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話題の超・悶絶回の裏側!「この回は、女性の性欲を全肯定するぞ!と考えて描きました」/男女の”新しい関係”を描く━━ヤマシタトモコに『違国日記』のことを聞いてみよう④

2019年5月12日(日) Asagaya/Loft A(東京・杉並区)にて行われたヤマシタトモコ先生トークイベント完全版レポート、あっという間の後半戦突入です! 第4弾では、『違国日記』のメンズ2人・笠町&塔野をめぐってヤマシタ先生の辛口が炸裂…!? さらに「感情を言語化するということ」について、たっぷり考えを語っていただきました。

Q:「笠町くんは朝、ぱきっと起きられるタイプですか?」ヤマシタ 起きるんじゃないですか。彼、寝起きよさそう。ちょっと血圧高そうですしね(笑)。
――ちゃんと運動してますしね。意識高い系とか揶揄されてますけど。
ヤマシタ 言われて嫌がってますけど、意識高いですから、3つくらいアラームをスヌーズ付きで設定しておいて、最初のアラームが鳴る前に起きるみたいな(笑)。ちゃんとした人なんですよ。

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Q:「孤独を愛する槙生ちゃんがなぜ笠町くんと付き合おうと思ったのか、人と一緒にいることを選んだのか知りたいです」
ヤマシタ …槙生が実在の人みたいな質問で面白いですね。まあ、孤独を愛していてもずっと一人でいるとは限らないんじゃないですか。それと、ムラムラしたのかもしれないです(笑)。
――おそらく槙生に聞いてもわからなそうですよね。
ヤマシタ たぶん。この二人がなんで付き合い始めたとか、どういうきっかけだったのかとか考えていないのでまったくわからない。描かなきゃならなくなったら考えます。
――二人の関係に関しては、回想シーンで出てくる事柄しか決まっていない?
ヤマシタ 回想シーンもわりとあとから辻褄を合わせていますよ。笠町くんが初登場した回の、回想で思い出されるケンカのシーンとかも、あとからこういうシーンにしようかなって意味を持たせていったんです。
――泥縄式?
ヤマシタ そんな感じです。自転車操業的な(笑)。

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Q:「先生の好きなタイプは笠町くんですか、塔野さんですか?」
ヤマシタ どっちも好きじゃねえわ。
会場 (爆笑)
――どちらかを選ばなきゃいけないとしたら。
ヤマシタ 選ばないと死ぬぞってなったら…死ぬ(笑)。
――どっちもタイプではないわけですね(笑)。
ヤマシタ ただ、笠町くんはカッコいいけど美男子ではないという体で描いていて、でも読んでいるうちにカッコよく思えてくるように描こうとはしています。塔野はまだ出番が少なくてよくわかっていないと思いますが、どちらもみなさんに好きになってもらえるように描こうという心づもりではあります。
――私、笠町くんが初登場のときからエロいと思って好きでした。首の太い人が好きなんですよ。
ヤマシタ 私もわりとゴリラタイプは好きですよ。
――ゴリラとは言っていない…(笑)。
ヤマシタ (笑)。笠町くんも直接的ではないんですがモデルがいて、俳優の平岳大さんなんですよ。何度かお見かけしたことがあるんですが、美しい人類だな…とめちゃくちゃ思ったんです。シュッと背が高くて、骨が太そうで、足が長くて、とにかくがっしりした印象で、ああいう男を描こうと思って。なので、笠町くんは美男子でなくても、美しい人類として描いています。
――4巻の最後に収録されている20話を読んで、「笠町…!」と悶絶した読者は多いかと思います。私は悶絶しました。
ヤマシタ 担当も、ネームを送ったらめちゃくちゃテンションの高いただのオタクのような感想電話をかけてきましたよ。「ヤマシタさーん!! ありがとうございます!!」って叫ばれて、爆笑してしまいました(笑)。
――特にあの20話の終盤あたりは、「読んだ人をざわざわさせてやんよ」みたいな気持ちで描いているところもあるのですか?
ヤマシタ この回は、女性の性欲を全肯定するぞ!と考えて描きました。伝わりにくいかもしれないけど、めちゃくちゃエロい描写にしたくて。描いたあとで思い出したんですけど、30代の大人同士のキスだけで読者がめちゃくちゃドキドキするようなシーンを描きたいと打ち合わせで言ったことがあったんですよね。好評をいただけているようでよかったです。
――たとえ塔野派であったとしても大満足だと思いますよ。
ヤマシタ というか、いるの? 塔野派。
――いるでしょう。聞いてみますか。我こそは塔野派だという方、手を挙げていただけますか?
(会場でぱらぱらと手が挙がる)
ヤマシタ やはり少ない(笑)。
――ちなみに笠町派という方は。
(先ほどよりは多く手が挙がる)
ヤマシタ まあ、塔野はまだ活躍していないですからね。
――その割には挙がったほうなんじゃないですかね。塔野にも今後ざわりとするシーンがあるかもしれなかったり?
ヤマシタ いやー、どうかな~。まだ、考えていないです!(笑)

