スキャット4

 電話がなる。一コールも鳴らさずに取る。
どこにいるの?と訊ねられる。泥の中だよと答える。以降電話口の声は聞こえない。電話をやめて、頭が度重なる夜ふかしで衰弱していく事に体を任せる。自分といくつかの知らない自分を繋げる。体をくねくねさせる。人には時間がある。長いフィルムが頭の上に。
 彼女はフィルムを精巧に動かす機械を作った。誰よりも自分を理解している事だろう。どこに行けばいいか、何をすればいいか、なんだってお手のものだ。彼女はフィルムを全て受け入れている。
 

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