非モテのマッチングアプリ

目的

  • マッチングアプリで出会った女の子との顛末をnoteに記録する

  • 振り返りを実施する

  • 次のアクションを決定する

背景

非モテである筆者は、約7年間、複数のマッチングアプリ (ペアーズ、タップル、with、ゼクシィ縁結び、東カレデート、Tinder…) を使用するも、一度もデートをできずにいた。課金額は推定5, 6万円とされる。「これで最後にしよう」、何度も口にしたその言葉と共に先月また懲りずに課金し、念願のデートの約束を2件取り付けた。うち1件は、前日にメッセージを送った際にブロックされたため、消滅した。

顛末

パンケーキ屋近くで待ち合わせをした。やってきた女の子は自分の下の名前を名乗った後、「なんて呼べばいいですか?」と聞いてきたので、少し間を置いて返答した。女の子の下の名前を呼ぶ機会なんてそうそうないし、呼ばれる機会もないから緊張した。お互い、プロフィールの名前はアルファベット一文字だった。

女の子曰く、人気のあるパンケーキ屋さんだからしばらく並ぶことになるかも、とのことだった。自分の想像していたのよりも、人は少ないように見えた。順番待ちのため、店内にある用紙に自分の名前を書く。"店内"か、"テラス席"か、"どちらでも"か、席の選択肢があったが、女の子の提案で店内に丸を付けた。
が、迂闊にも他人が書いた名前の欄に丸を付けてしまい、女の子に指摘される。テンパったぼくは、修正内容を女の子に尋ね、慌ててペンを置いた。

店員に名前を呼ばれるまでの間、店の外にあるベンチに座った。出身や仕事について軽く質問を投げかけたが、女の子からぼくに対して質問されることはなかった。質問を投げるときにぼくは女の子の方へ顔を向けるものの、女の子はずっと店内を見つめていた。変な空気を感じ、しばらく無言になった。なんとかして場を繋ごうと、パンケーキはよく食べるんですか?他にもおすすめのお店はありますか?と聞いたが、「パンケーキにもいろいろありますからね」の一言で、終わった。ぼくはエッグスシングスしか知らない。「風が強いですね。いつもですけど」、そう言って女の子はカーディガンを羽織った。昨日ここを通ったときはそうでもなかったけど、と返してみたが女の子曰くここはいつもそうらしい。午前中の予定を経てここへ到着したと聞いていたので予定を聞いてみると、「焼肉」の一言で、終わった。

店員に名前を呼ばれるまでの7, 8分間、それ以外の会話ができなかった。正直、女の子が不機嫌な様子が見て取れたから、ここで解散した方が楽なんじゃないかと、何度かシミュレーションをした。もう帰った方がいいですかね?と聞きたかった。変な憶測から自分で可能性を断つのは勿体無いと、思いとどまった。
店内に入って、メニューを眺めてパンケーキを選ぶ。女の子は、前回選んだというシフォンのパンケーキを再び選び、ぼくはフルーツのパンケーキを選んだ。飲み物を勧めてみたものの、「水で大丈夫です」とのことだったので、ぼくはアイスコーヒーを注文した。

店内は、カップルや家族連れで賑わっていた。ぼくと女の子を除けば皆、楽しそうだった。

女の子のプロフィールに書かれていた"水族館"というワードを思い出し、最近どこの水族館に行ったか聞いてみたが、「水族館?そんなこと書いてましたっけ」と答えた女の子は鞄からスマホを取り出し画面を眺めたあと、天井にあるシーリングファンを見つめた。神に誓ってもいい、プロフィールには確かに水族館と書かれていた、そう思いながらぼくもシーリングファンを見つめた。じゃ、じゃあ動物園はどこへ?と聞くと女の子は「昨日、◯◯物園に行きました」。どんな動物が目当てか聞いてみたが、「目当ての動物はない」とのことだった。◯◯動物園に行ったことがないぼくは、これ以上話を広げられなかった。メニューが置かれたテーブル、天井のシーリングファン、外の景色、女の子。視線を移動するのも疲れる気がした。

この時点でもう諦めて、メニューをひたすら眺めようかと思った。しかしここで店員の言葉を思い出す。「パンケーキはお作りするのに20分少々かかります」。今ここでメニューを眺め続ければ、メニューを暗記できてしまう_____。

休みの日は何をしているんですか?と、本当につまらない質問だなと思いながらも聞いてみると、「いや、昨日は動物園行ったしご飯も食べたし、予定がない日はないんです」とのことだった。

匙を投げるとは、このことだ。ぼくはもう、話しかけるのをやめた。開き直り、ひたすらメニューを眺め始めた。相手は途中でスマホをいじり始めた。ぼくはメニューを眺めることに徹した。10分少々メニューを眺めたが、「新食感のパンケーキ」というワードくらいしか文字として認識できなかった。