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Q:「感情を言語化する、ということについて、意識的に行っている人が少ないと私は思うのですが、どう思いますか?」
ヤマシタ おや、批判的(笑)。実は私も、オタクが推しに対して「尊い~」とか「語彙~」って言っているのを目にすると、語彙を尽くせよと思うほうなんですよ。自分が血道を上げているものに対して、語彙を尽くして褒め称えなくてどうすると。なので、このことに関しては私もわりと批判的な眼差しでいるほうかもしれないです。
――自分の感情を上手く言い表す言葉が見つけられないときに、『語彙~』のような便利なニュアンスの言葉を知ってしまうと、そこから言葉を探すことを放棄しちゃいがちなんですよね。便利だから使いまわしてしまう。
ヤマシタ そうなんですよね。感情を言語化するのは、ある程度の語彙とか、言語化しようという意思が重要なので、そういうときに必要なのが物語なんじゃないですかね。物語を読むってことが大事なんじゃないかなと。
――語彙は貯めるしかないですし、上手く表現できる言葉が見つからなくてあうあう言うだけでも、諦めないほうがいいですよね。
ヤマシタ 茫漠としたままにしないほうが、「好き」が先鋭化されていって気持ちいいと思うんですよ。
――感情を言語化するということと、感情を絵で表現することだったら、どちらがやりやすいですか?
ヤマシタ 好きになったものはつい描いちゃうから絵なのかな。たぶん絵のほうがアウトプットとしては自然な気がします。そのあとからいろいろと理屈をこね回すんじゃないですかね。ろくろを回す感じで(笑)。「好き…!」っていう最初の情動段階では言葉もなくひたすら粘土をこねるしかなくて、ろくろを回し始めてからいろいろ小うるさくなっていくんじゃないかと思います。
――ろくろを回しているときに、派生的に物語が浮かんだりします?
ヤマシタ それは二次創作的な?
――一次でもいいんですけど(笑)。
ヤマシタ 二次創作的なことだと、これ好き!って思ったら、実際に漫画を描くまでいかなくても、私の脳内で毎夜連載が始まるんですが、私の脳内でだけなので、記憶喪失とか展開も演出もなんでもありの一大スペクタクルなストーリーになります。もう自分で考えて自分で泣きますからね(笑)。一次創作だと仕事なので、責任が生じますから、情動だけに突き動かされて考えたりはしないです。
――仕事とは関係なく、一次創作で設定から何から“俺得”な物語を考えることはありますか?
ヤマシタ 2年くらい休んでいるときだったら、すると思います。
(無言のままずっと首を振っている担当編集者を見ながら)
――そんな可能性はなさそうですね(笑)。
ヤマシタ 連載やっているときは無理でしょうね。漫画を描いたらゲームをするくらいしか余力が残っていないんで。
――ゲーム分は残っているんですね(笑)。
ヤマシタ (笑)。0からの妄想は疲れるのでほとんどしないです。

(インタビュー・文/桜雲社・山本文子)

次回はついに最終回! 更新は9/6(金)を予定しています。ヤマシタ先生のおすすめ映画や小説、さらに作画に関する質問まで、最後まで目が離せない内容が満載!! ぜひお楽しみに!

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