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自然に学び人が集う「しまなみアースランド」

私たちは幼稚園児から大人まで様々な年代への環境教育に取り組んでいます。その一環として、2015年10月より、今治市から指定管理を受託し「しまなみアースランド」の管理運営を行っています。

なぜ我々がアースランドを管理運営するのか?

株式会社今治.夢スポーツ 代表取締役会長 岡田武史のコメント
私は学生時代から40年以上にわたり色々な環境保護活動にかかわってきました。その中でも富良野で出会った倉本聰さんのやられている自然塾という環境教育に感銘を受けインストラクターの資格を取りました。

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地球が危ないとよく言いますが、地球は大丈夫です。人類がそれも我々の時代はまだ大丈夫でしょう。我々の子供たちの時代が大変なことになるかもしれません。自然塾の中の石碑にネイティブアメリカンに今でも伝わる言葉を刻んでいます。「地球は子孫から借りているもの」、地球は未来に生きる子供たちから借りているもの、借りているものは汚したり、傷つけたり、壊してはいけないという意味です。

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ところが文明人と言われる我々はどうでしょうか?

子供たちの時代のためと考えると、色々な社会アジェンダの答えが簡単に見つかります。すべての生物は命をつなぐために生きています。人間だけが自分のために生きているのかもしれません。このアースランドを起点に環境意識が高まってほしいという思いと、子供たちの笑顔あふれる場所にしたいという思いで指定管理を受けています。それが我々の企業理念「次世代のため物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」に合致するのです。

しまなみアースランドで働くひとたち

しまなみアースランドでの活動について、実際に現場で働くスタッフの生の声をお届けしたいと思います。まずはアースランドが開園した時から勤務をし、現在アースランドを統括する黒澤さんにお話を聞きました。

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富良野から今治へ

私は三重県の四日市市で生まれて、高校は東京の自由学園、大学時代は長崎で過ごしました。しまなみアースランドに来る前は、富良野自然塾で働いていました。そう言うと、自然とかキャンプが好きでこの道に入ったのかと思われますが、そういうわけではありません。

学生時代に農園芸学を学んでいるときに、畑を耕して野菜を育てていました。実際に野菜を育てる前には「種をまいて土と水と日光があれば育つだろう」と思っていたのです。しかし、それだけでは野菜は育たなかったのです。太陽の光が強すぎると葉っぱは焦げる、水が多すぎると根が腐る。そういう自然と向き合ったときに、世界中でこの様な不作になる事態が起きると食糧危機に繋がるのではないか? と思ったのです。

それから、食糧問題の根本的な問題を考える様になりました。そこでたどり着いたのが環境問題でした。食糧問題を解決するには、環境問題を改善しないといけない。そのためには環境について考える人を増やしていくことが必要じゃないかと思い、環境教育に関する職に就こうと富良野自然塾に就職しました。

 私が富良野自然塾に就職した2010年は、倉本聰先生の創った環境教育プログラムを全国の自治体や企業が導入するようになってきた頃でした。現在では日本に6か所ある自然塾ですが、一番最初に導入したのが今治市です。その際に今治から研修に来られていた方にお声がけをいただき、私は活動の拠点を今治に移すことになりました。

アースランドで出来ること

しまなみアースランドは、今治市が新都市開発を進めていた際に今アースランドとなっている地域から当時、希少野生動植物種であったオオタカの巣が見つかったのです。それで工事がストップしてしまい、この場所をどうしようか? となっていました。そのとき「富良野で倉本聰さんがやっている富良野自然塾をここでも展開するのはどうでしょうか?」と岡田武史さんが提案すると今治市も前向きになり、自然塾のある公園が2011年3月31日に出来ました。

アースランド全体図縮小

しまなみアースランド全体図

ちなみに「しまなみアースランド」という名称は愛称で、正式名称は今治西部丘陵公園となります。ちょっと堅苦しい名前なので、公募で愛称を募って決まったのがこの「しまなみアースランド」という名前なのです。

