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彼はこう言った

ここだけの話なのですが

毎晩のようにフィシギな体験をしてきました

深夜に目が覚めます

ゴーン ゴーン

影が起き上がり

ポケットにあるものぜんぶテーブルにならべはじめます

それらを風やら音楽やらなんやらに閉じ込め

窓から外に投げるのです

投げ終わると彼も窓から飛び降ります

毎朝外を探してみても何もありません

街を歩いていました

逆光でシルエットになった女性の横顔と

その背景の木にかけられたほんのり明るいいくつもの電球のデコレーション

その電球が背後の木製の柵で淡いオレンジの泉をつくり

木の葉の輪郭は空の灰色に溶け込みそうになりながらも存在感はより増していくようでした

私はハッとさせられ立ち止まりました

何かを思い出そうとしているようでしたが具体的には何もなく

匂いを身体で感じようとしているようでした

林檎ならその赤

音楽ならその波

その時冷たい風が頬にあたりました

風はその木をゆらしました



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