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台湾空想問答①台湾は国か?

一日の仕事を終え、夕暮れの小道をとぼとぼと歩いている時なんかにふと、こんな質問をされるかもしれません。
「あのぉ、台湾って国なんですか?」

まず、ニュースなどでよく使われる「台湾」というのは、一般的には「台湾島と周辺島嶼を実効支配している国家」の通称であり、その正式名称は「中華民国」です。
ご存知のように現在、中国大陸は「中華人民共和国」が実効支配していますが、それ以前は「中華民国」こそが中国全土の代表政府でした。

今回、この辺の経緯について詳細には書きませんが、両者の間には以下のような流れがあり、現在に至ります。
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■近現代史における中華民国の変遷。
①中国大陸では、1911年10月ごろから清朝打倒を掲げた人々が反乱を起こし清朝の勢力を駆逐。彼らによって1912年1月に「中華民国」が成立する。
②中華民国国内において結党された「中国国民党」は後に中華民国の政権政党となる。
③その数年後、ソ連の指導を受けて「中国共産党」も結党。両党は日中戦争を挟んでいわゆる「国共内戦」を展開、最終的に国民党が敗北する。
④1949年、大陸の拠点を失った国民党は最後の領土「台湾島」へ撤退。それを受けて同年、共産党が「中華人民共和国」を建国する。
⑤共産党は引き続き台湾への攻撃を開始するが、折よく朝鮮戦争が起こり、その影響で本格的な侵攻は立ち消えとなった。
⑥かくして中華民国が実効支配する領土は「台湾及び周辺島嶼」のみとなったが、現在まで中華民国は中華人民共和国に降伏しておらず、大部分を奪われたとはいえ、いまだに領土も有しているため、国際法上は国家としては存続。国連常任理事国の地位もしばらく維持し続けていた。
⑦しかしながら1971年の国連アルバニア決議(中華人民共和国の地位を確定する決議)の結果、中華民国は国際連合における常任理事国としての地位を実質的に失い、国連を去ることとなった。またこれ以降多くの国々が中華民国と断交し、中華人民共和国との国交を結んだため、国際社会においてその地位を大きく毀損することとなった。
⑧アメリカも1979年に中華民国と断交し、中華人民共和国と国交を結んだが、アメリカは東アジアにおいて共産主義国家が伸長することに警戒感を抱いており、安全保障などの面で中華民国を引き続きサポートしていくこととなった。
⑨多くの国々は中華民国と断交したものの、事の経緯から国際社会には中華民国に同情的な雰囲気もあり、ビジネス、観光業においては引き続き往来が続いている。
⑩中華民国は、1949年の台湾撤退後も建前上は「清朝の正当な継承国家である」との立場を変えておらず、したがって中国大陸の領土も放棄していない。しかしながら、両国が主張する領土範囲が重複しており「中華人民共和国」「中華民国」と字面も誤解しやすいことから、現在一般的に「中華民国」は「台湾」と呼称されるか、「中華民国台湾」と両称併記される。

以上、「細かい経緯は書かない」と言いつつも、並べてみると結構長くなってしまった基本背景でした。
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では「台湾は国なのか?」という質問にお答えしましょう。

まず、例えばある人が「クラスの成員であるかどうか」と、「あなたがその人のお友達になりたいかどうか」が全く違うことであるように、
国際社会において「ある地域が国家であるかどうか」ということと、「他国(例えば日本国)がその地域とお付き合いしたいかどうか」というのは次元が違う話です。

■国家の資格要件(国家であると認められる条件)

ある地域が国家の資格要件を満たしているかどうかについては、1933年に米国と中南米諸国の間で締結された『モンテビデオ条約』の内容が、国際法における「国家の何たるや」の判断基準となっています。
この条件を満たしていない場合、そもそも国家対国家の対等関係が成立しません。その条件とは以下の通りです。

①その土地に永続的に暮らす住民がいること。
②固有の領土があること。
③そこの住民を代表し、地域を実効支配する政府があること。
④その政府に自主的な外交能力があること。

