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ファンタジックチルドレン

あらすじ
21世紀 南にあるパパン島で両親と暮らす少年トーマ
彼はある日島で児童養護施設を抜け出した少女ヘルガと知り合う 多くを語ろうとしないヘルガにトーマは苛立ちつつも訳もなく彼女に惹かれていく自身に戸惑うのだった
そんなトーマとヘルガの周辺に全員同じ白い髪をした少年少女達が現れる 彼らはべフォールの子供達と呼ばれる500年も前から記録されている出現と消滅を繰り返していく謎の子供達だった 彼らはある人物を求めて各地に現れており、子供達のリーダー格の少年アギはヘルガに対して彼女こそ長い時を経て自分達が探したかった人だと語るのだった
アギはヘルガに向かって静かに語り出す
自分達は地球より遥かに遠い水の惑星ギリシアから来た者たちであり、ヘルガは惑星ギリシアの女王ティナの生まれ変わりであると そしてギリシアで起きたある惨劇について、そしてティナや自分達がなぜ地球に転生したのかを話すアギ
当惑するヘルガだったが記憶を辿っていくうちに過去世の記憶を取り戻していく
そんなヘルガを見て自身でも抑えきれない感情に戸惑うトーマ
そこに突然現れヘルガを奪おうとする白髪の青年
彼こそが惑星ギリシアの王子でありティナの異父弟のデュマだった


(物語の最も重要な箇所と結末に触れています)

壮大な物語の多くがそうであるようにこのアニメも登場人物達の描写を非常にきめ細かに描いていき、当初は日常の描写が多く、派手な描写も大きく盛り上がる場面も殆どありません
ところが物語が進むにつれて登場人物達の謎の言動の理由が少しずつ明らかになっていき、ラストに近付くにつれ全ての謎が解き明かされて主要人物達の想いが交差していく展開はただただ圧巻の一言でした
このアニメは輪廻転生をテーマにしていますが、人が人と想う事の強さ、家族の絆、愛されない者の悲劇などを登場人物の人物造形によって描き出しており、複雑極まりない糸のようなそれぞれの想いは手繰り寄せるとそれは一本の糸であり、愛という太い糸が根底にある事がわかります

トーマの過去世はティナの兄のような存在だったセスという青年であり、彼は絶望に追いやられ追い詰められた事により、ティナの恋人であり自身の親友だったソランを自らの手で殺してしまった事を悔やみティナのいる地球に転生し、生まれ変わりのトーマの無意識下の中でティナの生まれ変わりであるヘルガを守ろうとしました そこには彼の背負う大きな十字架が常にあり罪を犯した自分への絶望しかなかった
セスは自身の罪が許される事はないと思いながら愛するティナ、そしてソランに許して欲しかった
優秀な科学者であったアギ達は自身が神の領域を犯し人間の理を歪めた事による償いも込めて地球に転生し、ギリシア時代の記憶が無くなる12歳前に死ぬ事を繰り返しており、21回分の地球での人生の中で出会った家族達との別れの苦しみと地球での家族への愛、自分達の使命との狭間で引き裂かれるような想いで苦しんでいます
そしてティナの弟であるデュマ
彼は自己愛しか無い父親に幼い頃から父親の欲望の為に利用されてきた人形のような人生だった 彼自身の自我を持つことは許されない人生だったデュマ 彼は冷酷に見えますが孤独で愛というものを知らない人間なだけだった

そんな彼らを包み込んだのはティナの生まれ変わりのヘルガでした
彼女は自身がセスに対して甘えセスが全て受け入れてきてくれた事を自覚しトーマの身体と共に死を持って罪を償おうとしたセスに謝罪し、セスはトーマとして生きる事を選択します
アギ達はティナの肉体に戻る事を拒否したヘルガのように、自分達もギリシアの自分達の肉体には戻らずに地球での21回目の生を今度こそ全うしようと決意します
デュマはヘルガの想いを知り宿敵でもある父親を倒して過去と決別し、ヘルガの気持ちを尊重する事を決意します
それぞれがそれぞれの想いを信じて過去を振り返るのをやめ前に向かって生きていくのを決意するラストはこの壮大な物語に相応しいラストだったと思います

どの年代が観ても心を動かされ自身を内省するきっかけになるであろうこのファンタジックチルドレンは名作と呼ばれるのに相応しい作品だと思います

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