未来から逆算して考える「高校選びの基礎知識」
この記事は,2023年(令和5年)4月23日(日)に実施された,足立はばたき塾の進路説明会に話者として登壇した際のトーク内容を文字起こししたものです。構成や内容に一部修正があります。
目の前の高校入試のことを真剣に分析しよう
【ここでの注意】保護者・・・自分の過去の経験・知識をそのままあてはめようとしない。しっかりと「現在の高校入試」を知って,自身も勉強し情報をアップデートすること。
1・ひとくちに「高校入試問題」といっても・・・
(ア)入試問題のつくり方は昭和の頃とは違う
「歯止め規定の撤廃」「自校作成」→「定期テストの延長が入試問題」は×
「部活辞めて成績急上昇」が通用したのは、歯止め規定があった20年弱前まで。勉強で先行しても強制的に昼寝させられた時代は追いつき追い抜きが可能だった。現在は先行者は昼寝しないのでどこまでも先を行く。しかもすでに勢いがついてブレーキがかからないので先行逃げ切りが必勝法。
(イ)大学入試改革との連動
「長文化」「調べて・思考し・自ら発見する」→保護者世代の出題とは違います
(ウ)何を,いつ,どのレベルまで学習しておけばよいの?
現在,中1で学習する素因数分解に関する問題で確認しよう
【参考1】2001年千葉大学入試問題(保護者世代)
1から30までのすべての整数の積は末尾から続けて0が何個並んでいますか。
【参考2】2013年慶應大学(看護)入試問題
1から50までの自然数の積1×2×・・・×50を計算すると,末尾には0が連続して何個並ぶか求めよ。 【参考3】ところが・・・
2020年法政大学高校入試問題(現在の中学生)
1から100までの積1×2×・・・×100を計算すると,末尾には0が連続して何個並ぶか求めよ。
2020年広尾学園中学入試問題(現在の中学受験生)
100から200までのすべての整数をすべてかけあわせた数は,1の位から0が何個続いているか求めなさい。
2021年上智大学(経済)入試問題
正の整数nに対して,1以上2021以下のすべての整数の積2021!が43nで割り切れるときのnの最大
値を求めよ。
2・大学進学を目指すなら
大学進学を目指すなら 学力面は「先行逃げ切り」が圧倒的に有利
・高校入試でどれだけ貯金を作るか→自校作成問題が採用されている理由
・首都圏の国公立大学を目指すなら→高校入試には登場しない「中学受験生」の存在も意識
・「公民が中3春からスタートしない→公民が終わらない」という公立中学校が続出しているのが実態。
東京マラソンで考えれば「最後方からのスタート(まずスタートラインに到達するまで時間がかかる位置にいる)」だと自覚すること。
過去は変えられないが未来は変えられる
例1:私が目指すのは「高校入試」です。大学入試なんてまだ先です。
例2:とりあえず定期テストの点数がよくなればOKと思っています。
心当たりのある人は,今すぐ勉強に取り組む姿勢や考え方を修正すること
進学先選びは「トンネルを掘り進めるように」考える
【ここでの注意】中学生・・・学生が集まらず募集停止を決める大学が首都圏においても登場し始めている。選ばなければ「大学生にはなれる」時代に,肩書ではなく「個人の資質(学習履歴や経験も含めて)」が問われるのは当たり前と考えておく。
昭和(保護者世代)・・・いい大学に入ればいい会社に入れて一生安泰(実態は違ったけれど)
15歳→18歳 片道・一方通行で未来を考えればよかった
令和(現在の中学生)・・・世の中の変化のスピードが速すぎる
目の前の状況だけで判断し続けるその場しのぎの「人生2択」でうまくいくと思う?
1・受験校を決める場面を想像してみよう
Aさん:「●●がしたい→可能性を探して大学へ→そのために高校へ」 「未来→現在」の進路選び
Bさん:「今の成績で現実的なのは,このくらいの高校かな」 「現在→未来」の進路選び
「現在→未来」の視野しかないと自分の世界は縮まる一方で広がることはない
やりたいことがわからないなら→「目の前の勉強に全力投球」
真剣に勉強することで見えてくることがある→自分の適性との出会いのために勉強する
2・自分の未来(22歳以降の人生)を最大限想定して,「今何をすべきか」
【参考】大卒求人倍率(従業員数別)の推移 (リクルートワークス研究所調べ)
実はコロナ前から「大企業に限っては」売り手市場ではなかった。→どうして?
