いつもの光景が戻ってきたサマソニ‘22

3年振りのサマーソニック。
初年度以外全て参加しているんだけど、純粋なお客さんとして参加したのは今年が初めて。
ここまで時間が空いてしまったのは、コロナの影響で生じたオリンピックの延期のせいだったりもあって、こんなにも時間が空いてしまったんだね。
昨年行われたSuper Sonicは、海外バンド勢がほぼいないちょっと寂しいフェスになってしまったけど、今回は海外の有名バンドを多数揃えた磐石のサマソニらしいラインナップになっている。

オーディエンスとしては、ここまで洋楽勢の参加するフェスを見ることができなかったわけだけど、今年のサマソニは本当に新しい価値観との出会いというか面白い出来事がたくさんあったので、気づいたことをまとめていきたいと思う。さあ、行こう。

実にサマソニらしいラウド系の音

 まず東京初日はいつもはインドアの自分がほぼマリンステージにいるほどメインステージのラインナップが面白いことになっていた。
ラウド系の音を鳴らすアーティストが多く、久しぶりのロックの爆音に「サマソニが帰ってきたぞ」と実感し、在りし日の姿を取り戻したことに感激すら覚える。

Beabardoobeeは、90年代のギターロックを彷彿とさせる女性アーティストで、Z世代ながらスーパーカー好きな40代に刺さるキュンキュンな音を鳴らす。
続く澤山さんは、よくあるミューズ系かと思いきやグランジやミクスチャーの流れを組むロック文脈のポップスになっていて、これほどロックフェスで魅せるに的確なアーティストはいないだろうなと感じた。彼女のライブを見なかった人は一生後悔するがいい。

ホルモンはひとつ飛ばして、今年の注目アーティストの一人であるマネスキン。
洋楽好きな自分でも情報が全然入ってこなくて知らなかったんだけど、オーディション番組X-Factor出身だったのね。基本的にはグラム流れのハードロックという感じだが、イタリア語で歌うこともあってどこかオペラ風であり、さらに煌びやかなメンバーのビジュアルも相まって、日本でここまで大きく受け入れられる要因十分といった感じ。
本人達も、アニメなどに大きく影響を受けているようでカタコトの日本語で盛り上げたり、さっそくタトゥーを入れたり日本自体を楽しみながらパフォーマンスしているのがすごく印象的だった。

前から感じていたがフェスムーブメントに乗って、サマソニはしっかり若いファン層の心を掴んでいてとにかく客層が若いファンが多い。
それに合わせて、リバイバルの効果を活かして若い世代と40代を繋ぐような秀逸なラインナップが出来ていて面白かった。

弄り問題、海外とのつながり

さらにこのあとKing Gnu、The 1975とどちらも各国で最も影響力のあるバンドが続くわけで、 そういったグッドパフォーマンスを観て久しぶりの重低音を楽しんでいたのだが、SNSを観てるとこんな意見が流れてくる。

現場にいる自分も少なからず同じように感じたんだけど、こういった現象もフェスの文脈があるからこそ。
Rina Sawayamaの主張も、マネスキンのベース“ヴィクトリア”の性別に制限されない表現活動(すごくぼかした)といったまだ日本では実生活の中では馴染みがない言葉が、リアルとしてオーディエンスに届く場所としてサマソニが海外とのつながりになっているのを実感したんだよね。

しかしアーティストは僕らに「Why?」を投げかける者。
大事なのはそれを受けて自分がどう考えるか、もしくは行動するかだと思う。同じ出演者だとしても他の人間が何をしたかで行動するんじゃなくて、いい意味で自分だけにフォーカスすればいいわけだ。

今回の件は、革命家のように主張するアーティストがキラキラと輝いて見えるからこそ、いまだに男子校乗りの笑いを取ろうとする現地男性アーティストの幼稚さが際立ったわけだが、オーディエンスがそれをしっかり感じ取って拒否するというのはシーンの熟成という意味でも重要なことだと思った。

男子刮目すればどうしてもおっ○いに引かれてしまうものだが、そういうことはしてはいけないということを反面教師として学べばいいだけで、失敗したアーティスト自身を必要以上に叩く必要はない。

観客が情景を作ろうとする

 ここ最近は洋楽ライブがないので、もっぱらアイドルのコンサートに行っていたのだが、この現場は観客がオーディエンスというよりサポーターとなり、演者を応援するために自らが協力してチームを奮い立たせる情景を作り出すのを何度も見て来た。
そういったことをフェスのオーディエンスも体験してきているのか、バラード系の曲になるとアーティストから指示されるわけでもなくスマフォのライトをつける。
フェスになると、先述した思いとは異なり自己満足にすぎないように感じるが、自らの意思で観客が情景を作り出そうとする風にライブが変わってきているところに面白みを感じつつ、iPhoneのLEDがカラフルになればアプリで制御して簡単に面白いことができそうだなとは思った。
時代は一人一台サイリウムへ。

