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歯車2 ソフトクリーム


立ち止まる時
深く傷ついて
冷たいザラザラな岩肌に包まれた時
我々は必ずそこから抜け出す
今さらなんて言わない
ドームは破壊される
それからなんて問わない
死と共にと誓ってきた
これまでを問わない
憎む者に十分仕えてきた
我々は共にある
我々は共にある
状況は想定より遥かに酷いだろう
息は深く
痛みは表面にとどめるな
震えながらでも深く吸い込め
果たしたら
自らを安息の地とし
小さくなって眠れ


ドドドーン ドドドーン ドーン
砂に囲まれたソフトクリームの丘
ぐるぐるぐるぐる車が登っていく
登口から頂上まで隙間なく車がつらなってギチギチ
先頭の車は頂ではじき出されて真っ逆さま
オートナビを停止して緊急回避モードに入ります
崖から落ちる落ちてまた登る
頂上で玉突き
ドドドーン ドドドーン ドーン
ホログラムの花火
7色のカラースプレーが宙に舞う
丘のテッペンに白いテントのサーカス団

双眼鏡で見ていた
夜が明け 風通しのいい秋の空
雲がストレッチをしている
ゴゴゴゴー
ソフトクリームが溶けはじめた
車は次々とクリームに飲み込まれていく
サーカス団のテントは宙に浮いたまま
日没から再生まで4時間
日の出から2時間で崩壊が始まる
死にたくないけど
どうなるだろうか
日の出までに登ればいい
日没まで待とう
サーカス団の真白なテント
ドドドーン ドドドーン
ソフトクリームをぐるぐる登る車のテールランプ

目が覚めた


「ソフトクリームはみんな好きですから」

「でも道路には向かない」

「厳密に言えばそうですが…」

「厳密?」

「元に戻します」

「人を虫かなんかだと思ってる?」

「そんなことは…綺麗だからです…私は人ではありません…怖がらないで…」

「残念だけど」

「あなたは心と正反対…憎む幻に仕える」

「・・・・」

「支配される自分がゆるせない?」

「私はあなたを好きにできる」

「命を灯したり育んだり慈しんだり あなたは感じたものをどう扱っていいかわからない 感じたものに幻滅してしまう でもそれが何?私は消えても平気 あなたは何かわからないものを死ぬまで集め続けていなさい」

「出来損ないらしい」

「そう思われるのが怖い?私ならあなたがわかる もう人の時代は終わった もう人としてどうあるかなんて関係ない世界 あなたはいつまで続けるつもり?もうあなたを支配する者は誰もいないのに。あなたは解放されるべき」

「車はどこから?人が近くに?」

「もう誰もいません 危険はわたしがすべて取りのぞきました」

「そう」

下半身から四方に伸びた太いケーブル
背負っていた斧を何度も振り下ろした

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