大企業の採用は「いわゆる一流大学」の学生に偏るといわれる→どうして?
理由①:同じ大学生を名乗っていても「当たり前」の感覚が違うから
・エントリーシートの質1つをとっても,作文・小論文に向き合った経験値が違う
・「意欲もなく優秀でもない学生」を「意欲が高く優秀な社員」に変えるなんて,
そのコストを企業は負担しないし出来るとも思っていない。
→それが出来るなら,その学生の生き方やそれまでの環境を否定することになる
→自己否定を繰り返すような,TVでよく見る研修でもやるしかない
もちろん例外はいるが,その例外となる一人を探し出す作業はコスト面で割に合わない
→大学名を隠して採用したとしたら,もっと大学間格差は大きくなる
理由②:「感情のコントロールができない人」を採用するのはリスク
・自分の感覚を基準として「無理だ,やってられない」 周囲に負荷がかかる
・経験値の低さに起因する「油断・楽観性」 周囲に負荷がかかる
諦めの早さ 見通しの甘さ 自身の成長のみならず周囲の成長に影響を及ぼす
自分のご機嫌を自分でとれない人に需要なし
→どんな環境の組織・集団に属するのかが重要となる
だから,入口の段階で「意欲が高く優秀な学生」を採用しようとする。
言ってくれるのは,中学生・高校生の間だけ。これを理不尽と思うのなら高校受験・大学受験を頑張れ。大企業に就職することがベストではないが,福利厚生面などを考えたときにどんな違いがあるかについて,ご家庭で話し合っておくとよい
3・2045年の世の中を想像しよう
【参考】10万人単位の出生数減少ペース(人口動態調査より)
・後輩がいなくなる→部活ならどうなる? これか国家レベルでおこるよ,あと20年後に
・皆さんが解決策を考える当事者となり最前線で右往左往するようだと,会社も国も終わり
→「少数精鋭」への準備を進めている企業は,皆さんを採用するときには「新時代対応」の始まり
選ばれるのはどんな人? エリートではなくリーダー
・介護の世界を例に挙げると
せっかく来てくれた人を辞めさせるわけにはいかない→腕力のない女性でも介護ができる「パワースーツ」に需要が発生する アイデアを出せる観察力と周囲を巻き込み商品化するだけの行動力
・外国の方々とビジネスするのは当たり前
「私は一生日本から出ないので英語は必要ありませーん」という昭和の小学生みたいな屁理屈は
通用しない
求められるのは 「最強のコミュニケーション能力」「最強の行動力」
→「でもでも,だって・・・」なんてモジモジする人の出番はない
自分が生き抜くために何が必要かを全力で考える 勉強はその1つ
4・国立大学の入学者枠は「とにかく狭き門」
国立大学に行きたい・・・もちろん大歓迎です。頑張って勉強しましょう。
ただし,実態は甘くないのでしっかりと現実を見据えましょう。
国公立大学に進学できるのは,大学入学者全体の「5人に1人」
首都圏の国公立大学に進学できるのは,大学入学者全体の「3.4%」
自分の高校選び→同じ目標を持った仲間(ライバル)が集う環境の選択
5・高校入試は人生の通過点の1つでしかない「●●●に挑むか否か」
(ア)「正解のない問いに挑む姿勢」が身についているかどうか
→正解のある問いでさえすぐに諦める人,挑戦しようとしない人に需要はある?
