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PMSの原因と対策、新しい見方を探してみよう!

こんにちは!fem. standです。
本日は、PMS対策でなかなか効果が見られないと悩まれている方に向けて、統合的な枠組みからPMSの要因・対策を検討していきます。

こんな方におすすめ
・色々な観点からPMSの対策を考えたい
・PMS対策を長年続けているが効果が見られない
・新しいPMS対策を試してみたいが、何がいいのか分からない

本記事は生理前の心の不調の要因・対策への新しい見方を提供することを目的としています。
論文や書籍を参考に作成していますが、投稿者は医療資格等の専門資格を持つ者ではないことをご了承ください。


心身の健康を統合的に見る「生物心理社会モデル」

本記事では、「生物心理社会モデル」という枠組みからPMSの要因・対策を検討していきます。

生物心理社会モデル
1970年代に精神科医のジョージ・エンゲルが提唱した、精神疾患を多要因疾患とする枠組み。
個人の発達や身体的・精神的健康に影響する様々な要因を、生物・心理・社会の3つの側面からまとめ、効果的な介入を行うための枠組み
3つの統合的観点から人間をとらえ、それぞれの側面とのつながりを考慮に入れながら援助を実践するということが重要。
(下山晴彦「よくわかる臨床心理学」ミネルヴァ書房、2009 より)

◆生物心理社会モデルの図

生物心理社会ヘッダー

PMS・PMDDにおいては、心理学の領域を中心にこのモデルに基づいて研究が進められています(心身医学や女性医学の領域でも、医学的要因に限らず多様な要因が健康に影響を与えていると考える専門家が存在します)。

本記事では、このモデルをもとに「心身の健康には多様な要因が影響を与えている」ということを前提に据え、上記3つの観点から見たPMSの要因と対策を検討していきます。

※「PMS・PMDDに関する要因」として掲載しているものについて、詳しい関連やメカニズムは研究中です。今後の研究結果により、関連が否定されたり、掲載しているもの以外の要因が指摘される可能性があります。
また、掲載しているアプローチについては効果を保証するものではありません。


生物学的観点から見るPMS

生物学的観点から分析すると、「一般的に心身の健康に影響があるとされる要因」と「PMSの要因」は以下の通りです。

◆生物学的観点から見た要因

生物学的観点での要因

PMSには女性ホルモンが何らかの影響を与えているとされていますが、詳細は分かっていません。その他、セロトニンシステム等神経伝達や遺伝との関係も研究されています。

これらの要因から効果の期待できる生物学的アプローチは以下が考えられます。

①女性ホルモンへのアプローチ
・薬物療法…低用量・超低用量ピル、漢方薬など
・外科的療法…両卵巣摘出など 

②神経伝達物質へのアプローチ

 薬物療法…SSRI・SNRI等の抗うつ薬など

①はおもに産婦人科、②は精神科・心療内科で受けられる治療法です。

①の低用量ピルは女性ホルモンが配合された排卵を抑制する薬で、乳房痛やむくみなどのPMSの身体症状の改善や、生理痛の軽減効果も期待できます。日本での普及率はヨーロッパと比べると圧倒的な低さですが、最近日本のメディアでも取り上げられることが増え、認知度が向上してきていると感じます。

なお、PMDDへの有効性が確認されているのは、配合されている黄体ホルモン(プロゲステロン)がドロスピレノンである超低用量ピル(ヤーズ・ヤーズフレックス)のみであることにご注意ください。
※上記以外の一部の低用量ピルでもPMDDが改善したと報告されているものがあります。
※ドロスピレノン配合薬はアメリカでPMDD治療薬として認可されています。
※残念ながら日本ではPMDDに対する低用量ピルの保険適用が認められていません。

②のアプローチが適用されるのは、PMSの中でも特に精神症状が重症なPMDD(月経前不快気分障害)に該当する方が多いでしょう。
PMDDは精神医学の世界ではうつ病と同じく「大うつ病」の一種に分類されており(DSM-5:精神障害の診断および統計マニュアルによる)、精神科での治療も選択肢としてあげられます。その場合、一般的にSSRIが第一選択肢として適用されます。

抗うつ薬については副作用の不安がある方も多いかもしれませんが、PMDDの場合はうつ病とは違い、黄体期のみの服用や低用量でも効果が期待できるとの報告がされています。
気になる方は一度精神科で相談してみると良いかもしれません。

