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セルジオ・カブラル 『ナラ・レオン 美しきボサノヴァのミューズの真実』 荒井めぐみ訳 ブルース・インターアクションズ 2009.12  坂尾英矩『ボサ・ノーヴァ詩大全』中央アート出版社 2006.7  Elizeth Cardoso "Apelo" (1966) "Chega de saudade" (1958) 

セルジオ・カブラル 『ナラ・レオン 美しきボサノヴァのミューズの真実 (P‐Vine BOOKs)』荒井めぐみ訳
ブルース・インターアクションズ 2009年12月刊
2010年1月18日読了

脳腫瘍のため47歳で亡くなったブラジルの歌手、
Nara Leao (1942.1.19-1989.6.7) の伝記。

ボサノヴァは、ナラが十代の頃、
彼女の家に若いミュージシャン達が集まっていて、そこに
ヴィニシウス・ヂ・モライス(Vinícius De Moraes 1913.10.19-1980.7.9)や
トム・ジョビン(Antonio Carlos Jobim 1927.1.25-1994.1.28)や
ジョアン・ジルベルト(João Gilberto 1931.6.10-2019.7.6)が現れたりしていたことから始まったとも言われています。

ブラジル人名がたくさん登場するので人名索引が欲しかったです。
巻末のディスコグラフィが30ページもあって、
曲名だけでなく作者も記載されているのが便利。

「いつもナラの家での音楽集会に来ていたのは、ホベルト・メネスカル、カルロス・リラ、ルイス・カルロス・ヴィーニャス、[ナラの婚約者の]ホナルド・ボスコリ、シコ・フェイトーザ。さらに、カストロ・ネヴィス兄弟、シルヴィア・テリス、ギタリストのバーデン・パウエル、ピアニストのルイス・エサ、ベテラン歌手のルーシオ・アルヴィス、フルート、サックス、ベース奏者のベベート、まだ十代のドリ・カイミなど。

時にヴィニシウス・ヂ・モライスが参加したときは、まさにお祭り騒ぎになった。しかし、グループの最大のアイドルは、アントニオ・カルロス・ジョビンとジョアン・ジルベルトだった。

ジョアンが部屋に現われると、全員がジョアンを囲んで座り、静かにギターを演奏するジョアンから、ハーモニーやリズム、奏法を学ぼうとした。この会に参加したときに、美しいバイーア出身の女性で、歌手で、将来、ジョアンの妻となりアストラッド・ジルベルトとなるアストラッド・ワイナートと知り合った。」
p.40「プレイボーイ・ボスコリ」

「ボサノヴァの誕生にナラの家で行われていた音楽集会が、そこまで関係していたわけではない。レコード会社オデオンのスタジオでおこっていたことにより深いかかわりがある。

1958年7月10日から、そこではジョアン・ジルベルトが「シェガ・ヂ・サウダーヂ Chega de saudade 」を含めて、トム・ジョビンの曲を録音し始めていた。

実際のところ、それは単にどう呼ぶかの問題だった。
"ボサノヴァ" と言う表現が、ゾーナ・スル地区の若者たちの間で一般的になったのは、
トムとニウトン・メンドンサの
「デザフィナード Desafinado 」
(「それがボサノヴァ/とても自然なこと
Isso e bossa nova / Isso e muito natural 」という歌詞)
が録音されてからだろう。

1958年にジョアンが録音し、
1959年にリリースされた78回転のLP
「シェガ・ヂ・サウダーヂ」の別面に収録された。

そこでは、トム・ジョビンがジョアンを「ボサノヴァのバイアーノ」と紹介している。」
p.53「プレイボーイ・ボスコリ」

"Chega De Saudade"
「思いあふれて」
歌詞日本語訳
http://plaza.rakuten.co.jp/xxjazz/diary/200507030000/

https://ja.wikipedia.org/wiki/デサフィナード
「1959年に発表されたボサノヴァの曲。…
初めて歌詞中に「ボサノヴァ」の単語が取り入れられた曲である。」

ナラ・レオンは1985年に来日、FM東京がその公演を放送しました。
当時横浜市民だった私はラジカセで録音して何度も聴きました。
残念ながら若くして亡くなりましたが、LPをたくさん残しています。

ユーチューブにナラ・レオンと
ホベルト・メネスカル(Roberto Menescal 1937.10.25- )の
1985年の来日の際のTV放映があります。

Nara Leao "Samba de uma nota so" e "Samba do Aviao"Nara Leao com Roberto Menescal na TV japonesa (1985)
https://www.youtube.com/watch?v=ReCCGLrkues

Nara Leao "Chega De Saudade"
Album: Garota De Ipanema (1985)
1985年の来日時に日本で録音されたアルバム。
https://www.youtube.com/watch?v=T3AH-Dqyg20

Nara Leao "Desafinado"
https://www.youtube.com/watch?v=mmrjgupseZo


https://www.amazon.co.jp/dp/B00005FNVB

https://en.wikipedia.org/wiki/Nara_Le%C3%A3o
https://ja.wikipedia.org/wiki/ナラ・レオン

