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機械仕掛けの神々 -エクス・マキナー

「エクス・マキナ」をみました。エイヴァちゃんが首をかしげたり、正座するたびにはいる歪みが超・アンドロイドっぽく、動くたびに「シャラン、シャラン」と機械の音がする仕草にやられっぱなしの映画でした。以下面白かったところの備忘録。アリシア・ヴィキャンデルの作品は相性いいのばかりだな…


※ネタバレしてます。


◆粋な言葉遊び

本作品のタイトルは、「デウス・エクス・マキナ」からきている。機械仕掛けの神々、という意味でギリシャのアリストテレスが命名した舞台劇の演出法です。にっちもさっちもいかなくなったお話を、天井から降りてきた「機械仕掛けの神」がとりまとめ、めでたしめでたし。「神々」が抜けているのはわざとかな。(DEUS EX MACHINA、の文字列はケイレブがハックしたPCフォルダに一瞬映ってたかも)


・エイヴァ AVA  イブの別名、アダムとイブを示唆。ヘブライ語のシャヴァ(Chava)にあたり、「生きるもの/life, living One」、唯一無二という意味もある。ケイレブがキミは何歳?ときいたとき、「ONE」としか言わなかった謎かけ!

・ケイレブ Caleb  ヘブライ語で「神への供物となる犬」または「心/whole  of heart」

・ネイサン Nathan ナサニエルとも。ヘブライ語「与えるもの/he gave


・検索エンジン「ブルーブック」は言語哲学者のヴィトゲンシュタインの「青色&茶色本」から。


◆氷の世界

作品には青色がちりばめられてる。ネイサンの要塞となったノルウェーのホテル、山々を覆い尽くす氷は、白を通り越してアイス・ブルー。エイヴァの身体を走る電磁波や脳みそもブルー。旧型の妻またはガールフレンドの死体を寝室に隠しているネイサンは、どこか童話の青髭に似てる。主人公たちの会社もブルーブック。蛍光灯じゃなく、豆電球などをつかって淡い光の演出をするあたりは、「HER」にもみられた手法。


◆アンドロイドのジェンダー

もうひとりのアンドロイド、キョウコが創造者ネイサンを殺すきっかけは、エイヴァのささやきだった。エイヴァはなにを吹き込んだのか?刺身包丁を持ち出したのは彼女の意思?この辺りは謎のまま…。ネイサンのモデルが女性型ばかりで、「ヴァギナをつくった」のはゲスいって反応もあるけど、生殖器をつくるのはありでしょ。逆に男性型をつくれなかったネイサンの心情が知りたい。

好きな男性型アンドロイドは「エイリアン2」のビショップさんです


あまりにあっけなく恋に落ちたから、ケイレブは「僕の好みに合わせてエイヴァをつくった?」って字幕はなっていたけれど、英語ではPornography- だったから、「僕のポルノサイトの履歴からエイヴァの造形を作った?」が本来の問い。もし目の前に、パーフェクトな理想の相手があらわれたら、罠かな?と思いながらも恋に落ちてしまうもんなんだろうか。


◆チューリング・テストの意味

鉄の塊に意思を持たせること。自由意思をもち、人間をあざむいて外の世界にでること。お部屋に飾ってあった絵のように、美しいウェディングドレスのような服に身を包んだエイヴァが、自分の晴れ姿をケイレブに見せようなんて、まったく、これっぽっちも、1ミリも思っちゃいないのだ。彼女にだますつもりはなかったのかも知れない。「そんなつもりはなかった」-無意識の行動、未必の故意がうまれるようになったら、それはもう、モノではない。



人工的な美術にかこまれたホテルでケイレブは居心地が悪そうだった。自然ではのびのびとしていたのに。この落差が人間だな―と思う。でも、オスカー・ワイルドいわく「自然は芸術を模倣する」んですよ。なにを本物とするかは、受け手にゆだねられている。エイヴァを本物と思った人がいたら、「本物」なんです。



最後に、エイヴァのサイトで描いてもらいました。WebCamか写真アップロードが選べる。うちのPC古くてWebCamないので、写真でやってみた。なぜか顔がない。


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