ちなみに、①で外科的療法として両卵巣摘出をあげましたが、こちらは摘出後の身体への影響を考慮してほとんど行われないため、基本的には薬物療法が中心となります。

産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編(2020)
※低用量ピル…P164-169、PMS・PMDD…P174-176、


心理学的観点から見るPMS

心理学的観点から分析すると、「一般的に心身の健康に影響があるとされる要因」と「PMSの要因」は以下の通りです。

◆心理学的観点から見た要因

心理学的観点からの要因

PMSと心理学的要因についても様々な研究が進められています。
特にストレスは脳内の神経伝達物質の働きにも影響を与えることから、PMSとの関係が指摘されています。

PMS改善効果が期待できると考えられる心理学的アプローチは以下のとおりです。

①心理教育
(自身の病気の概要・症状、治療方法を知ることで理解を深め、病気の対応を学ぶこと)

②心理療法
認知行動療法、マインドフルネス、注意訓練など

まず、①心理教育は、うつ病などの精神疾患患者に対して取られる一般的な心理学的アプローチの一つです。
PMSに関しても、PMSや自身の症状の特徴、その周期性について理解することは、限定的ですが症状の改善につながる可能性が指摘されており、より効果的な心理教育のあり方が研究されています。
例えば、PMSや生理の仕組みを理解すること、自身のPMSの特徴を把握するための記録方法を学ぶことは心理教育の一部と考えられます。

②心理療法は、認知行動療法を中心にPMSへの効果が研究されています。
認知行動療法とは、簡単に言うと自分の認知(自動思考)と行動を工夫することでストレス体験を改善していこうとする考え方であり、うつ病やパニック障害、強迫性障害などの精神疾患への高い効果が確認されている治療法です。特にうつ病には薬物療法とほぼ同等の効果が認められており、薬物療法と比べて再発率が低いことも分かっています。
※効果は疾患の重症度に依存します。

「生物学的観点…」でも述べたとおり、PMDDはうつ病と同じ大うつ病に分類されていること、またPMDD女性における共通の人格特性・性格が見つかっていることなどから、認知行動療法を用いたPMS・PMDDの治療が研究されています。

例えば②心理療法であげたマインドフルネスは、「『今この瞬間』に評価や判断を加えることなく能動的に注意を向ける心理状態」のことで、トレーニングすることで「頭の中の思考から距離を置く」スキルを高められるとされています。
このスキルは、生理前になるとぐるぐるモヤモヤと考え続け思考にとらわれてしまう人の苦しみを軽減する効果があると考えられます。
また、一部の研究で指摘されている、マインドフルネス特性の低さとPMS精神症状の重症度の負の関連も根拠として考えることができます。

注意訓練は、「注意のコントロールや距離を置いた客観性を向上させること」を目指す訓練法で、「自己注目(自分の感情や痛み、体調などへの注目)」を低減することから、抑うつ感を低下させる効果があります。
さらに、一部の研究では、注意訓練は生理痛を軽減する可能性があることが指摘されています。生理痛自体を改善することはできませんが、生理痛に対する心理状態を改善するというメカニズムです。

心理療法に対して「一人ではできない」「難しい」といったイメージをお持ちかもしれませんが、ここであげた手法はどれもひとりで練習できるものです。特に認知行動療法は、当事者のやる気や努力が治療効果に大きく影響を与えるとされています。
一般向け書籍、スマホアプリ、ウェブアプリ、Youtube動画など、練習の材料となるものがたくさんあるので、気になった方はぜひ調べてみてください。

マインドフルネス瞑想の概要とおすすめアプリ(Instagram)


社会学的観点から見るPMS


心理学的観点から分析すると、「一般的に心身の健康に影響があるとされる要因」と「PMSの要因」は以下の通りです。

◆社会学的観点から見た要因

社会学的観点の要因

社会学的要因は、文化や政治、組織など、自分で介入して改善するのがなかなか難しいものが中心です。

そこで本項では、社会学的要因におけるソーシャルサポートをいかに拡充していくかという観点から社会学的アプローチを検討していきます。

「ソーシャルサポート」
社会的関係の中でやり取りされる支援。健康行動の維持やストレッサーの影響を緩和する働きがある。
 ・情緒的サポート…共感や愛情の提供
 ・道具的サポート…物・サービスの提供
 ・情報的サポート…問題解決のための助言・情報の提供
 ・評価的サポート…肯定的な評価の提供
厚生労働省 e-ヘルスネット「ソーシャルサポート」より)