声出し問題

これはサマソニというよりここ最近のフェスだけでなくサッカーなどでも課題になっている問題。
実際にアリーナに行くと、声出し云々かんぬんよりモッシュができそうな具合のぎゅうぎゅう感のままで行くんだ…汗という危機感は感じつつも、そういったフェスが開催されることが嬉しくもあるのだが。

しかし開催にあたって、フジロックの状況を知ってる音楽ファンからすると「規制されても声を出す」ということが既にわかっていた。
だからこそモッシュゾーンにはいかないとか叫ぶやつからは離れるなど「自衛する」心は持つものの、アーティスト側からあそこまで煽られると辛いものもある。
(ただ、執拗にモッシュピットを作って欲しがるヤングブラッドのことは大好きになった笑)

現場にいると初日は比較的声出しは少なめだったが、2日目はちょっと馬鹿が増えたかなという体感はあった。
アリーナにいる分にはいいけど、席に座った状態で各段の一番上の人が叫んでいると(マスクあり)、上から下に被害が広がってやばそうだなと考えてしまったぐらいだが、実際にはどうなんだろう?

実際にあるアーティストが声出しを推奨して、炎上気味になっているようだが、万が一クラスターを起こしたとしてもそれが原因だと断定するのは難しいので、直接イベント存続に関わるまでは無い。
しかしこれも結局は他人がどう?ではなく、自分がどう考えるか起点に考えればいいんじゃないかなと思う。
「他のアーティストがやってたから自分達もやっていいだろ」
「アーティストに言われたから声出してもOK」
ではなく、自分の信念でないことはしないという”自分ルール”をしっかり持てたらいいよね。

撮影問題 ルールの難しさ

 ちなみに僕は経歴上、コンサートでお客さんが写真を撮っているのを取り締まっていた側でもあるし、フェスに参加したら思い出を残したいとも思うから両方の気持ちがわかる目線で、単独はともかくフェスでの撮影規制は緩くていいと思う。
正直いうと、もうかなり前から撮影自体はうやむやにするというのが罷り通ってるのかと思ってたから、今回はライブが始まるとスタッフが血眼になって止めに来るというぐらい規制が強めでびっくりした。
それにお客さん側でもルールを守ろうと呼びかけるようなツイートが散見されたんだよね。

正直昔と違って、スマフォでの撮影を規制するのは困難なので、みんなが適切な範囲で撮影し思い出を作りつつ、主催者は見て見ぬふりをするという曖昧なルールのままでいいと思っていて、そこでルールだから禁止論をやり始めると皆が不幸になる。
ライブをフルで撮影してYoutubeに上げてる人は阿呆だと思うが(それこそ何しに来た?)、数十秒撮影してSNSに上げるなんて可愛いもんじゃないの。

アーティストからすると「俺らはオーディエンスの背景じゃない」と思うだろうし、せっかく高いお金を払ってくれたんだから「今この瞬間を楽しんでほしい」と思うのは当然のこと。
ちなみに実際に踊り狂ってると撮影するのを忘れて後でvlogの編集に困るのだが、あまり共感できない人は一旦目を閉じてビジュアルを遮断して、ライブでしか感じられない爆音で体を揺らして見ることをお勧めする。
見るよりも音を感じるのだ。

しかし音楽ライブの面白いところは、その体験性をシェアしたいと思わせる力が強いうえに撮影しやすいという点にある。似たようなエンタメでいう映画や舞台、ミュージカルで同じような体験はできないという点は逆張りの強みといってもいいぐらいだから、主催者は大いに利用するといい。

※その後
Youtubeにアップされている動画を見たがマネスキンのおっ○い吊りサムネで再生数を稼ぐという行為は流石にゲスすぎるので即刻止めた方がいい。
そうゆう輩がいるから、思い出を記録するだけから逸脱してどんどん規制が厳しくなってくるんだな。

しかし帰りの電車の中でチラリとカメラロールが見えてしまったりすると、本当に自撮りだけ大量に撮ってる人もいれば、おっ○いばっかのおっさん(これはダメなやつ)、アーティストを背景にして自分を演出する人もいて、フェスの楽しみも多様化したものだなと。

海外勢にもお客さんが多い

 それ以外にも嬉しかったことがひとつ。ラインナップの問題もあるし久しぶりに海外アーティストが日本に来てShowをやったことも大きいだろうが、なんと海外勢にもしっかりお客さんがいるではないか!!

