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部分積分を無限級数で解く

$${\int f(x)g(x)dx=F(x)g(x)-\int F(x)g'(x)dx}$$で表される部分積分ですが、今回はこの積分の中では難し目の問題に使われる法則の活用をひとつ考えてみます。

まず、この部分積分の公式を横に伸ばしてみます。

f(x)の積分を$${\int \int f(x)}$$、微分を$${f^{(2)}(x)}$$で微積分の回数と共に表すこととします。(積分については、適当な記号がみつかりませんでした。)

$${\int f(x)g(x)dx=\int f(x)g(x)-\int (\int f(x)g^{(1)}(x))dx}$$

$${=\int f(x)g(x)-\int \int f(x)g^{(1)}(x) + \int (\int \int f(x)g^{(2)}(x))dx}$$

$${=\int f(x)g(x)-\int \int f(x)g^{(1)}(x) +\int \int \int f(x)g^{(2)}(x) - \int (\int \int \int f(x)g^{(3)}(x)) dx}$$

ということで、今回の記事は、これが全てです。部分積分の公式は、出てきた公式にさらに部分積分を適用すると、際限なく横に引き伸ばすことができます。一般項にすると、次のように表すことができます。

$${\int f(x)g(x)dx=\int f(x)g(x)-\int \int f(x)g^{(1)}(x) +…+(-1)^{n} (\int^{n+1}f(x)g^{(n)}(x))}$$

全ての項が同じ関数からの規則性のある回数の変換に従う関数であるため、幾らか応用の方法を考えることができると思います。

部分積分の展開には順方向と逆方向がある。

上の式による展開には、順方向と逆方向があります。fとgのうち、一方を常に積分、一方を常に微分することで得られる公式なのですが、微分する方をfと取るかgと取るかにより、展開式が変わります。つまり、

$${\int g(x)f(x)dx=\int g(x)f(x)-\int \int g(x)f^{(1)}(x) +…+(-1)^{n} (\int^{n+1}g(x)f^{(n)}(x))}$$

となります。どちらも展開の結果は同じになります。しかし、式の取り方によっては一方が全く収束が見られない展開式になることもあります。この性質は、後で説明する無限級数の作り方についてで非常に大事な考え方となります。

無限級数の和を作り収束させた時、結果の関数は元の関数の不定積分となる。

n回目の微分×積分の積の結果を$${a_n}$$とした時、f(x)・g(x)の積分は$${a_n}$$の総和で表すことができます。このことを使い、次のような使い方ができることと思います。

$${\dfrac{d}{dx}f(x)=p(x)f(x),\dfrac{d}{dx}g(x)=q(x)g(x)}$$の時、次のことが成り立つ。

$${\int f(x)g(x)dx=\sum\limits_{k=0}^\infty (\dfrac{q(x)}{p(x)})^k\int f(x) dx \cdot g(x)}$$

もしq(x)/p(x)が1ではない定数であれば、等比級数の和として収束していきます。そうでなくても、微積分の回数nに依存する関数であれば、一般項を作り、無限級数の和として表現できることになります。
もしq(x)/p(x)の絶対値がnが大きくなればなるほど小さくなる関数であれば、大方の級数であれば収束します。無限級数の和も、実数の範囲内で一定値を取ることになります。(一般項が減少するものの、収束しない無限級数もあるため、収束性については、証明が必要です。)
q(x)/p(x)が、nが大きくなればなるほど大きくなるのならば、一般に無限級数としては発散します。しかし、微分積分を逆に取れば収束する関数もあるみたいなので、イコールが成立するためにnの値によって振動したり、繰り込みみたいなことが行われるのかもしれません。

