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読書note:山本夏彦『無想庵物語』(2)索引がユニーク

唐突ですが『無想庵物語』の巻末にある索引は変わっています。辞典のよう。

初めてこの本を手にした人であれば、関心が増し増しになったり、なんのことだろうと疑問符が頭の周囲を駆け巡ることでしょう。

一度でも読まれていると、本文での夏彦節を思い出してクスッとしてしまうかもしれません。

一般的な索引というのは数字の羅列。主人公や有名人ともなると膨大な量の数字が続く。

例えば、
 島崎藤村 11、16、18、22、28、75、77、85、108、115、125、126…

といった感じ。
これでは、調べたいページにたどり着くまで、ここじゃない、ここでもない、と時間がかかる。

そこで夏彦翁は、人物と事項を辞典のように並べたらどうだろうか、と面白い試みをしている。

武林文子
ー川村泉とスキャンダル 37
ー池本喜三夫とニースに駆落ちする 219
ー夏彦に飛行家になれと勧める 283

武林無想庵
ー少年のわたし(夏彦)をつれてカフェ、待合に 8
ー大正九年鵠沼の東屋で中平文子に会う 27
ーおキンと深い仲になる 95
ー無想庵に新しい恋人(波多朝子)ができる 341

もちろん、全てにわたって事項を述べているわけではない。名前だけが出てくる人もいるし、それほど無想庵とのつながりもない人もいる。

そんな人物でも簡単な紹介を書いている。煩雑なので数字は省いてここに記してみる。

宇野千代〔作家。宮田(武林)文子晩年の友〕
太田花子〔もと岐阜の芸者、欧州巡業の旅役者。のちロンドン「湖月」の主人〕
おフク〔山崎。本郷座の芝居茶屋「まる五」の女主人〕
谷崎潤一郎〔当時の流行作家〕

一つの読物となるよう心がけたので、主観的になってしまったという。週刊誌などの見出しみたいでもある。
単行本が1989年出版。単行本にはこの索引がついている。ワープロを駆使したようだが、おそらく半端ない労力だったろうと推察する。

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