週末にUSDJPY FXを取引しよう
週末が騒がしい時、市場関係者が気をもむのが週明けからの相場の状況である。月曜の早朝、為替はどれくらいジャンプするのか、日経はどこで寄り付くのか、サザエさんの単純なストーリーすら頭に入ってこないくらい、去り行く日曜を心穏やかに見送る事ができなくなってしまう。
特に週末に悪材料が出た時、週明けは明らかに株安・円高の展開だろう、と信じるに足る状況であったとしても打つ手がなく隔靴掻痒ものであった。そう、ビットコインが無い世界では。
今は違う。ビットコインがあるのだ。365d / 24h マーケットが開きっぱなしのビットコインが。これを使えば週明けの社畜トレーダーたちが都会の喧噪に戻ってくる前に我々は先回りしてディレクションを取る事ができる。高見の見物を決め込む事ができる。(理屈の上では)
基本的な考え方
ドル円を為替マーケットが開いていない週末に取引するためには、JPY/BTC の取引と USD/BTC の取引を組み合わせればよい。上記チャートの緑線は1BTCの円ベースの価格(bitFlyer, 現物)を1BTCのドル価格(BitMEX, スワップ)で割ったものである。赤線が実際の為替レートだ。時々例外的な動きをする(合成された為替レートと実際の為替レートの乖離が大きくなる)が、両者の動きが高い相関性を保っている事が分かる。
週末にトランプが何か発言したり、旅行禁止が発令されたりして週明け相場が動く事が予想されるにも関わらず合成為替レートが動いていなかった場合、それを見越して以下に解説するポジションを取ると、週明けに為替相場が「あるべき所に動いた時に」勝てる可能性が高いだろう。
下準備
まず、取引口座だが、TAOTAO と BitMEXに開く。TAOTAOは信用取引を行える口座種別である事。口座を開いたらそれぞれの取引所に証拠金を入れる。
(記事初出時は円側はbitFlyerとしていましたが、やはりBTC-FXは現物乖離が激しいのでTAOTAOが良さそう。他にもDeCurretやGMO等円建てショートできる取引所であればOK)
ここでは、BitMEXには1BTC, TAOTAOには100万円を入金したとしよう。
まず、TAOTAOで1BTC分のショートポジションを入れる。これは円ベースでBitMEXに預け入れた担保のBTCの価格変動リスクを円建てでヘッジする為だ。これで円建てでBitMEX / TAOTAOを通じて為替・BTC価格とも中立的なポジションができる。(この点は、以前私の記事で触れた「実践的BitMEXで円建てノーポジの作り方」とは考え方が異なるので要注意)
ポジションづくり
さて、週明けに円高を予想していたとすると、週末に取るべきポジションは(上記、準備で取ったポジションとは別に)
TAOTAO : BTCショート
BitMEX: BTCロング
だ。実は、明確には意識しづらいが、上記ポジションは
TAOTAO : BTCショート / 円 ロング
BitMEX : BTCロング / USD ショート
というポジションである。従って、BitMEXのBTCロングとTAOTAOのBTCショートが打ち消しあうため、合成して考えると円ロング / USD ショートが残るのである。円ロング、すなわち円高で勝つポジションだ。
具体的に考えて行こう。
TAOTAO:
1BTC分を信用取引でショートする。市況が下記の通りだったとして 914041円でショートに1BTC分エントリーする。(過去の板のキャプチャが無いのでチャートで)
BitMEX :
上記と同じ瞬間にキャプチャしたBitMEXの板を以下に示す。1BTC分だけロングする。枚数で言うと、以下の相場状況なら8358枚だ。(この辺の枚数の考え方については先ほどの「ノーポジの作り方」をむしろ参照されたい)
なお、取引手数料がもったいないので、技術的には BitMEX を指値で待ち、MEX側が約定した瞬間にTAOTAOを成り行きでフィルしに行くのが良いと思われる。
損益計算
では、損益を計算してみよう。BTCについて BTC高、BTC不変、BTC安、ドル円について、円安・不変・円高、合計9シナリオ考え得るが、いくつかの場合について以下に損益をシミュレーションしてみる。
エントリー時の条件(仮定)は以下の通り
TAOTAO : 914,041円 / BTC x 1枚, ショート
BitMEX : $8,358 / BTC x 8358枚, ロング
合成為替レート: 914,041 / 8358 = 109.36円 / $
円高、BTC不変の場合:
円高に推移した場合、Exit時のレートは以下のようになっている筈である。
USD建てBTC価格 : $8,358 (不変)
想定為替レート : $108.36 (1円高)
想定円建てBTC価格 : 905,682円 / 1BTC
ドル建て価格が不変である為、BitMEX側のポジションからは損益が出ない。TAOTAO側からは ( 914,041 - 905,682 ) x -1 = 8,358円 の収益が発生する。
円高、BTC高の場合:
USD建てBTC価格 : $8558 ($200高)
想定為替レート : $108.36 (1円高)
想定円建てBTC価格 : 927,355円 / 1BTC
とするとBitMEX側から収益が、TAOTAO側から損失が出る。
BitMEX側収益は ( 1/8358 - 1/8558 ) x 8358 = 0.02337XBT。その場の市場レートでドル転出来たとすると 0.02337 x 8558 = $200
他方、TAOTAO側損失は ( 914,041 - 927,355 ) * -1 = -13,314円
市中の為替レートが $1 = 108.36とすると、8357円の収益となる。
予想に反して円安に行ってしまった場合はTAOTAO側の損失 > BitMEX側の収益となり、トータルで損失が発生する。
レバレッジ
実際、証拠金の何倍のドル円ポジションを張る事ができるだろうか。
TAOTAOの最大レバレッジが4倍であった時、TAOTAO側のレバレッジ1倍分はBitMEXの担保のリスクをヘッジする為に使ってしまうので、残り3つ分だ。BitMEX側は全ての取引余力をこの戦略に振り向ける事ができる。ロスカットラインとも要相談ではあるが、100万円と1BTCが証拠金であれば3BTC分ぐらいの想定元本に対してこの戦略を回しても無理ないリスク感ではないかと思う。
リスク
この戦略がワークしないシナリオはいくつかある。
まず最も大きなリスクは「合成為替レート」と実際の為替レートの乖離が広がる事だろう。この戦略はあくまでも合成為替レートが実際の為替レートに「ついていく」事を前提として組んでいる為、ついていかない場合は収益を作る事はできない。
[27.Jan.2020 朝 追記] 以下、BitMEX / bitFlyer の合成レートでは残念ながら週末のリスクオフの流れにBTC市場がついていっていない状態が観察されている。
また、ポジションを組む瞬間、ポジションを閉じる瞬間の乖離が自分の取引したい方向にAgainstであるとそれだけでこの取引から期待されるリターンの少なくない部分を持っていかれる可能性はあるだろう。
オーバーナイトから2晩ぐらいでポジションを取るのをやめておかないと調達コストでじわじわとやられていく事になる。MEXは基本的にロング側からは3bps / day、もしくはそれ以上の調達コストが発生する傾向があり、bitFlyerはロング・ショートに関わらずとにかく4bps / dayのコストが発生する。ポジションを数日間保持すると無視できない負担になってくる。
最後に、当然の事ながら週末の合成為替レートが週明けの展開を先に織り込んでしまっている場合はこの戦略に優位性は無い。
以上、レバレッジかけすぎのロスカット発生にはお気をつけください。
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