ロールプレイから理解する平和構築の真髄〜ジョンピクテ・コンペティション体験記〜

2月末ごろ、日本では大きなイベントが続々とキャンセルされ始めている中でしたが、私はインドネシアのデンパサールで開催された、Jean Pictet Competitionというイベントに参加してきました。


これは著名な国際人道法学者であるJean Pictetの名前を冠した国際人道法ロールプレイ大会で、今日はその話からしようと思います。


大会は、仮設な「世界」でストーリーが展開します。私が参加した34回では、「Baramine地方」における五つの国の間で様々な緊張事態・紛争が起こり、その中のアクターを演じて行きます。時には、国際赤十字の法務チーフとして、各国赤十字代表者と共に現状報告のNGO会見をしたり、 または国家の国連代表として、安保理常任理事国と戦略会議を行ったり、時には武装団体(立場によってはテロリストグループ)に会いに行ったり…そんな世界に突入します。


審査員も共に役を演じます。現実世界で国際法学者や国際法専門家として活躍している彼らは、突然「大統領」になって私たち「部下」に諮問したりします。または、「記者」になって、NGOの私たちの身分証の写真を強引に撮ろうとします。私たちは同じように、自分に与えられた役になりきって、立場に合う言動と正確な法律の知識が期待されます。


「現場」を想像して、その場で演じるのです。


また、一瞬、「身の危険」を感じることもあります。「国際NGO代表」としての武装団体の基地に訪問する際、「銃」を向けられながら、チェックポイントでカバンを奪われたり、壁に面して手を上げて、膝を下げたりさせられました。そんな中でも、冷静に振舞わなければいけません。


こんな体験の中、実に多くの紛争に関わる国際問題に触れて行きます。模擬裁判大会だと、限られた事実と条文を扱っていきますが、ロールプレイだと何十もの条約を把握しながら、幅広い課題に注目します。難民、違法武器、サイバーアタック、完全自動ターゲット、軍事用ロボット、子供兵士、ジェノサイド、性暴力、環境破壊、パンデミック、民間軍事会社の責任…紛争が持たす悲惨や悲劇の現実を痛感する七日間であり、「法律の専門家」として振る舞い問題解決に挑む七日間でした。


ほとんどの参加者がロースクール生や修士課程の学生である中、教養学部生で構成される私たちのチームは準決勝には進出しましたが、決勝までには進めませんでした。決勝進出校はUniversity of Essex, Geneva Academy, New York University, National University of Singapore4校で、優勝校は準決で当たった相手のNational University of Singaporeでした。 


国際法模擬裁判の大会はその前にいくつか出ていましたが、Jean Pictet Competitionは初めて、紛争の全体像を突き詰めるような大会でした。


紛争の原因は様々な国内外緊張関係の蓄積、その影響も難民や武器輸送、戦争資金の流れによって国際化複雑化して行きます。その中の個人と国家の責任を問い詰め、国際組織の役割、その仕組みの長短を判断していかないと持続的な問題解決につながりません。


全体像が見えてないままに判断を下すのはとても危険。だからこそ国際情勢をよりcomprehensiveに理解したい、視野をもっと広げたい、「紛争地域」に身を浸かった七日間で、こんな気持ちをこれまでより強く持つようになりました。


IISIAとはなんだかんだ縁があると感じています。インターン面接の際に、卒論執筆のために休んでいるインターン生がいると聞いたのですが、その方は、私が一年生の時にとってもお世話になった大学の先輩で、国内外の国際法の模擬裁判大会を二人チームで参加していた先輩だったのです。


IISIAでインターンを始めてから、 国際ニュースにより慎重になっている自分がいます。 世界は思っているより複雑で、正しい情報はいつもどこかに隠れていて、簡単には見つかりません。そんな中、「情報リテラシー」を駆使して、何が「本質」なのか常に見極めないと、解決策も見つかりません。
私もまだまだですが、これからも、こんなに溢れ出ている国際問題の前で、無力感を感じつつも、役に立つ人間になりたいと思いつつ、切磋琢磨して行きたいと思いました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?