王者の再起〜F1 British GP 2024〜
あと13周、どうかこのままハミルトンが優勝しますように…
私自身がドライバーであるかのように、「焦らず着実に、集中して、、」と心の中で唱えながら、ただただ彼を信じて、その瞬間を待った。
チェッカーフラッグが振られる中、トップでコントロールラインを通過するメルセデスのマシンを見て、じわじわと胸に感動が染み渡るのを感じた。
あぁ、遂に、やっと、ハミルトンが再び優勝した。しかも母国GPで!!!
ずっと心を痛めていた。2021年の劇的な最終レース以降、長い間沈黙していたハミルトン。新たな気持ちで臨んだであろう2022年、マシンの不調により見たこともないような順位で終わることばかり。それでもチームと自身を励ましながら前を向く姿に安堵していたが、徐々に不満を露わにする場面が目立つ。彼の人間臭さに共感しつつ、常に前向きに周囲を鼓舞してきた大スターが、毎度毎度不平を述べる姿を見ると胸が痛かった。
加えて、徐々に頭角を表すラッセルの存在。当時新入りだったチームメイトにじわじわと迫られる焦りはどれほどのものだっただろう。
7度の世界王者が2022年、2023年の2シーズンに渡り1度も優勝できない。レジェンドの衰退期を目の当たりにしているのかと思うと悲しくて、彼から目を逸らしたくなる2年間だった。
メルセデスの後退にも慣れてしまった2024年、夏の気配が近づく頃から、メルセデスの調子が段々と上がってきた。
そして迎えたSilverstone。実に945日ぶりの優勝とのこと。
目を逸らしたくなる、と言っておきながら、ラスト13周は彼から目を離せなかった。応援しながら、一緒にマシンに乗っているような、静かな高揚を感じた。
結局私も、ずっと期待していたのだ。ポジティブな彼の無線が好きだった。チームや周囲への感謝を忘れない彼の姿勢を尊敬していた。世界の災害や戦争や差別に心を痛め、発信する彼の勇気に憧れていた。
そんなレジェンドが再び輝く姿を世界が待ち望み、遂にイギリスで、その瞬間が訪れたのだ。
なんとも言えない清々しい気持ちだった。栄光を手にし、長い低迷を経験し、辛さを吐露しながらも努力を続けたハミルトン。そんな彼が長い長い苦労の末に再起したこと、世界中のファンに、それぞれの人生を生き抜く勇気を与えた歴史的な出来事であるといえるだろう。
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