しまなみアースランドでは、今治自然塾の活動として、小学生以上を対象とした「環境教育プログラム」、幼児向け環境教育「moricco(もりっこ)」のふたつのプログラムを行っています。また、公園を活用し多くの方が楽しめるような様々な自然体験やイベントも行っています。その他では、学習棟に貸し部屋があります。貸し部屋は会議や子育てグループなど様々なグループが活用しています。

環境教育PG2

アースランド学習棟2

アースランド学習棟工房s

人が集まり賑わう場へ

私には、アースランドにたくさん人が来てもらって、そこで人と人がつながれる場にしたいという思いもあります。それを実現するため、去年アースマルシェというイベントを春と秋に開催しました。キッチンカーのグルメ、ハンドメイド雑貨、家族で参加できるワークショップなど多数の出店者が一堂に会し、芝生広場で夕方まで楽しめるイベントです。

アースマルシェ1

今までは、30名ほどの小規模なイベントは開催していたのですが、アースマルシェには3,000人ほどの来場者もありとても賑わいました。

去年は、FC今治のファン感謝祭もアースランドの芝生広場で初めて開催しました。感謝祭では、クラブスタッフのアイディアで広場の奥にある斜面を使い、斜面にボールを蹴りこんで遊ぶ、ピンボールサッカーというコーナーを作ったりしました。するとこのあとから、斜面を使って遊ぶ来園者が増えました。

ファン感

芝生広場はなにもない広場なのですが、来園される方々が自由に利用しています。ボールを持ってきて遊んだり、シートを持ってきて昼寝する人もいたりします。その姿を他の人が見て「あれいいよね、次来るときは持ってこよう」という会話が生まれていました。公園の使い方をみんなが自然に提案しあっているのです。

みんなのアースランドに

アースランドで来場者にアンケートを取ると、お花をたくさん植えて欲しい。というご意見をよくいただきます。それをどうやって実現させようかと考えているのですが、業者に委託しようかとも考えました。しかし、ここは市民の公園なので私たちも含め、今治.夢スポーツのスタッフや、FC今治のサポーターや市民のみなさんを巻き込んで、一緒にできないか? ということも考えています。

自分たちで花を植えると、あの花は私が植えた。と自分ごとになったり、植え方を学べば、枯れている花を見つけたらまたその人が自分で植え替えたりと、みんなで造る公園になると思っています。

アースランド作業

今、会社では新スタジアムの構想があって「里山スタジアム」というコンセプトで、緑豊かな心のよりどころとなる場所を造ると岡田さんは言っています。私は、新スタジアム以外にもそういう場所が今治にたくさんあればいいと思っています。そのひとつがアースランドで、来園したらホッとするとか癒されるとか、自然に戻れてお花を見て元気になれる、来たらいつも楽しいことをやっている、そういう場にこれからしていきたいです。

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次にしまなみアースランドには、地元今治出身のスタッフもインストラクターとして活動しています。今年で勤務6年目となるしろちゃんにも、自身のことやアースランドについて語ってもらいました。

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自然を伝える仕事

私は生まれも育ちも今治で、大学は県外の大学に通い、卒業後にアースランドで働くことになりました。私が自然で学ぶということに興味を持ったのは、子供のころの体験がきっかけでした。実家は自然の豊かな地域にあります。小学生の頃、同じ今治市でも栄えている地域の友達が遊びに来て、山の中で遊ぶのも楽しいと生き生きしている姿を見るのが嬉しかったことがありました。

そういう原体験から、大人になるにつれて自然や環境のことを人に伝える仕事がしたいと考えるようになりました。学校の先生になるというのは向いていないと思っていたので、それ以外でそんな都合のいい仕事があるのかな? と思っていたら家族から今治でアースランドで行っている自然塾のインストラクターを募集していることを聞いて応募したのです。

人が成長するきっかけづくり

私自身は子どものころから山の中に入って遊ぶのは日常だったのですが、ここに来る子どもたちは様々なタイプの子どもがいることに気づきます。子どもたちには思いっきり制限をなくして自然の中で経験を積んで欲しいと思うのですが、インストラクターとしては安全に配慮し、ケガをさせてはいけないと気づきました。