坂尾英矩『ボサ・ノーヴァ詩大全』
中央アート出版社 2006年7月刊
2010年1月21日読了

1956年にブラジルへ渡った著者が体験したボサノヴァ創成期について書いた本。

ボサノヴァ35曲の発表年・原詩・訳詩・解説(作詞作曲家・歌手・演奏家)が記載されていますが、その内、私がボサノヴァの曲として知っていたのは10曲でした。

「Apelo 哀訴 1966
Elizeth Cardoso (1920.7.16-1990.5.7)
作詞 Vinicius de Moraes[1913.10.19-1980.7.9]
作曲 Baden Powell[1937.8.6-2000.9.26]
https://www.youtube.com/watch?v=jUk1qs2zc70

https://www.youtube.com/watch?v=_Q5MNKCDoI8
Elizeth Cardoso e Zimbo Trio '' Apelo '' (1970) モノクロ動画 5:56

https://www.youtube.com/watch?v=qXsTzpgVHHc

Live In Japan (1977)

https://www.youtube.com/watch?v=LsbS5HFbDj8
Elizeth Cardoso & Baden Powell - 'Apelo' 動画 4:22
TV Globo 1986

http://www.youtube.com/watch?v=uRV-v-fZryU
Elizeth Cardoso e Raphael Rabello "Apelo" (1989?)

Raphael Rabello (1962.1031-1995.4.27)

Toquinho e Vinicius "Apelo"
https://www.youtube.com/watch?v=ynVPS0G0FeU

Vinícius de Moraes,Toquinho e Maria Bethania
https://www.youtube.com/watch?v=gfLarcYdAhw

「このコンビの作品はアルコールのエネルギーで作られたといっても過言ではない。ヴィニシウスのアパートにこもって飲み明かしながら編み出すのが常だったから、出来上がるまで一曲あたり平均10本のウイスキーが空になったとバーデン本人が言っていた。」p.32

「バーデンの作曲は主にサンバであるが、この曲はサンバ・カンソンとして書かれたにもかかわらず、ミュージシャン達の好みによってボサ・ノーヴァのリズムで演奏されたので、ボサ・ノーヴァという印象が広まった。ヴィニシウスのロマンチックな詩よりもショパン風なフィーリングのメロディの方が飛び抜けて美しい」p.32

Elizete Cardoso (1920.7.16-1990.5.7)
Chega de saudade (Tom Jobim, Vinicius de Moraes) 1958
https://www.youtube.com/watch?v=ZQGbzNuqYWE

「Chega de Saudade
想いあふれて
1958
作詞 Vinicius de Moraes
作曲 Antonio Carlos Jobim

João Gilberto
https://www.youtube.com/watch?v=yUuJrpP0Mak

ジョアン・ジルベルトはボサ・ノーヴァの元祖?
日本のボサ・ノーヴァ・ファンは好きになった動機としてジョアン・ジルベルトのレコードを聴いてから、と答える人が少なくない。ジャズともラテンとも違うハーモニーの進行と軽快なリズムは当時の若い世代を魅了してしまったのだ。

トム・ジョビンの名曲「シェーガ・ジ・サウダージ」をジョアンがギター伴奏してエリゼッチ・カルドーソが歌った有名なレコード「カンソン・ド・アモール・ジマイス」フェスタ盤発売の1958年をボサ・ノーヴァ元年とするのが通例となっている。

このレコードでジョアンがきざむギターリズムが耳新しく世間の注目を浴びたので彼がボサ・ノーヴァの創始者という説が世界中に広まったが、本当にジョアンがクリエイトしたのだろうか。これについて日本でファンが多いギタリスト、バーデン・パウエルに私が聞いてみたことがある。

「確かにジョアンの弾き方は一風変わっていたが、ああいう弾き方はガロート、ルイス・ボンファ、ラウリンド・ジ・アルメイダといったモダンで優れたギタリストたちも同じようなサウンドを出していたんだよ。彼の運が良かったのはジョビンの名曲を大スター、エリゼッチが歌うレコーディングに招かれたことだ」

「ジョアンの功績はね、唄とギター、つまりコーヒーとミルクをうまくミックスして美味しいミルクコーヒーを作り上げた、ということだ」」p.78

著者によると、ボサノヴァはジョアン・ジルベルトの登場以前から生まれ始めていたようです。

Elizete Cardoso - Cancao do Amor Demais (1958)
https://www.youtube.com/watch?v=HqQUthiQxzE

Ano/Year:1958
Selo/Label:Festa
Faixas/Tracks:
1-Chega de saudade (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)-00:00
2-Serenata do Adeus (Vinicius de Moraes)-03:27
3-As praias desertas (Tom Jobim)-06:35
4-Caminho de pedra (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)-08:49
5-Luciana (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)-11:38
6-Janelas abertas (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)-13:13
7-Eu nao existo sem voce (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)-16:19
8-Outra vez (Tom Jobim)-18:17
9-Medo de amar (Vinicius de Moraes)-20:11
10-Estrada branca (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)-23:18
11-Vida bela (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)-25:45
12-Modinha (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)-27:53
13-Cancao do amor demais (Tom Jobim, Vinicius de Moraes)-29:54

Musicos/Musicians:
Regencia/Conductor, Piano, Arranjos de/Arranged By Antonio Carlos Jobim
Baixo/Bass Vidal
Bateria/Drums Juquinha
Flauta/Flute Copinha
Violao/Acoustic Guitar Joao Gilberto (1,8)
Trombone Maciel, Gaucho (3)
Trompete/Trumpet Herbert (5)
Violino/Violin Irani Pinto
Violoncelo Nidia Soledade
Vocais/Vocals [Choir] Antonio Carlos Jobim (1), Joao Gilberto (1), Walter Santos

読書メーター ブラジル音楽の本棚(登録冊数21冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091255


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