優しい時間を感じたい時に読む本

小川洋子さんの丁寧で優しい文章が好きです。
この本は何度か読み返しているうちに付箋だらけになりました。
ちょっと博士の背広のメモとは違うのだけれど、詰まるところ目的は同じかもしれません。

博士の愛した数式

将来を嘱望されたいた数学博士が事故に遭い、記憶が８０分しか持たない障がいを得てしまう。そこに派遣された家政婦を中心に、本来ならば出会うはずのない四人が、大切に大切に過ごしていく日常を宝物のように描いた大人のファンタジー。
読むたびに胸が温かくなり、誰となく優しく接しようと思いを新たにする作品です。
博士も家政婦もその息子も、博士の義姉も、それぞれに優しさに溢れている。
（ネタバレになるべく注意して感想を書くのは難しい）

読書は現実ではないところに連れてってくれるからいい。
普段気がつかない心の闇や、思わぬ優しさ。自分もまだこんなところで心が動くか…と思わせてくれる、誰にもわからない二面生。誰かには意味のないメタファー。だから同じものを読んでも感じるところが百人百葉であるのもいい。

子供の頃から数学は好きでした。私の子供らがつまずいた時には一緒に考えていけるくらいには。
でも、大学受験生の下の子(小川洋子さんの高校の後輩)が本当に困って、積分の受験問題のなんかを持ってきた日にゃ、力いっぱい笑うしかなかった。そんな現在進行形。