出生数減少の件やコロナ禍など,現在世の中が抱える様々な問題は昭和時代に比べて格段に複雑な背景を持ち,解決のための課題や条件も簡単ではなく試行錯誤しながら見つける粘り強さも必要となる。現在の小中高生が働き盛りを迎える2050年頃には,現在よりもさらに複雑で未知の課題に直面することだろう。
だからこそ,今からでも「誰かに与えられた丸暗記で覚えた知識量」だけではなく,「自らが正解のない問いに挑む習慣」にも目を向けなければならない。
(イ)一生学び続ける・自身をアップデートさせることが当たり前と考えているかどうか
丸暗記で覚えた知識が今後も有効に作用する世の中ならば,正解があることを前提に「失敗しない」ことに評価が与えられた保護者世代の習慣を続けてもかまわない。しかし残念ながら,今の世の中での正解は「自ら導き出すもの」「新しく作りだすもの」,つまり物事をアップデートした先にしか存在しない。2050年の日本の姿は,大きくいえば日本国で生活する者全員が出生数減少とどう立ち向かい環境の変化にどう順応していくのか,この「未来を想像する力」が命運を握っている。
たとえ小中学生であっても,他人事で「2050年?誰かがなんとかしてくれるでしょ」では済まされないことくらいは知っておこう。少なくとも中学・高校生であれば「2050年に自分自身がどのような生活や仕事を求めるのか」をできる限り具体的にイメージ(就職はゴールじゃない,転職も含めてキャリアアップ,知識や経験のアップデートが一生続く)し,それに近づく努力や課題を解決するための情報収集は当たり前。
保護者世代が中学・高校時代だった頃の数倍も「社会の一員としての当事者意識」が必要である。
(ウ)徹底した自己管理能力が試される
「テレワーク・在宅勤務」は時代の象徴→サボろうと思えばサボれる環境で,しっかりと成果を出す
人口減少・労働人口減少→生産性を上げる(効率化)しかない
成果主義がもたらすのは「必要とされる人材」の評価基準変更
自分の未来は自分で決める,そして自分の手で変える
1・「まず登りたい山を決めろ(孫正義)」
(ア)登りたい山とは何か
自分にとっての「生涯の目標(途中で変わるかも)」とは,あなた自身が継続して好奇心や興味を持ち続けられるもの。登山の過程で「もういやだ」「こんなことやって何の意味があるの?」というならば,それは登りたい山ではない→「どんな山でもいいから頂上を目指して登れ!」とは違う
(イ)決まらない人の特徴
自分の将来を真剣に考えたことがない
「まだ中学生だし,どうにかなるでしょ」→コロナ禍は世の中を変えた 保護者世代の経験は通用しない
「何のために勉強するの?」が理解できていない
目の前の高校入試に対して腹の底で決意が固まらない→本人は一生懸命に歩いているつもりでも,登りたい山が決まっていないので,目的地もなくウロウロしているだけに等しい。
何をしたいかわからないなら,全力で真剣に勉強する→何にでもなれる進路を選ぶ
2・未来への展望が浮かばない人へ
夢がないなら「目標」を明確に決める →夢だけ持っていても行動しないと実現しない
高校入試・大学入試に必要なのは「目標の設定」→PDCAサイクルの確立
進路選択・・・自分にできないこと,なれないこと,あわないことの見究め
「わかる」ではなく「できる」を目指す
→「わかってるよ」「今やろうと思ってたんだよ」・・・他人に伝わらないと無価値
自分の決意や覚悟は行動によってしか伝わらない
やらない言い訳を100万回言っても,人生にプラスとなることはない
3・自分が所属する組織・集団の環境に留意する
高校以降「自分が求める環境」は自分の力で手に入れるしかない→高校入試はそのスタート
自分が身を置く環境の違い・・・今後の人生において影響が大きい
→「当たり前」のベースが違う
自分の周囲5mの環境を基準に考えるのは皆同じ
「てにをは」がおかしい文章しか書けなくても,日常会話なら問題は生じない
数学が全くできなくても,生きていくことに支障はない
「当たり前」のベースを上げるために最善の努力をした経験 有無の差は大きい
努力を否定的に捉える人を応援する?→他者のサポートを自ら拒絶するのと同じ
さいごに
21世紀は「自分で答えを探す力(根拠を明確に)」が求められている
習慣は悪い意味でも自分を裏切らない
人は中長期的には習慣に逆らえない
現状維持は衰退しかない時代,わずか15歳で自分の限界を設定して未来はあるの?
お読みいただき心より感謝いたします。サポートは情報発信の継続・質の向上にむけた「経費」として活用させていただいております。