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ブレードランナー (ファイナルカットバージョン)

あらすじ
21世紀
遺伝子工学の発達により人類は人造人間レプリカントを開発し、彼らは人間以上の体力と開発者同様の高い知性を兼ね備えており、地球外での過酷な奴隷労働に従事させられていた
2019年ロサンゼルス スペースシャトルを奪い地球に密航したレプリカント4名、ロイ、プリス、リオン、ゾーラ 
彼らは自分達の製造元であるタイレル社に侵入しようとし、失敗に終わる
そこで警察は専任捜査官であるブレードランナーによって、レプリカント達を始末しようとする
引退同然だったブレードランナーであるデッカードは、かつての上司であるブライアントにより、今回の任務を遂行するように命じられる
新型のレプリカント、ネクサス6号がいるタイレル社で、デッカードはレプリカントの開発者であるタイレル博士の秘書レイチェルと出会う
彼女こそネクサス6号形のレプリカントで、人間の記憶を移植されており、自身がレプリカントであるのか人間であるのか苦悩しているのだった…

(物語の重要な箇所と結末に触れています)

父親殺し、というのはギリシャ神話などにも登場しますが、レプリカントであるロイがタイレル博士を殺害する場面において、これは父親というより神を殺す事、つまり創造主を殺す事なんだな、と僕は観ていて思いました

ロイ達レプリカントの人生は地獄そのものです 
彼らは人間同様の知性、いや並の人間以上の知性を持ち合わせるが故に学習能力が高く、そして自然と感情を持ち合わせるようになります 
ロイの表情ひとつひとつが、人間が成長過程で順々に得ていくものを、僅か数年で会得せざるを得なかった混乱、幼い子供のようでありながら、少年のようであり、人生を達観している表情も含めて全てがロイという存在に混在しており、プリスと恋に落ち、人生の喜びを知ったロイが自身の運命を悟った残酷さも含めて、ロイという存在がこの映画を支配しています

その彼が自身に対して、無慈悲極まりない人生を与えた創造主タイレル博士を殺害する事は、ロイが自分の生を生きる上で絶対不可欠な行為だった 
レプリカント達は人間よりも遥かに生きる事をシンプルに、そして純粋に捉えています そんな想いすら叶えようとしない創造主など不用である、創造主の与えた運命をただ受け入れるだけで終わらない
僕自身は全く無宗教な人間ですが、それは誰しもが生きる上で、必要な概念のひとつであると僕は思います 
創造主、という存在については様々な解釈が出来ると思います

この映画が公開されてから年月が経ち、デッカードという存在もレプリカントである、というのが定説になりつつあります
デッカード自身はレプリカントだという自覚があるのか、デッカードの白昼夢に現れてくるユニコーンの存在をデッカードがどう捉えているのか そこは明確にはされていません(僕はまだこの映画の続編であるブレードランナー2049は観ていません)
創造主から与えられた人間のような身体で任務を遂行するデッカードと、自身の生を最後まで謳歌しようとするロイ 
2人が対峙する場面は、この映画の中でも山場のひとつです

ロイはなぜデッカードを助けたのか 
慈悲からではないと僕は思います 
ただロイは自分の人生の最後の目撃者が欲しかったのか

僕は単純にデッカードを助ける事により、自身が一瞬だけデッカードの人生の支配者になる事を理解し、自分たちの運命の非情さにささやかな復讐を遂げた、そう解釈してこの映画を観終わりました

自身が長年に渡り好きな映画というのは、観るたびに新たな発見をくれるものなんですね


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