見出し画像

3月8日発売の拙著に掲載した問題に関する補足情報(3)

はじめに

 2021年3月8日に,拙著『公立入試数学「難化&新傾向」問題ピックアップ』(東京出版)が刊行されました。
 企画意図や特徴は,こちらのツイートより返信の形でお読みいただけます。また,このツイート経由でamazonのページに飛ぶことができます。

 こちらでは,この書籍に掲載した問題に関する補足情報を公開していきます。ご購入された方(書籍をお持ちの方)向けの記事となりますが,ご購入いただいていない方でもお読みいただければ幸いです。

第3回 大学入試と同じ設定の問題?

 書籍がお手元にある方は,P100の例題1・・・①(2017年千葉県)とP103の演習問題1(2019富山県)をご覧ください。どちらも「円+正三角形」に関する問題であることがわかります。これらと次の問題を照らし合わせてみてください。

 ある日,太郎さんと花子さんのクラスでは,数学の授業で先生から次の問題1が宿題として出された。下の問いに答えよ。なお,円周上に異なる2円をとった場合,弧は2つできるが,本問題において,弧は2つあるうちの小さい方を指す。

問題1 下図の正三角形ABCの外接円の弧BC上に点Xがあるとき,AX=BX+CXが成り立つことを証明せよ。

無題1

 太郎さんたちは,次の日の数学の授業で問題1を証明した後,点Xが弧BC上にないときについて先生に質問をした。その質問に対して先生は,一般に次の定理が成り立つことや,その定理問題1で証明したことを使うと,下の問題2が解決できることを教えてくれた。

 定理 平面上の点Xと正三角形ABCの各頂点からの距離AX,BX,CXについて,点Xが三角形ABCの外接円の弧BC上にないときは,AX<BX+CXが成り立つ。

 問題2 三角形PQRについて,各頂点からの距離の和PY+QY+RYが最小になる点Yはどのような位置にあるか求めよ。

 太郎さんと花子さんは問題2について,次のような会話をしている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
花子:問題1で証明したことは,2の線分BXとCXの長さの和を1つの線分AXの長さに置き換えられるってことだよね。
太郎:例えば,下図の三角形PQRで辺PQを1辺とする正三角形をかいてみたらどうかな。ただし,辺QRを最も長い辺とするよ。辺PQに関して点Rとは反対側に点Sをとって,正三角形PSQをかき,その外接円をかいてみようよ。

無題2

花子:正三角形PSQの外接円の弧PQ上に点Tをとると,PTとQTの長さの和は線分 ア の長さに等しいから,
   PT+QT+RT= ア +RT になるね。
太郎:定理問題1で証明したことを使うと問題2の点Yは, 点 イ と点 ウ を通る直線と エ の交点になることが示せるよ。
花子:でも,∠PQRが オ °より大きいときは,点 イ と点 ウ を通る直線と エ が交わらないから,∠QPRが オ °より小さいという条件がつくよね。
太郎:では,∠QPRが オ °より大きいときは,点Yはどのような点になるのかな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
(1)線分AX上にBX=DXとなる点Dをとって,問題1を証明せよ。
(2)文章中 ア ~ オ にあてはまる適切な記号や数字をかけ。
(3)∠QPRが オ °より「小さいとき」と「大きいとき」の点Yの位置について,正しく述べよ。


大変長い文章ですが,これは2018年11月に実施された「大学入試共通テスト数学試行調査」の第5問(一部)です。これでも設問や文字数を削った状態でご紹介していることを覚えておいてください。

(1)は原題では「合同である2つの三角形を選ぶ」だけであり,①と②で共通して問われている証明問題よりも解きやすい設定でした。ところが公表された正答率は34.7%と低く,中学生のうちに「何を,どこまで」演習して理解しておけばよいのかに関する指針となっていることがわかります。

 是非保護者会などでご提示いただき,難化する高校入試問題の例として
拙著の掲載問題と比較されることをお勧めします。 

お読みいただき心より感謝いたします。サポートは情報発信の継続・質の向上にむけた「経費」として活用させていただいております。