つまり、ソーシャルサポートとは周りの人・団体・専門組織等によるサポートのことで、サポートを受けることでストレッサー(ストレス状況)を前向きに捉えられたり、うまく対処ができるようになると考えられています。

ちなみに、「ソーシャル」には、国や自治体など大きなくくりはもちろん、地域や学校、職場、さらには家庭といった小さなくくりも含みます。

ソーシャルサポートがPMS改善に必要な理由は、PMS・PMDDに悩む人の孤立しやすさにあります。
PMSや生理は話題にしづらいことから正しい知識の獲得が難しく、自分の苦しみを「我慢すべきこと」と考えて適切な対処ができなかったり、周囲の人の理解を得られなかったり、同じ悩みを持つ人とつながるのが難しいといった現状が、PMSに悩む人の孤立を深めているのではないでしょうか。
特にPMDDは悩む人が少ないこともあり、このような現状が顕著だと考えられます。


以上を踏まえて、ソーシャルサポートに焦点をあてた社会学的アプローチは以下があげられます。

①専門機関のサポートを得る
・家族サポートを受ける…家族問題の解決
・公的サポートを受ける(社会復帰訓練、職業紹介など)…生活の安定

②日常的なサポートを得る
・身近な人の理解を得る
・同じ悩みを持つ知り合いを作る
・支援・応援してくれる人を見つける

①では、専門機関のサポートで自分の生活環境を改善することを目的とし、家族関係や経済状況などを改善することを目指します。
例えば、女性に多い派遣切りやPMDDを原因とする休職・退職などは否定的ライフイベントとしてあげられますが、こういったことによって収入源を失うことは心身の健康を損なうと考えられているので、適切なサポートを受けることが重要です。

②は①と異なり、サポート元が専門機関である必要はありません。むしろ自発的に接触しやすい存在であることが重要です。
まずは、家族やパートナー、同僚、友人などの一緒に過ごす時間が長い身近な存在にPMSについて理解してもらうこと。生理前は精神的に苦しいだけでなく生産性・能率が下がるので、自身の症状について理解してもらうと助かるシーンが増えます。また、イライラ・情緒不安定が原因で諍いやケンカが増える人は、生理前の工夫や特別ルールを作っておくと良いでしょう。

「生理前ルール」を作ろう(Instagram)
PMSをパートナーと乗り越える(Instagram)

次に、PMSに悩む仲間とつながることも役に立ちます。共通の悩みなら相談もしやすく、相手の経験から学ぶこともできます。実際、どんな分野でも同じ悩みを持つ人のリアルな経験に助けられるとはよく言われることです。

同じ悩みを持つ人とつながるには、最近ではSNSがベストです。検索してみるとPMSやPMDDに悩むアカウントがたくさん見つかります。情報を自分で取捨選択する必要はありますが、つながる相手を自由に選べるのがSNSの良いところです。
一気に輪を広げたいのであれば、コミュニティに入るのがおすすめです。参加者が自由に情報を共有できるFacebookのグループやLINEのオープンチャットでも、PMSをテーマとしたものを見かけるようになりました。こちらはチャットやコメントでの交流が基本になりますが、なかには交流会や座談会を実施しているコミュニティもあるようなので、文字のやり取り以上の交流を持ちたい人には合うかもしれません。

最後は、頑張る自分を応援してくれる存在を見つけることです。②の最初の二つはPMSに着目したサポートの増やし方でしたが、こちらは前向きなことに着目します。PMSは本当につらく大変なことですが、ここではちょっと脇に置いて、あなたの将来の夢や目標に着目します。
例えば、資格取得、転職、副業、キャリアアップ、ボランティア、特技、美容、恋愛、結婚、妊娠、育児…などなど、大きくても小さくても、このために毎日頑張りたいと思える目標はありませんか?
PMSでつらい日々も、同じ目標に向けて頑張る仲間とお互い応援しあうことで、少しでもポジティブな方に目を向けて生活できるようになります
仲間の探し方は、上段で触れたPMS仲間の探し方を参考にしてくださいね。


まとめ

本記事は、現在のPMS対策に行き詰まりを感じている人に向けて、PMSの要因・対策に関する新しい見方を提供することを目的として作成しました。
この記事が読者の皆さんの新しい発見、そして症状の改善につながれば嬉しく思います。

また、fem. standはPMS対処アプリの開発プロジェクトを展開しております。ご興味を持っていただけた方は、ぜひホームページをご覧下さい!

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