シンデレラ　前半　3/12の日記

あ、お帰り。
ごめんね、なんか遠くまで行ってもらっちゃって。そこら中探してくれたんでしょ？　いいよいいよ、命令とはいえさ、娘一人を探すのなんて相当苦労したでしょ。しかも手掛かりが靴片方だけ。
出しておいてなんだけど、見つかるわけないって思っちゃっててさ。
舞踏会の夜、0時の鐘が鳴った瞬間いなくなったあの子。
あの瞬間が夢のようでさ、ふわふわと、まるで熱に浮かされたみたいで。
私、思ったんだよね、あの子と結ばれたいって。

今笑わなかった？　大丈夫？　そう。
まあでも、こんな手掛かりが残ってるのって神様が「探せ」って言ってくれてるってことなんじゃないかなって。
もし見つかったら、それが運命の相手だって事なんじゃないかなって思うんだ。
やっぱ今笑ってない？　そんなに面白い？　王子だよ一応。
舞踏会で結婚相手探してさ、名前も知らない姫と踊ったしさ。

あと白馬もいるし。

うん、でもすごく感謝はしているよ
私のこんな妄想に付き合ってくれてさ。
もし見つかっても見つからなくても、こんなお願いはもうしないよ。
ただもし見つかれば、それがたとえどんな生まれの子であっても、どんな見た目の子であっても、結婚を申し込もうと思ってる。

それで、彼女は……？

27人？

え、27人も候補いたの？
はー、そ、え27人。

え、ちゃんとぴったりの子を選んだよね？
あー、やっぱ27、そう……そんなに……。

いやいやいや疑ってない、疑ってないよむしろかなりいい仕事をしてくれたと思ってる。
それでも27、あー。

当時の名簿とか……
だよね、私もこの子だけなんか見覚えないなーと思いながら踊ったし。
はー、あ、そう……

いや、うーん、そうねー、うん。
覚えてないん、だよね、顔。

私夢のようだったって言ってたじゃん。
あれ、夢のようって言うか、あの。
酒で酔ってて全然覚えてないんだよね。

うん、熱に、うん。
えー、どのくらい飲んだろ。
それこそ侵入者の存在に気づかないくらいには飲んだね。
うん。
素面の時に本気で走れば追いついたと思うけど、それすらままならないくらいに酔ってたから。

27、そうか27人……
も娶るわけにいかないもんね、まさかね。

そうかー、どうしようか。

ちょっと面接してみようか。
ね、会ったら思い出すかもしれないし。
うん、ごめんね、お願いしま今舌打ちした？