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安全な運営を行うには行動に対して制限をかけたり、禁止したりするしかないのかな? 最初はそう考えていました。しかし、行動制限をかけて体験者の経験値を減らすよりは、アースランドではチャレンジをできる場にしたほうがいいなと思うようになり、そのバランスを取る工夫を考えるようになりました。

自然体験で印象に残っているエピソードがあります。

その子はきれい好きな男の子だったのですが、アースランドの自然の中で遊んでいると泥や、どろぼう草が服について汚れていきました。最初は遊ぶのが楽しかったので気にならなかった様ですが、ふと我に返って自分の汚れている状態に気づくと、「なんで僕はこんな状態だのに着替えもさせてもらえないの?」という状態になりブルーシートの上で一歩も動かなくなってしまったのです。

また元気に遊んで欲しいと思いながら、その男の子にオオバコを引っ張り合って遊ぶお相撲遊びをやってみる? と声をかけて遊ぶことになったんです。そうするとその子は強いオオバコを探し出したり、別の草だったどうだろう? と考えだしてブルーシートを離れて活動を自分から再開したのです。

この子とはその後、幼稚園でmoriccoで来てくれたり長い間関わりがあったのですが、卒園する頃には率先していろいろなことにチャレンジしたり、誰かが困っていたらそれを手伝いに行くなどそういう子に育っていました。この子の変化を通じて、人が成長するきっかけは色々なところにあるんだなと実感することが出来ました。

人のつながりと自然との調和

この仕事をしていると、たくさんの子どもと関わることになります。moriccoですと年間延べ2,600人ほど来てくれています。そういう子どもたちが、何年後かに自然塾のプログラムに参加し「しろちゃん、幼稚園の時に来よったけど覚えとる?」と声をかけてくれたりすることが増えてきて、自然環境プログラムを継続していることの面白みも実感しています。

環境PG1

しまなみアースランドでは、自然環境プログラム以外にも様々なイベントを行っています。その際、地域の有識者の方とコラボをすることも増えました。ホタルの鑑賞会だと、地域のホタルの保存会の方とつながりが出来ました。天体観測のイベントでも、地域で天体や星のことで活動されている方とコラボをしました。

天体観測のイベントでは、親子連れ以外にもご年配の方もたくさん来ていただきました。来場されたご年配の方からは久しぶりに目の前で、子供たちがはしゃぐ姿をみられて楽しかったという感想をもらい、様々な年齢層の方に楽しんでもらえるイベントが出来たのがとても嬉しかったです。

天体望遠鏡

月(天体望遠鏡とスマホで撮影)

イベント中に天体望遠鏡で見える月面をスマホで撮影

アースランドは自然と接することが少ない、キャンプにもそんなに興味はないという人たちに、自然と接する第一歩、興味を持てるきっかけの場所になって欲しいと思います。

私は自然と関わりながら、その素晴らしさを伝えていくこの仕事と出会えて幸運だったと思っています。これからもアースランド、自然塾やmoriccoの環境教育プログラムに関わり続けたいと思っています。


黒澤 慧子(くろさわ・けいこ)
株式会社今治.夢スポーツ アースランドグループ長
長崎大学卒業後、2010年にNPO法人C・C・C富良野自然塾(作家 倉本聰氏主宰)に就職。演劇の手法を取り入れた環境教育を学ぶ。2011年から今治に拠点を移し、翌年に幼児向け環境教育 森育(現moricco)を立ち上げ、愛媛県内幼稚園、保育所の体験受け入れを開始する。
現在は、環境教育に留まらず、マルシェ等のイベントの企画運営を行い、アースランドがより愛され、笑顔で溢れる場所になれるよう取り組む。
しろちゃん
今治自然塾インストラクター
大学卒業後、当時今治市が運営していたしまなみアースランドにインストラクター候補生として入職。指定管理者制度導入後も継続して同公園に関わりたいという思いから指定管理者となる株式会社今治.夢スポーツに入社。
現在は、今治自然塾インストラクターとして環境教育活動に取り組む。


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