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同じクライアントでもここまで変わる、の話

グロリアと3人のセラピスト

心理学を学んだことがある方ならまずご存知(だと思う)「グロリアと三人のセラピスト」という有名なビデオがあります。かなり昔のものです。グロリアという美しい女性クライアントと3人の流派が異なるセラピストーー来談者中心療法のロジャース、ゲシュタルト療法のパールズ、論理療法のエリスーーとのセッションをまとめたという貴重なものです(YouTubeでもしかしたら一部見られるかも)。

誰かのセラピーを覗き見るなんて機会はなかなかありませんし(当然)、しかも同じクライアントとそれぞれ独自の立場をとる時代を代表するセラピストが競演(?)、もうそれだけで面白そうだと思いませんか。

(ちなみに「カウンセリング」とか「セラピー」と言いますが、流派、学派によって一括りにできないくらいに様々です。よって立つものが異なるので、臨床場面での応用のされ方もいろいろあります。)

アプローチの仕方の違いで

それぞれの心理療法の違いについては、それだけで長文になってしまうのでここでは少し棚上げして。取りあげたいのは例えひとりの同じクライアントでも、治療家が変わりアプローチの仕方が変わることよって、違った場や関係性がそこに作られるということです。

セラピストはそれぞれが持つ治療理論や理念に基づきクライアントと相対するわけですが、スポーツの指導者でも同じことが言えると思います。例え同じ選手やチームでも、指導者の関わり方次第で成果が大きく異なる可能性は十分あります。

先のビデオではざっくりまとめると、受容かつ共感のロジャース、「気付き」に導くために揺さぶるパールズ、論理的分析を繰り出すエリスが対比されています(おそらく、多くの人が「カウンセリング」と聞いてイメージするのがロジャース的態度だと思います。逆にコーチングではパールズやエリス的態度の方が馴染みがあるのではと)。

これを指導者に当てはめてみると、受容的な指導者、厳しく迫る指導者、分析型の指導者・・・それぞれ顔と名前が浮かびそうですよね。ここでどれが良くてどれが悪い、ということではなく、指導アプローチとパフォーマンスには関係性があるという視点を持つこと自体が大事ではないでしょうか。

もし同じチームにタイプの違う3人の指導者がコーチングを行なって比較するビデオ、なんてものがあったらとても興味深いなと思います。ぜひ見てみたいですね。選手の受け止め方も含めて。

グロリアのその後

実は後年、グロリアの娘さんが「「グロリアと三人のセラピスト」とともに生きて」という本を出されています。ビデオの中でもグロリアの感想は扱われているものの、「実は・・・」の部分が本では書かれています。まぁ、ビデオを見ていたら納得の内容です。少しだけネタバレすると、グロリアがその後もつながりを持っていたのはロジャース先生でした。

にしても、グロリアの勇気たるや。
日本に比べてカウンセリングそのものは日常に馴染んでいるお国柄とは言え、自分のセッションを全世界に公開するなんて、ヌード写真集を出すかそれ以上の勇気が必要ではと。そのおかげで、多くの心理学を志す人の素晴らしい資料になっています。

同様に、歴史上有名な心理療法家のケーススタディでは有名な患者たちが何人も登場しますが、みなさん自分の赤裸々な相談内容を明かされているわけで・・・天国で何とも複雑だったりしないのかなと思ったりします。苦笑






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