これまでのサマソニは、かなり注目されたバンドでも海外勢は露骨に観客が減ってしまっていて、洋楽ファンとしては悲しい気持ちになったものだがここ数年でシーンも少し変わったらしい。
(しかし、One OK Rock終わりにマリンに向かうのが大変なぐらいお客さんが帰って行ったがw)

これまでのサマソニは、ライブやってるのに他のスペースにいるお客さんもかなりいたけど、今年はライブに飢えているのか音を聴きにきたオーディエンスが多かったのかもしれない。

それ以外の見たアーティスト

The 1975
レイジのキャンセルのため急遽決まったレディングの前哨戦ということで、モノクロの映像を使ったかなりロックなセットリストになっていた。事前に発表していた新曲はなかったものの、未発表の新曲をプレイするというサプライズもあり、10月発売に向け各所でちょっとずつ試していく算段だろう。個人的には前回のソウルっぽいポップさ溢れる方がバンドの方向性としては良かったなと思いつつも、ヘッドライナーだけは野外でしかも照明が輝く夜の空で大好きな音楽を聴ける最高の時間なわけだ。これが楽しくないわけない。

Easy Life
2020年頃から毎年発表しているBest Ofでずっと推していたバンドがついに来日。基本チルっぽいサウンドだがライブになるとウォールオブデスをやらせようとしたり思いの他ハイボルテージで盛り上がっていく。
例年、こういう注目新人アーティストの客は元来少ないが、今年はたくさんの人が見てくれて嬉しい。

Megan thee Stallion
HIP-HOPに疎い身としては今年、コーチェラや多くのロックフェスに出演しているのを見て気になっていた存在。
セーラームーンのような衣装ながら、スカートが前半分しかなくてエプロンみたいになっている面白衣装で登場、それだけで観客の心を一気に掴むからすごいよね。
彼女は随所にトゥオークダンス(お尻を振るやつ)を入れてくるんだけど、それだけで尻だけは絶対に魅せますという強い意志を感じる。
アメリカのヒエラルキーの頂点たちのパーティーみたいな感じで、ラテン系っぽいイケイケのDJが、ホーンを「ポンポンポーン」しながら進めていくのが特徴的。それにしてもHIP-HOPの曲の終わりってポンポンでぶった斬る感じで締めるのなんでだろうね?

Kula Shaler
ライブを見るのは2回目だったかな。懐かしすぎて1,000年振りぐらいにUKっぽい気だるいロックを聴いた気がする。一番好きな2ndアルバムの曲は相変わらずあんまりやらないが、インド曲「Tattova」そして「Govinda」で終わるという最高のフィナーレを魅せてくれた。

Post Malone
オースティン・リチャード・ポストのソロプロジェクト。広いステージに1人で佇み、HIP-HOPというジャンルを超えた声量でぐいぐい引き込んでくる。
バンドセットでもなく、演出も控えめとヘッドライナーとしては若干物足りないものの、ヘヴィロックのボーカルがラップやってるようなもんなので、ちょっと退屈ながら弾き語りをやったりしっかり歌を聴かせることに自信があるんだろうな。

Primal Scream
Post Maloneをフルで見てしまったのは、まさかのプライマルのセット時間が120分もあったからなんだけど、なぜかタイミングをミスって花火を見逃しながら急いでメッセに戻ってみるとスクリーマデリカ部分がほぼ終わるところ「Come Together」見たかった・・。
しかし、小休憩を挟んでからのヒットソング連発はかなりやばかった。スクリーマデリカパートで気怠い感じだったのが一気に吹っ飛び、どうしてもジャンプしたくなってしまうような熱狂に持っていく。
僕は『XTRMNTR』からプライマル入門したので、「Swastika Eyes」を聞けたのは感慨深かったし、「Loaded」なんてループしすぎて一生続くかと思った。
2日間でいろんなアーティストを見たけど、Primal Screamが一番盛り上がるとは自分でも思わなかったね笑。全てが終わった解放感もあり、最高のライブでした。


もうすぐにでも開催してくれ

 このように、サマソニはコロナとオリンピックのWパンチを経て、3年振りに開催されたわけだが、
いつもはこんなに面白い出来事なんか起きずに、各々ライブを見てそれだけで満足していたものだけど、若いアーティストから新しい考え方やオーディエンスの対応を見て、大きな刺激をもらえた気がする。

洋楽メインのフェスながら、若いファンがたくさん増えていて自分はもうそろそろ場違いなのかもなと悲しいことも感じつつ、今回の開催では本当に普段の光景が戻って来て嬉しいと感じたファンが多かったんじゃないかな。
ちょっと仕事で参ってる時、ストレス発散したい時、こういったイベントがあることが、あってくれることが如何に大切なのか、身をもって実感した。

自分にとっては、いつも初心に帰れる大切な場所なのでそれを守ってくれている人たちに会えるのが、いつも楽しみですね。
来年は、3年間溜め込んでいたアーティストたちがこぞって日本に来てくれることを期待しつつ、フジの方もラインナップ頼むぜ!ともうすぐにでも開催してほしいぐらいの気持ちになりました。

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