台風や洪水、干ばつなどがもともと起こりやすい場所が多いです。そういった場所だと、気候変動によって災害がより頻繁かつ深刻になることで直接影響を受けます。そもそも、経済途上国が今まで経済先進国のように大きな社会を作ることができなかった理由は、災害が多かったことなどによる地理的な理由が大きいです。

 さらに災害起きた際に、女性が差別されている社会では、女性が教育を十分に受けることができておらず、文字の読み方や泳ぎ方などを習っていないことで避難などの際に不利な状況にさらされることとなります。

 経済先進国の中でも、災害や熱波などへの対策を貧困層が十分に行えなければ、それは基本的な人権や生存にかかわる問題となります。人種・国籍なへの差別は、人々の意識だけでなく、歴史的に差別が行われてきたことによって、特定の人種や国籍が貧困の陥りやすいといった構造的な問題となっています。

 つまり...

 気候変動は、経済先進国の人々や富裕層が大きな原因となり、経済途上国の人々や差別されてきた人々に大きな被害がもたらされる問題なのです。

 この状況は、交通事故と似てると思います。わざとではなくても、交通事故を起こして誰かをケガさせたら、その責任を取るのは当然ですよね。気候変動という問題は数十年も前から指摘されてきたのに、それに対して十分に行動してこなかった人々に大きな責任があることは明白ではないでしょうか。

 これをもう少し細かく考えてみると、「でも、だれでも気候変動を止めるような行動がとれるわけじゃないじゃん?」と思うんじゃないでしょうか。自分もそう思います。社会全体の構造を決めるようなことができるのは、政治家や官僚、企業の上役などのもっと大きな力を持っている方々であるようにも思えます。

 しかし、自分たちも一応、投票したり、署名したり、物を買ったりして社会に関われるため、責任がないとも言えないです。

 また、時間軸で考えると、数十年前から生きている人は今生まれた赤ちゃんよりも多くの温室効果ガスを排出し、行動するための時間的な余裕があっったはずであり、年齢が高い層がより大きな責任を持っているとも考えられます。

 こういった点は、若い世代などの市民の意見反映や、気候変動対策を行うことによって逆に仕事を失ってしまう方々への補償などの政策に大きく関係するため、とても重要です。

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