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セントラルステーション

あらすじ
リオデジャネイロの中央駅で手紙の代筆業を営むドーラ 彼女は投函すると預かった手紙を持ち帰り、親友のイレーネにたしなめられながらも殆ど出す事をせず破り捨てていた
ある日中央駅の近くで道を横断していた女性が車に跳ねられ亡くなってしまう その女性は数日前に幼い息子と一緒にドーラに別れた夫に宛てて手紙の代筆を頼んでいた女性だった
行き場を失った息子は中央駅に留まり、手紙をちゃんと自身の父親に宛てて出したのかとドーラを問い詰める
見かねたドーラはジョズエと名乗るその少年を家に連れ帰るが、お金欲しさに養子斡旋業者にジョズエを引き渡してしまう しかしイレーネから養子斡旋業者とは実際は子供を殺して臓器を密売するグループだと聞かされ、必死でジョズエを業者から取り返すが追われる身になってしまう
仕方なくドーラはジョズエの母の手紙を手掛かりに2人でジョズエの父親を探す旅に出る事になるのだった

(物語の重要な箇所と結末に触れています)

お互いの最初の印象が最悪だったはずの相手が、お互いにとって大切な存在へと変わっていく、人生において割とよく起きる現象のひとつですが、この映画のドーラとジョズエの関係性がまさにそれだったと思います
ドーラが手紙を投函しないであろう事を見抜き、事ある事に反抗的な態度をとるジョズエはドーラにとって煩わしい存在でしかなかったし、ジョズエにとっては自分を養子斡旋業者(実際は臓器密売グループでしたが)に引き渡したドーラは信用ならぬ大人でしかなかった 
だけど2人はお互いの事がなぜか気になり離れられないでいる

旅をするにつれ2人はお互いが実は似たもの同士である事に少しずつ気付いていきます そして歳の差や立場の差はあるけれど友情が2人の中に芽生えいく その過程がとても自然で押し付けがましい描写は何一つありませんでした

そしてドーラにとっては人生を重ねるにつれて少しずつ失ってしまっていった本当の自分自身を取り戻していく旅となります ジョズエを通して自身の少女時代と再び向き合う事になり、自分の父との関係性を見直す事になる、そして自身の代筆業という仕事が人と人との大切な絆を繋いでいるのかを自覚していく
それがラストのドーラがジョズエの幸せを最優先に考えて、自分は身を引いた決断に繋がっていったのでしょう

ドーラが男性の為ではなく、ジョズエからプレゼントされたワンピースを着て鏡に向かい化粧をするその姿は観ているこちらの心が震えるほど美しく、最後にジョズエに対して恐らくジョズエに届く事のない手紙を書く、ドーラの姿は映画の冒頭のドーラとは別人のようで、ドーラがジョズエとの旅を通し本来の自分自身に立ち返っていった事がわかる感動的な姿でした

名作です

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