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フォトコン受賞者が考える構図の考えかた〜シーソー理論〜

今回は写真の構図でやたら持て囃される三分割構図へのアンチテーゼとして”シーソー理論”を掲げる。

三分割構図とは目的と手段が逆転したもの!?

写真の構図について色々調べてみると、よく三分割構図にすると良いと書かれている。簡単に説明すれば写真を縦横に線を2本引き、交わる点に被写体を配置する事で、中央から程よくズレ、かつ安定感が得られるお得な構図だ。

Wikipedia”三分割法”から引用

被写体が中央からズレると日の丸構図には無かった緊張感が生まれる。そしてズレすぎると安定しない。ではちょうど良いズレ具合って普遍的にどのくらいなの?って事で生まれたのが三分割構図である。つまり三分割構図の目的は”程よい緊張感と安定の両立”なのだ。

しかし写真は往々にして三分割構図が当てはまらない事が多い。それは状況によって被写体の大きさであったり明るさ、色、質量、シルエットによって情報量が変化し、空間的バランスが変わるからだ。例えば上記で三分割の例としてあげた被写体の木が、どんどん右に傾いていく松の木なら、恐らく同じ位置に配置すると松の先端は写真から大きくはみ出し、構図は破綻するだろう。故に状況に応じて被写体の空間的なバランス見て、それに適したズラし方を考えていかなければいけない。その為、三分割構図は被写体の空間的バランスよりも配置だけにこだわっている為、正しく機能しない事が多いのだ。

ではどうすれば状況に応じてズラし量をコントロールするの?そのためのシーソー理論です。

ここで登場するのがシーソー理論。これはメインとなる被写体を、まずはシーソーの片側に置くように大きくズラし緊張感を発生させ、その後補佐的な被写体をカウンターとしてシーソーのもう片方に置くように用意する事で、シーソーが安定し緊張感と安定を両立できる方法だ。目的は三分割法と同じだが、手段として大きく違うのは補佐的要素を追加する事だ。これによってメインの被写体のズレ量を自由自在にコントロールする事ができ、さらにどんなにズレても安定させる事ができるのだ。図解した方が分かりやすいので、実際に自分がシーソー理論を用いて撮った写真を例にしてみる。

まずはメインの被写体の決める。この場合はタワークレーン。この段階では何もシーソーに乗ってないので安定はしているが、緊張感が無い。ちなみにこの構図は三分割構図。
次にメインの被写体を大きく中央からズラしていく。
緊張感や余白を生み出していく工程。しかしこの状態ではまだシーソーが傾いたままだ。
そして傾いたシーソーを安定させるために、この理論で最も重要な補佐的要素を追加させる。ここまでやってようやく適切な空間的バランスで、程よい安定感が得られる。
完成した写真。三分割構図では無いが、三分割構図の目的でもある程よい緊張感と安定の両立が、シーソー理論によって達成されている。

このようにシーソー理論は補佐的要素の追加によって安定感を得られる為、メインの被写体のズレ量が決まっている三分割構図とは違い、状況に合わせ自由にズラす事ができる。その結果、三分割構図からは大きくズレた下記の写真でも、緊張感と安定の両立ができるのだ。

この写真の場合はメインの赤い車と補佐的な暗い路面で面積比8:2を作り緊張感を出している。しかしこの場合は車が赤く太陽光が当たって陰影がつくことによって情報量が多いからこの面積比でも安定する。仮にもこの写真モノクロだと…
同じ写真でもモノクロにするだけでメインの赤い車の情報量が格段に下がってしまう。そのため空間的バランスが変わってしまい、この8:2の面積比ではシーソーが傾いてしまう。
この写真をモノクロで成立させたいのであれば、このくらいの面積比にしなければ成立しない。このくらいの面積比であればモノクロでも情報量が増えシーソーが安定する。つまりシーソーを安定させるコツは面積比だけではなく、色や質量といった被写体がもつ情報量をよく考えなければいけないのだ。

結局のところ構図というものは画面内の要素を等価値に見て配置する平衡感覚、センスが必要。瞬時に画面内にある要素の情報量を見極め、適切に自分の意図が伝わるように配置するシーソーやテトリスの様なものだ。最後にシーソー理論で撮った写真を何枚か載せて終わりする。

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