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恋愛小説デビュー 4年 押久保汐音

16年前、保育園に通う僕は彼女に恋をした。

当時から彼女は僕のマドンナだった。
あれは確か、当時好きだった野球ちゃんにフラれてからすぐのこと。
帰り道、ひとりで帰る僕をみかねた友人たちが僕の恋のエースストライカーだった。

「サッカーちゃんなんてどう?面白くて、可愛いし。」

サッカーちゃんと初めて会ったのは、砂ぼこりの舞う小学校のグラウンド。

「サッカーちゃんとお似合いだね!」

なんて言われちゃったし。

確かに当時の野球ちゃんも魅力的だった。
しかし野球ちゃんはとっても難しい性格だった。
なにより野球ちゃんのことが好きな人の心に漬け込んで、坊主を強要してくるのはやめた方がいい。
それも思春期を見計らって。そんな彼女嫌だ。
そこまでしなくてもいいじゃないか!!

僕の好きなサッカーちゃんはいつも笑顔だった。どんなに楽しいゲームよりも僕の心を掴んで離さなかった。
ただ、レガースの匂いを初めて嗅いだときは驚いた。
自分のすねを疑った。
現実を受け入れられない僕は逃げるかのように、力無くふっと笑った。それに応えるかのように強烈にぷんと臭った。

時は流れ桜が開き始める春の頃、僕たちは中学校に入学した。

「あら、こんにちは。坊や。」

振り返るとそこには、すらっとしていて透明感のある肌にきれいな黒髪。それでいて無邪気に振る舞う姿は男子の憧れ。先輩の3年生のバスケットボールさんだ。

緊張して言葉に詰まる僕の手を無理やり引っ張って急に駆け出す。
彼女はどこかに向かって走りだした。
ついた先は体育倉庫だった。
何が始まるというのか。
心臓が鼓動で張り裂けそうだった。

「ねぇ、おねえさんに坊やのドリブルみせてごらん!」

で、できないです!
息を切らしながらなんとか僕は答えた。

「ほら、はやく!おねえさんに…」

や、やめてください!!
僕は振り払って逃げた。

僕には刺激的すぎた。少し早かった。
僕はやっぱりサッカーちゃんの笑顔が一番好きだった。

サッカーちゃんは、僕をいろんなところへ連れて行ってくれた。

夏の暑い日、虫だらけの山奥。
目の前が真っ白、猛吹雪の練習場。
川に囲まれた、即イケポチャ河川敷。

僕はあの頃、日本の四季を真正面から受け止めていた。季節が美しいとは誰が言い始めたのだろう。
それにしても楽しかったなあ、死ぬかもってカンジで。

都内の地下を電車でもぐり、たどり着いた先はコンクリートとガラスで造られた四角い建物。僕の通う東洋大学だ。

また季節が過ぎ、僕たちは大学生になっていた。

僕はサッカーちゃんに構わず遊んでばかりだった。
大学で出会ったお酒ちゃんや、洋服ちゃんとあんなことやこんなことまで、、。
気分が良かった。全く。男という生き物は。

それでも僕はサッカーちゃんが好きだった。だが、事件は突如起こる。

えへ、えへへ、、
僕のサッカーちゃんはかわいいなあ、、、
それに比べて

あいつのサッカーちゃんまじでブサイクだな!あはは!
あいつのサッカーちゃんほんと頭悪いよなあ!あはは!
あいつのサッカーちゃんあそこがだめだよなあ!あはは!

「私だけを、、」

ん?サッカーちゃん?

「私だけを見なさいよ!!!」

ペチーーン!!!(ビンタ)

「そもそもあんた、私のことが好きなら、筋トレするとか、大学の勉強するとか、もっと私と向き合うとか、してみなさいよ!!」

サッカーちゃんの声は震えていた。
僕はうつむいたまま言葉を失った。そんなサッカーちゃんは生まれて初めてみたからだ。
サッカーちゃんの言う通りだった。

そういえばつい最近までの僕はサッカーちゃんに甘やかされていて調子に乗っていた。サッカーちゃんに見向きもせず、他の人のことばかりだった。

サッカーちゃんへの想いがもう一度溢れてきたのを全身で感じた。
サッカーちゃんに振り向いてもらうためには頑張るしかない!そう思った。サッカーちゃんには気付かされてばっかりだった。


「まだサッカーちゃんのこと好きなのかお前。」

空がオレンジ色に燃え、カラスが鳴く17時の河川敷。
僕にそう問いかけたのはサッカーちゃんを紹介してくれた友人である。

あいつのこと諦めきれないんだよ!

僕がそういうと、友人は微笑みかけてそのまま去っていった。
その背中が見えなくなってから僕はようやく立ち上がって家路についた。

黒紺の空に響く虫の音、19時の田舎道。
夜とは一日の終わりにふさわしい。
ふっと見上げるとそこにはいつもより僕の近くに浮かぶ満月。
その姿がどこか、サッカーちゃんに見えたような気がした。



〜続く〜

次回予告
サッカーちゃん激怒!
「仕事と私、どっちが大事なの?!」

あとがき

っていう恋愛小説。
なんだこれ。
なぜか僕と境遇が似ているんですけど、、
気のせいでしょうか。

以上で終わります。ご清読ありがとうございました。

そして僕の大好きで、大好きな!

4年間苦楽を共にしてきた

最高の仲間たちの最後のブログ、始まります!

次回は、笑顔が素敵で、東洋一の愛されキャラ、佐々木銀士君です!お楽しみに!!

東洋大学体育会サッカー部 4年 押久保汐音

押久保汐音(おしくぼ・しおん)2000年7月4日生まれ
FCサンダース→東急レイエスFC→アルビレックス新潟U-18

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