上記に中華民国台湾の現状を照らし合わせて考えてみましょう。

①中華民国には何世代にもわたって定住している人々がいます。…〇

②中華民国は「台湾島とその周辺島嶼」を実行支配しています。…〇
「中国大陸は中華人民共和国に奪われているじゃないか!」という人がいるかもしれませんが、中華民国の立場では現在彼の国が実効支配している地域は「係争地」であり、放棄された領土ではありません。
また、例えば日本に北方領土や竹島という他国によって不当占拠されている地域があるにもかかわらず、大きく「日本」としては国家認定されているように、領土の一部が係争地であっても、国家としての地位は揺るぎません。

③中華民国では民主主義選挙によって国家元首(総統・副総統)が選ばれ、彼らの指名により行政機関のリーダーが選出されます。これら国家元首及び行政機関によって実効支配地域では自立した統治が行われています。…〇

④2021年12月末現在、中華民国は世界14か国との外交関係を有しています。…〇

【結論】
中華民国台湾は国家の資格条件を全て満たしています!

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それではなぜ、日本においてはいつまでも「台湾は国ですか?」などという疑問がなくならないのでしょうか。

■日本において「台湾」の国際地位に対する理解が深まらない原因

☆原因①日本の立場
日本は1972年の「日中国交正常化」以降、中国大陸の代表国家を「中華人民共和国」としており、台湾島及び周辺諸島を実効支配する「中華民国」を国家承認していません。
日本政府も正式アナウンスでは中華民国台湾を「地域」と呼称し、また歴史学習においても同国の説明に十分な時間を割いていないことから、一般にあいまいな認識が広がったままになってしまっているようです。

☆原因②「台湾」という表記の曖昧さ。
すでに述べたように「台湾」とはあくまで中華民国の実効支配地域を加味した上での「通称」であって、正式名称ではありません。
しかしながら「台湾」という呼称ばかりが耳慣れ、また上記のように同国についての学習機会が乏しいことから「中華民国」と「台湾」の同一性、および名称が意味する相違性を十分に理解できず、混乱を招いています。甚だしくは中華民国について、「すでに中華人民共和国に呑み込まれている」と誤解している人もいるようです。

台湾フリークの僕としては、台湾はかつて日本が領有していた土地柄でもあり、日本の安全保障、ビジネスにおいても重要な地位を占めている国なのですから、国交のあるなしにかかわらず学校教育においてもう少ししっかりと「台湾の現状」について教えてもらいたいところです。
できれば中国近現代史と絡めて、中華民国の歴史的変遷について伝え「中華民国が断絶なく現在まで存在し続けている国であること」をしっかりと認識させてもらいたいなぁと思っています…まあ教育には優先順位がありますから、高望みはできませんが。

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■一人の人間として台湾をいかに定義するか

さて、ここまで述べてきたように日本政府は現状、
「中華民国と国交を結んでいない=国家承認していない=外交関係がない」わけですが、だからといって、我々日本国民がその決定に準ずる必要があるのでしょうか。

僕はそんなことはないと思っています。
日本は自由な思想信条が許された自由主義国家です。
法律に抵触するようなことについてはどうしようもありませんが、それ以外のことについては、たとえ国家の定義がどうあれ、一個人が好きなように判断し、対応すればいいのです。
たとえ人であろうが国家であろうが、仲良くしたい、認め合いたいと願う相手とは、対等な立場で付き合えばいいのです。

そもそも日本政府自身、正式な国交がないと言いながら、現在ではある程度のレベルの政府間交流を行っています。ビジネスの往来は言うまでもありません。
相手がいる事ですから、一度決めてしまった関係を簡単には覆せないでしょうが…昨今の国際情勢を見れば、中華民国台湾が現在の日本にとって非常に重要な戦略パートナーになりつあるという点は明らかですね。
個人レベルでも、中華民国台湾の立場をよく理解したうえで、よきお付き合いが広がっていくことを願っています。

なぁま、しぁつ~ぢぇん~


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