パンケーキがテーブルに到着する。パンケーキ屋の近くで出会った男女は、パンケーキとは真逆の、スカスカの言葉のやり取りを経て、フォークとナイフを取り出した。マスクを外し、無言でパンケーキを食べる。一言も、話さない。黒岩知事、見てますか。マスク会食よりも良いコロナ対策があります。無意味なアクリル板の仕切りはもうやめましょう。食事中に会話をする時はマスクをする、なんて馬鹿馬鹿しいと思いませんか。喋らなければいいんです。この風景をWithコロナのフラッグシップモデルとして、採用をご検討ください。

パンケーキを食べ終わったタイミングは同じだった。ここだけは気持ちが通じ合ったのではないかと、そう思った。パンケーキを食べ終わってから、10秒も経たないうちに、ぼくはお店を出ましょうと女の子に伝え、伝票を持っていき、クレジットカードで支払いを済ませた。こんな清々しい、爽やかな気持ちで支払ったのは初めてかもしれない。確かな達成感を感じた。

店を出ると、横から女の子の手が伸びたのが視界に入った。手には1000円札。1000円でパンケーキは食べられないよ、そう思いながら、お金を受け取るのは断った。結局一度も名前を呼ぶこともなく、解散した。

敗因 (推定)

  1. 容姿が女の子の好みでなかった

  2. 順番待ちの用紙の記入ミス

  3. 会話がとにかくつまらない

まず1.について、ぼくのプロフィールの写真は横顔の写真1枚のみだった。女の子は、この1枚の写真から、自分好みの容姿を勝手にイメージしていたのではないか。そうだとすると、会ったときの印象は大きく下がる。また、女の子のプロフィールには「身長160 cm」との記載があった。ぼくの身長は166cmであるが、日本人男性 (30 - 39歳) の平均身長は172.1 cm*であり、平均を下回っている。これまでのマッチングアプリの経験として、プロフィールに身長を書いている女性に対して自身の身長を公表すると、ブロックされることが過去に2, 3回ほどあった。他に挙げるとするならば、服装である。ぼくは無印のジーンズとユニクロのTシャツで現場へ向かった。もっと相手の好みを調べたほうが良かったかもしれない。
※e-Stat 政府統計の総合窓口より。

2.について。店内の名前を書く用紙に、ぼくは誤って他人の"店内か、テラスか、どちらでも良いか" の欄に丸を付けてしまった。女の子のプロフィールには「頭が悪い人が大嫌いです」と書かれていた。

最後に3.について。やはりこれに尽きると思う。マッチングアプリに限らず、女の子に群がるライバルは多い。ライバルに差を付けるなら生まれ持った容姿・改善を重ねた容姿、そして何より、コミュニケーション能力で相手を楽しめる必要がある。ぼくにはそれが一切できなかった。一度も、女の子を楽しませることができなかった。こちらは何度か質問し、相手から回答を得たが、そこから話を広げられなかった。そして、相手からまともに質問を受けることがなかった。逆の立場に立って考えてみれば、興味のない相手に質問を投げる必要はない。会社の説明会や講習、面接で「質問はありますか」と聞かれて何も思い浮かばないのは、興味がないからである。

次のアクション

自動更新で課金しないようサブスクリプションを停止する。

終わりに

ぼくが女の子に対して一度も嫌悪感を抱かなかったかと言うと、嘘になる。だがしかし、女の子を叩いても何もならない。自分の非モテの振る舞いが、結果として何も成果を出せなかった現実と向き合う必要がある。既に女の子にブロックされているためどうしようもないが、力及ばず申し訳ないと謝りたい。面と向かって謝る度胸もないが。「どうしてここまで容姿に魅力がなく且つつまらない人間が存在しているんだろう」と女の子は思っていることだろう。

マッチングアプリに限らず、出会いの場でのトラブルをSNSに書き記したものは多い。どこまで本当かは当事者にしか分からないし、ある程度の誇張はあるだろうけど、それに近いことが毎日のように日本全国で起こっているのだろう。「会話が通じなかった」とか「振る舞いが到底理解できなかった」とか、あのような類のものは、これまでそれなりに恋愛をしていた人と、全く恋愛をできず藁にもすがる思いでマッチングアプリに手を出した人、本来出会うべきでなかった人が出会ったことによるものだろうと思う。マッチングアプリなんてものが存在しなければ出会うこともなかった。マッチングアプリさえなければ。マッチングしてもメッセージの返事もなくブロックされたり、他の写真を要求されたので見せたら返事が来なくなりブロックされたり、相手が身長を気にしているようだったので身長を素直に伝えたらブロックされたり、マッチングアプリさえなければそんな目に遭うこともなかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?