僕が「ドキュメント72時間」を愛する理由

僕は、幼い頃からTVっ子で、ドラマやバラエティ、音楽番組も見ているが、ドキュメンタリーは興味のある内容だけ見ている程度だった。
そんな僕だが、毎週見ているドキュメンタリー番組がある。
NHKで金曜の夜に放送されている「ドキュメント72時間」という番組をご存知だろうか。
毎回、1つの場所にカメラを据え、様々な人間模様を「72時間」(24時間×3日間)「定点観測」する30分程のドキュメンタリー番組だ。
僕は、この番組を見続けて、早5年が経っていたので、「「ドキュメント72時間」は良いぞ……!!」という、いわゆる布教記事を書くことにした。


きっかけ
僕はその時、持病の検査のため、静岡の病院に入院していた。
深夜も起きてて良いと言われたので、夜型の僕は、深夜も眠くなるまで起きていた。
某日の夜、興味を惹く番組がやってなくて、何となくNHKを付けていた。
前の番組が終わり、画面いっぱいに秋田港の吹雪の様子が映し出された。
後述する「ドキュメント72時間 年末SP」で見事第1位に輝き、今も根強い人気を誇る「秋田・真冬の自販機の前で」の冒頭シーンだ。
ぼんやりと見ていた僕だが、やさしくも濃密な世界に強く引き込まれた。

魅力
では、どのような点が世代を問わず、多くの視聴者を惹き付けるのか?
過去の放送を見て、様々な観点から僕なりに分析してみた。

・十人十色のロケ地と人々
飲食店や保育園、スーパー等、日常でよく見掛けても一風変わった場所や、そばとうどんの自販機、駅や大型施設のストリートピアノ、専門店等、様々で、見る人を惹き付け、日本も世界も色んな所があるなと感じさせられる。
選定は、「老若男女が集まる場所」を基準に行われているそう(もう1つあったのだが、失念した)。
そしてまた、数日前に撮った映像を間に挿入することなく、時系列順に並んでいることもだが、「定点観測」だけで「3日間」密着取材するという点も「新しさ」があり、魅力として大きい。
番組HPにある「企画投稿」で、視聴者も取材してほしい場所を送ることが出来、採用された例もある。
ちなみに、「ウワサの猫と商店街」(2015年6月放送)に出てきたたばこ店(休日だったので、猫には会えなかった)と「冬の東京 たい焼きエレジー」(2019年2月放送)のたい焼き屋さんは、いわゆる聖地巡礼として放送後に訪れている。

また、ロケ地で「偶然」出会った人に取材していくのだが、病気をした(してる)人、職を変えた(変える予定)人、夢を叶えようとしてる人、挫折した人、恋人、家族、友達、夫婦、離婚経験者、サラリーマン、ご老人、学生…と良い意味で色んな方がいて、人の数だけ人生や事情があると感じる。
発せられる言葉に耳を傾けると、自分が今まで気付かなかったことや「おもいで」「死生観」「愛」等、1人の人間として生きる上で大切なことを考えさせられ、人によっては、固定概念が覆されるだろう。

・松崎ナオが歌う主題歌「川べりの家」が美しく、濃密な時間の余韻を残す
30分程度という短時間なのに、まるで短編小説や映画のように味わい深い。
「川べりの家」のやさしく寄り添うイントロで「あっ、もう終わり!!?」となることもあるが、何回か見ていると、ナレーションの雰囲気で「あ、終わるな、締めだな」と察することが出来る(気がするのは僕だけ)。
また、「とても儚ないものだから大切にして 一瞬しかない」と1人の人間としての人生の有限さを歌っていると僕は解釈している。
ちなみに「東京・隅田川 花火のない静かな夏に」(2020年9月放送)のEDで流れたピアノ弾き語り(と思われるver.)は水のように清らかで美しかった。

・ナレーションの語り口が視聴者と同じ目線
淡々としているが、「えっ?(疑問)」や「~だって」というやわらかい口調が、ぬくもりがあってやさしく、感情の表現も巧く出来ている。
ナレーションは、吹石一恵さんや鈴木杏さんが担当されてることが多いが、稀に「新宿・音楽スタジオ ぼくらがバンドを組む理由」(2018年1月放送)に向井秀徳さん等、その回に合わせ、起用することがある。
「大阪・西成 24時間食堂」(2018年6月放送)では、方言や訛りを用いた。

・取材班の話を引き出す力と姿勢
何をしているのか、何故そこにいるのか、というありふれた質問からはじまり、だんだんと取材対象者の半生に迫っていくのだが、取材班の質問の仕方が取材対象者の話で詳しく聞きたい所を冷静に質問したり、「そうなんですか?」「凄い!!」と相槌したり、素直に感情を口に出したりと話の聞き方が否定を一切せず、丁寧だ。



どれも傑作すぎて…
この時期になると、年末を意識するようになる。恨めしいウイルスに振り回された今年ももうすぐ終わる。
そして、今年も「ドキュメント72時間」の年末恒例特番「もう1度見たい ドキュメント72時間」が12/30に放送される(放送日のソースは番組公式Twitterより)。
文字通り、その年(2019年と今年は前年末に放送された回も含まれた)放送された「もう1度見たい」と思う回を視聴者が1作投票して、その年の上位10作を再放送するという特番。
(NHK様、および双方のスタッフ様には申し訳ないが)バラエティや音楽等、長時間番組が苦手な僕が、紅白より楽しみにしていて、録画までしている番組(未だに去年のが残っている)だ。

2014年~2017年は、深夜~朝まで放送していたが、2018年~は、ファンミーティングを兼ねた収録方式になり、放送時間も昼~夕方に変わった。
余談だが、ドキュメント番組でファンミーティングをやっているというのは、この番組だけだと思うし、ファンとつながれる機会を持てるのは嬉しい限りである。
(毎年、保存を兼ねた録画で見ているが)個人的には、1位に近付くに連れ、夜が明けていく感じが好きなので、事前収録である旨を一定時間ごとにテロップで表示するかアナウンスして、野外を映さなければ、深夜帯でもイケるのでは…?と思ってしまう(事情等諸々があるので叶うと思ってないが)。

僕は、2017年から年末SPの投票をしているが、投票対象がどれも傑作、選べずに締切ギリギリまで悶々と頭を悩ます事態だ。
これまで投票した作品は、すべて10位以内に入っているが、全体的に見ると、上位と予想した作品が下位(逆もあり)だったり、1位が意外な作品になるので、毎年大波乱が起こるが、1つの見所でもあり、寄せられたコメント(投票理由)を聴くと、納得する。
さらに昨年から、いつかの年末SPで「事前に10位まで予想順位を付けている」という方がいたので、僕も同様のことをやって、年末SPに臨んだ。
凄く迷った上に的中率が少なかったが、わりと楽しかったので、今年もやる予定だ。

昨年には、年末SPの番組協力(兼ファンミーティング)にも参加したのだが、チラシやシール(ステッカー?)、ボールペンの他、収録時に使用した判定札まで頂いたり、公認ファンの認定状まで手渡しされた時には、そこまでやるかと笑いたくなるほどスタッフ様のファンに対する想いの強さに圧倒された。
しかし、認定されてしまったからにはとモチベーションの炎が燃え上がり、この記事を「偶然」読んで頂いた方の1人だけでも「ドキュメント72時間」を是非見てほしいと願っている次第だ。