(無限級数の計算例)

$${f(x)=e^{2x},g(x)=e^{-3x}}$$のとき、
$${\int f(x)g(x)dx=-e^{-n}}$$

$${\dfrac{df(x)}{dx}=2e^{2x}=2f(x),\dfrac{dg(x)}{dx}=-3e^{-3x}=-3g(x)}$$

$${\int f(x)g(x) =\lim\limits_{n \to \infty}\sum\limits_n (-\dfrac {2}{3})^n \int f(x)dx g(x) }$$

$${ =\lim\limits_{n \to \infty} \dfrac{1-(-\dfrac{2}{3})^n)\cdot (-1)^n}{1-\dfrac{2}{3}}(-3e^{-3x}\cdot e^{2x})}$$

$${=-e^{-n}}$$

ということで、注意深く検算が必要ですが、積分の時に使えるテクニックでした。

ちなみに、今僕が興味を持っている積分がありまして、

$${\int f(x)(cosπx)^{2r} dx}$$というものです。cosπxの累乗の積分は、整数の値だけ1を取り、後の実数xでは全て0を取ります。また積分の結果が、xの取りうる整数の個数と同じ1の倍数となります。さらに、微分積分が可能ですので、積を取ると、連続的な値を取るf(x)のxが自然数の時の和を積分の形で表すことができます。難しい積分になるのですが、rを無限大にした時の値がかなりよく一致するので、よく調べてみたいと思います。

以上です。











追加:計算例

かなり難しい計算となる、かつ未検算ですが、参考用に三角関数を含む関数の積分の計算例を書き出しておきます。

計算例:$${\int \dfrac {sinx}{x}dx}$$

sinxと、$${\dfrac{1}{x}}$$の微積分を調べて、部分積分により漸化式を作る。

$${\dfrac{d}{dx} sinx=cosx,\dfrac{d^2}{dx^2} sinx=-sinx}$$

$${\dfrac{d^n}{dx^n} sinx=(-1)^{n/2-1/2}sinx(nが奇数の場合)}$$

$${\dfrac{d^n}{dx^n} sinx=(-1)^{n/2}cosx(nが偶数の場合)}$$

$${\dfrac{d}{dx} \dfrac{1}{x}=-\dfrac{1}{x^2},\dfrac{d^2}{dx^2} \dfrac{1}{x}=\dfrac{1}{2x^3}}$$

$${\dfrac{d^n}{dx^n} \dfrac{1}{x}=(-1)^n\dfrac{1}{(n-1)!x^{n+1}}}$$

sinxと1/xの関数名をそれぞれ、f(x)、g(x)とする。f(x)とg(x)のn回微分はそれぞれ、自身のn+1回微分、n+2階微分との間に次のような関係が見られることがわかる。

$${\dfrac{d^{n+2}}{dx^{n+2}}f(x)=-\dfrac{d^n}{dx^n}f(x)}$$

$${\dfrac{d^{n+1}}{dx^{n+1}}g(x)=-\dfrac{n}{x}\dfrac{d^n}{dx^n}g(x)}$$

微分を積分の逆関数と捉えるとf(x)の積分とg(x)の微分同士で積を取れば、次の関係もわかる。

$${\dfrac{d^{n+2}}{dx^{n+2}}g(x)\cdot\int^{n+1}f(x)dx=-\int^{n-1}f(x)dx\cdot \dfrac{n(n+1)}{x^2}\dfrac{d^{n}}{dx^{n}}g(x)}$$

この関係式を使い、部分積分から無限級数を作ることを考える。$${\int f(x)g(x)dx}$$を考え、部分積分を順に作用させていけば、無限級数の和を作ることができる。この無限級数を$${a_n}$$とすると、一般項は次のように表すことができる。

$${a_n=\dfrac{n(n+1)}{x^2}a_{n-2}、a_1=\int f(x)dx\cdot g(x)、a_2=-\int \int f(x)dx\cdot \dfrac{d}{dx}g(x)}$$

$${a_1=-\dfrac{cosx}{x}、a_2=-\dfrac{sinx}{x^2}}$$

また、総和を次の級数で表す。

$${c_n=\sum\limits_{k=1}^n a_k}$$

この級数を求めて、n→∞の時の$${c_n}$$が一つのxの関数に収束すれば、その関数はf(x)g(x)のxに対する積分と考えることができる。

まず、$${a_n}$$の一般式を求める。$${b_n(n+1)!=a_n}$$と置く。

$${b_n (n+1)!=\dfrac{n(n+1)}{x^2}b_{n-2}(n+1)!}$$

$${b_n=\dfrac{1}{x^2}b_{n-2}}$$

$${b_{n}=\dfrac{1}{x^{n-2}}b_2(nが偶数の場合)、b_{n}=\dfrac{1}{x^{n-1}}b_1(nが奇数の場合)}$$

$${a_{n}=\dfrac {(n+1)!}{x^{n-2}}a_2(nが偶数の場合)}$$

$${a_{n}=\dfrac{(n+1)!}{x^{n-1}}a_1(nが奇数の場合)}$$

$${a_{n}=\dfrac{(n+1)!}{x^{n-2}}\int \int f(x)dx\cdot \dfrac{d}{dx}g(x)(nが偶数の場合)}$$

