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目の異常

それに気付いたのは夜の1時ほど。

いつものように松屋の牛丼とカレーを食おうと店内に入り注文する。

夕方まで海にいて潮風で顔がべとついていた為、待ち時間に顔を洗おうと洗面台へ向かう。

両手で水を浸し、パシャっと顔面をやり、ふと鏡を一瞥。

すると、右白目に赤い斑点が見えたような気がした。

え?と思い、顔を拭った後、鏡の自分を二度見する。

どうやら下の涙点(涙が出る穴)付近にかけて白目に真っ赤な血溜まりができている。

心底引いた。まず牛丼屋のトイレ横で棒立ちになるその姿にも引くが、真っ赤な目の理由が不明すぎて恐怖で引いてしまった。

今日一日の出来事を急回転で巻き戻す。目を擦ったっけ・・まつ毛が刺さったっけ・・潮風がしみたっけ・・。

ダッシュで車へ戻り、牛丼を助手席へ投げ捨て、スマホで目の異常を調べだす。

「目」「真っ赤」「血」と園児の文字遊びのような検索ワードをかけると

結膜下出血

という名前が目に止まった。出血という字面が悍ましすぎて血の気が引いたが、更に画像検索をかけてみる。

うわ

画面上、白目が真っ赤に充血したドアップ目の写真が怒涛の如く出てくる。

間違いないこれだ。心を制し、恐々と〇〇クリニックの解説ページへ飛ぶ。

”原因はさまざまで、飲酒・睡眠不足など目の疲れ・ストレス・過度のくしゃみや咳・月経などで出血します。痛みや視力低下はありません。個人差はありますが数日間で治ります"

よ、良かった。安堵する。最近、目を酷使しすぎていた。それが原因だったんだ! 

しかし、一例を鵜呑みにしてもいけないと、あらゆるサイトの解説ページを行脚する。・・・どうやら本当のようだな。

今一度、ルームミラーで確認する。まばたきをしたり、指で圧を加えてみても、痛みや異物感を感じない。よしよし、解説通りだ。

開放感とともにシートに深く凭(もた)れ、大きく息を吐いて目を閉じる。

何かがおかしい。

頭がクラクラするのだ。立ちくらみはよく起こすが座りくらみは経験がない。

気分の悪さが加速度を増してきた。血の気が引いた、が現実のものとなる。

堪らずシートを倒し、側臥位になって深呼吸をする。なんだ、なんだこれは。 呼吸が小刻みになり、視界が揺らいで思考も定まらなくなる。


わかった・・・。あれだ・・、スマホでの画像検索の「目」を見すぎたのが原因だ。血管迷走神経反射だ。

これは血やグロテスクなものを見たりしてストレスが溜まると起きる症状。筆者はこの症状によく苛まれる。血が苦手なのだ。

過去には遊園地で並んでいる時、足の小指を脱臼して接骨院で触診している時、抜歯をした際に止血用の噛んでいた綿を見た時、興味本位で顔の形成外科手術の解説をYOUTUBEで見た時、ラーメン屋で口を誤って噛んでしまい、ティッシュで止血している時などの場面で発生している。

ラーメンに至っては真冬の夜に温まろうと、嬉々として麺を啜った直後の出来事だから不運だった。出血は大したことなかったのだが貧血状態が収まらず、麺の3/4を残した状態で退店してしまった。

今回の状態も検索した「病的な目」画像を眺めすぎたのが良くなかったんだろう。迂闊だった。不意の目の異常で原因究明に必死過ぎた。その必死さがストレスになって血管迷走神経反射に拍車をかけたらしい。

この悩ましい症状、珍しいものではないが女性が多く起こすもの。虚血性(生理や大腸癌による出血のケース)や鉄欠乏性がある。

血を流していないのに発生するメカニズムだが、脳が誤解して処理してしまうが故に生ずる。今回の例で言えば、充血した目を視覚して脳が過干渉を起こし、「血だ!血が流れすぎないように気を付けろ!」的なシグナルを発して、低血圧状態になり血の巡りが悪くなる。よって脳貧血状態が誘発されるわけだ。

男がひとり、血を見てクラクラしてしまうのは何とも情けない。それも大出血や死体を見てるわけでもなし、目の充血レベルでコレだ。あー情けない。松屋ってレバニラ定食あったっけな。

帰ってからはすぐ就寝。翌日、赤みはキレイさっぱり消えていました。






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