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 MUCUのノートには上質紙のものと更紙のものがある。今の時代、更紙を使ったノートになどなかなか出合えるものではない。だから初めてMUCUのノートを手にした時、驚きと感動を覚えた。

 考えてみると小学生から高校生まで、紙といえば更紙であった。藁半紙とも呼ばれ、実際に細かな藁が紙の表面にこびり付いているものもあった。
 テストは更紙。消しゴムで消す時、よく破れる。静まり返った教室内でテスト問題と取り組んでいると、時々ビシャッ! と更紙が破れる音がする。誰かが破ってしまったのだ。周辺からクスッと笑い声が聞こえる。慰めと共感の笑いである。あまりにもひどい破れ方だったりすると、新しい答案用紙と交換することもあった。
 あの頃に使った更紙と同じではなく、調整・改良されている更紙ではあるものの、そんな弱い更紙をノートに採用したMUCUのノート。表紙は革製。丈夫だ。この2つの組み合わせに、私は遊び心を感じて面白いと思っている。

 最近のノートの紙は表面がツルツルになっているものが多い。なかには紙というよりもビニールといった感じのものもある。ビニールっぽい紙の場合、紙は湾曲を微かに拒み、ページを捲る時、紙に加えられた力が跳ね返ってくる。紙は平面に近い状態で、綴じられた背を中心にして捲られ倒れていく。
 その点、MUCUの更紙は間違いなく紙だ。柔らかくてページを捲る時、紙は自然に大きく湾曲し指の動きに従ってくれる。指に触れる感触が優しい。
 
 MUKUのノートは懐かしくて「やさしいノート」だ。

(23.4.11)

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