$${a_{n}=\dfrac{(n+1)!}{x^{n-1}}\int f(x)dx\cdot g(x)(nが奇数の場合)}$$

次に、総和$${c_n}$$を調べる。

$${c_n=c_{n-1}+\dfrac{(n+1)!}{x^{n-1}}a_1(nが奇数の場合)}$$

$${c_n=c_{n-1}+\dfrac{(n+1)!}{x^{n-2}}a_2 (nが偶数の場合)}$$

$${c_{2m}=\sum\limits_{k=0}^{m}\dfrac{(2k+1)!}{x^{2k-2}}a_2+\sum\limits_{k=0}^{m}\dfrac{(2k)!}{x^{2k-2}}a_1}$$

この級数の数値を求めればいいのですが、階乗が分子に来る数値の総和なので、難しい処理をします。まず、$${\int \dfrac{cosx}{α+x}dx}$$を考えます。部分積分を使い、無限級数に展開します。

$${\int\limits_x^\infty \dfrac{cost}{α+t}dt}$$
$${=\dfrac{sinx}{α+x}-\dfrac{cosx}{(α+x)^2}-\dfrac{2sinx}{(α+x)^3}+\dfrac{6cosx}{(α+x)^4+…}}$$

xに0を代入すると、

$${\int\limits_0^\infty \dfrac{cosx}{α+x}dx=\sum\limits_{k=0}^\infty \dfrac{(-1)^k(2k)!}{α^k}}$$

とわかる。同様に、$${\int \dfrac{sinx}{α+x}dx}$$について、

$${\int\limits_0^\infty \dfrac{sinx}{α+x}dx=\sum\limits_{k=0}^\infty \dfrac{(-1)^k(2k+1)!}{α^k}}$$

とわかるので、これを使って、

$${c_{2m}=\sum\limits_{k=0}^{m}\dfrac{(2k+1)!}{x^{2k-2}}\dfrac{-sinx}{x^2}+\sum\limits_{k=0}^{m}\dfrac{(2k)!}{x^{2k-2}}\dfrac{-cosx}{x}}$$
$${c_{2m}=\int\limits_0^\infty \dfrac{siny}{x+y}dy\dfrac{-sinx}{x^2}\cdot x^3+\int\limits_0^\infty \dfrac{cosy}{x+y}dy\dfrac{-cosx}{x}\cdot x^2}$$

$${\int \dfrac {sinx}{x}dx=-\int\limits_0^\infty \dfrac{siny}{x+y}dy \cdot xsinx-\int\limits_0^\infty \dfrac{cosy}{x+y}dy \cdot xcosx}$$

ということで、実は、三角関数を多項式で割った式の積分は、特殊関数として、ある一定以上の変形を続けることが困難な積分に該当するようです。僕も、これ以上の解析は出来なかったです。

ですが、全ての三角関数/多項式の積分はある程度の変形により、少ない種類の原始的な関数で表示することができるのでしょう。

ちなみに、指数積分、対数積分、三角積分と呼ばれるものは、それぞれに特殊な関数として定義式が定められており、複雑な関数から成る積分はこれらの定義がされた関数の組み合わせで表すことができます。

$${Si(z)=\int\limits_0^z\dfrac{sinx}{x}dx}$$

$${si(z)=-\int\limits_z^\infty\dfrac{sinx}{x}dx}$$

$${Ci(z)=-\int\limits_z^{z+\infty}\dfrac{cosx}{x}dx}$$

$${Cin(z)=\int\limits_z^{z+\infty}\dfrac{1-cosx}{x}dx}$$

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