Chapter 2-2 ケット・シーの住む都市

現代社会において「問題」というのは往々にして人間が自ら生み出したものである。エデンを追放され,自らの知恵を使って生きていくことを宿命づけられた人類。社会が未発達であった大昔,敵(問題)とは多くの場合自分の外部にあり,その意味でまさに外敵であった。しかし社会が発展するにしたがって問題の多くは社会内部から発生するようになる。

問題というのは我々の中に内包されているのであって,被害者としての我々は往々にして加害者でもある。これがいわゆる社会問題の特徴で,例えば核エネルギーの被害に遭うのが我々なら,それを利用しているのも我々である。環境問題の脅威にさらされているのが我々なら,その原因を作っているのも我々である。「環境問題とは,地球の問題ではなく,徹頭徹尾,人間の問題なのである」(松井孝典『地球・46億年の孤独』徳間書店)。外敵よりも,自分(達)の中にいる敵のほうが,ずっとやっかいで質〈たち〉が悪いのである。

我々は被害者であると同時に加害者でもある。神羅の人間でありつつクラウドのパーティーにも身を置く仲間ケット・シー(神羅カンパニーの都市開発部門統括であるリーブが操縦している)。ケット・シーは,神羅(リーブ・加害者)と人々(ケット・シー・被害者)が,実は同一であることを示す役割を担っているのだ。パーティーの中に3人の元神羅――クラウド(治安維持部門),ヴィンセント(治安維持部門タークス),シド(宇宙開発部門)――が設定されているのも同様の理由による。エアリスの実父,善良なる天才科学者ガスト博士も同じである。彼らは元神羅であり神羅の活動に加担していたのである)。またコスモキャニオンのブーゲンハーゲンも神羅の上客〈おとくい〉だという。神羅は単なる絶対悪ではない。我々自身が含まれ,加担する社会のありようなのだ

FF7を読み解く鍵
ケット・シーの使命:我々に害を与えているのは,
他ならぬ我々自身であるということを示す


ケット・シーのネーミングの本当の意味

ケット・シーのネーミングの由来はアイルランドの伝説に登場する猫の妖精「ケット・シー」であることが公式設定資料で明らかにされている(『ファイナルファンタジーⅦ 解体真書』)。

しかしもちろん真意は他にある。続く(ケット・シーのネーミングの本当の由来,およそ230字)

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