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仲間との豊かな関わり合いがもたらす体育授業

はじめに

現行学習指導要領小学校体育科の学年目標を見てみると,他の教科には見られない「態度」に関する表現がある。「仲よく(低)」, 「協力・公正(中・高)」である。さらに高学年においては各領域の「態度」の指導において「助け合って」という具体的な内容が明記されている。つまり体育は教科ではあるが、道徳の「人間尊重の精神」,特別活動の「よりよい人間関係を築く」などの目標と同じように児童の内面性の充実も求められているということである。

学校体育で育成すべき能力

昨年,ある教育研究所が小5・中2・高2生の学
習に関する実態調査を行った。大都市・地方都市・郡部から抽出された各 3,000 名程度の児童生徒のデータであるため、全国的な値を示すものではないと解説にあるが,判断材料の一つとして参考になることに異論はないであろう。
「教科の好き嫌い」の項目では、「とても好き+まあ好き」の割合が体育は80%を超えており,人気教科であることが分かる。過去5回の好きな教科の調査では,体育は,小学生では全てベスト3に入っており,中学生では5回ともダントツのナンバー1を獲得している。特に中学生においては,受験科目ではない保健体育は、心も体も大いに解放させることのできる教科ということなのかもしれない。このように,子ども自身が主体的に向き合う教科であるからこそ、子どもたちに身に付けさせたい内容を十分に整理し、準備を万全に整えておけば、子どもの高い意欲との相乗効果によって、先ほどの「仲よく」「助け合って」という人間関係の形成能力を効果的かつ即効的に育むことができるのではないだろうか。
管内のある小学校の高学年で特別授業をさせていただいた時、ゴール型ボール運動を実施した後にカードに反省を書いてもらった。
「この競技で大切なことは?」の質問に、クラス全員が「協力」「チームワーク」と書いた。「楽しかったことは?」の質問には、「仲間に褒めてもらった。」「みんなで盛り上がった。」と書いた。子どもたちが楽しさを味わう場面は,運動技能の向上や勝敗だけではなく、「仲間との関わり」による安心感,満足感,充足感を味わったときにこそ,体育やスポーツの醍醐味を感じているのである。このことから, 21世紀型能力のイメージに考え合わせていったときに、「自らの体を使って表現する基礎力」「他者との対話からより深く学ぶ思考力」「生活や社会に問題を見いだして健やかで豊かな未来を創る実践力」という学校体育で育成する能力としての構造を見いだすことはできないだろうか。

最後に, 2015年ユネスコが全面改訂した「体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章」の中に、「体育・身体活動・スポーツは、人と人とのより強い絆,連帯,相互の尊重と理解,すべての個人の高潔性と尊厳に対する尊重を高めようとすべきである」と記されていることを述べて,今回のnoteの終わりとしたい。

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