【AoE2:DE】新DLC発売日決定!内容と感想【DoI】
2月頭から噂されていた新DLCの内容と発売日が発表されたので、今回はその和訳と感想を書いていきたいと思います。
DLCの概要をざっくりというと、"インド大分割"です。
今まで雑に"インド"とまとめられていたのが4つに分割され、元のインドはヒンドゥスターンと名を改めリワークされることになります。
ヒンドゥスターンはDLCを購入しなくても遊べるようです。
次のリンクから原文とトレーラーを見ることができます。
ちなみに毎回書いてますが、DLC文明の使い勝手は微妙になることが多く、既存文明の性能も高いので、買わないと絶対勝てないということはありません。
またDLCを買っていないと一緒に遊べない、解放されない機能や適用されないパッチがあるということもないので、全実績開放を目指さない限りまずは買わなくても大丈夫です。
しかしDLCのキャンペーンはどれも非常に出来が良いので、主に一人で遊ぶという人は、買った方が良いと思います。
通常の記事4つ分の文字数とちょっと長めなので、ゆっくりお読みください。
それでは見ていきましょう。
■発売日と値段
名称: Dynasties of India
リリース日: 2022年4月28日(予約購入はすでに開始)
値段: 1200円
内容: 3つの新文明、3つの新キャンペーン
ストア: Age of Empires II: Definitive Edition - Steam
■新文明共通要素
ここからは文明のもとになった民族の簡易的な説明と、カタログスペックのみで新文明の評価を行っていきます。
参照するのは発表時点の性能であり、細かな検証やデータはおろか、発売時に変更される可能性が高いものですので、その点を踏まえてお読みください。
和訳に関してはまだ公式がでていないため、コンテクストや史実を踏まえ、独自の和訳を使用していきます。
4文明に共通する事柄として次の3つがありますので、先に触れておきます。
・弓騎兵は象弓兵に置き換わる (ヒンドゥスターンを除く)
・騎士はバトルエレファントかユニークに置き換わる
・破城槌はアーマーエレファントに置き換わる
地域固有ユニットになった象弓騎兵は元インドのもので、産廃UUトップ3には入るであろうユニットです。
UU枠ではなくなったので多少運用の自由度は上がるかと思いますが、数と機動力が重要なのに、その二つがどちらともないとなれば、なんとなく難しそうに見えます。強化ボーナス次第という感じでしょう。
アーマーエレファントに関しては詳細なスペックが分からないと何とも言えません。
AOEシリーズでは砲撃兵器以外の建物破壊用ユニットは弱いという通例があるので、ちょっと期待できないなというのが正直な感想です。ただ破城槌の代替ユニットなのだから、しっかり活躍してもらわないと困ります。
もちろん移動速度や対建物ボーナス、生産コスト、防御力耐久力によっては大きく化ける可能性があります。
地域固有ユニットはイーグルウォリア、バトルエレファント、ステップランサーで、今のところステップランサー以外は主力を張れるユニットになっています。
エレファントが軍隊の主軸になるかどうかは分かりませんが、これらが主力になるのであれば、また新しい風がAOE2に吹くことでしょう。
■ベンガル
・ベンガル - 史実と地理
ベンガル(Bengalis)は、インドの東端にあるベンガル地方に興った数々の王朝をもとにした文明です。1300年代中頃にデリースルタン朝の失政によってインド各地で反乱がおこり、その際ベンガル地方にも王国が誕生しました。
ベンガル王国は継承が上手く行かずいくつもの王朝が興亡しながらも、約200年以上の間広大な土地を統治しました。
時代が進むとインド近世国家であるムガル帝国君主、アクバルによって滅ぼされました。
ベンガル地方はインド北東部一帯をさします。ガンジス川、ブラフマプトラ川の下流であり、複雑な河川が形成する肥沃なデルタ地帯を持つことから、古くから文明が栄えた歴史ある土地です。
現代では宗教的な問題からインドとバングラデシュに分離しています。バングラデシュの由来はベンガルから来ています。
・ベンガル - 文明ボーナス
軍事属性: 象と海軍
文明ボーナス
-象はダメージボーナスを25%軽減し、転向に対して抵抗力を持つ
-時代進化した時、町の中心から町の人を2人得る
-船が一分当たり体力15自動回復する
-交易ユニットは金に加えて10%の食料を産出する(チーム)
ユニークユニット
-ラサ
近接攻撃と遠距離攻撃を切り替えることができる戦車
歩兵に強く、散兵とラクダ騎兵に弱い
-アーマーエレファント
破城槌の置き換えユニットで、対建物用騎兵
遠距離攻撃に強く、近接攻撃に弱い
聖職者による遠距離転向不可
ユニークテクノロジー
-パイク制度: ラサと象ユニットの攻撃速度20%上昇
-大乗仏教: 村人は人口スペースを10%減らす
・ベンガル - 評価・感想
時代進化時に町の人2人取得が印象的な象海軍文明です。
超速攻戦術への適性を高めるものではありませんが、領主に限って言えば、生産コスト、生産時間、TC稼働時間を節約できると考えると、マレーイタリアの高速進化やその他の進化ボーナスに引けを取らない強力なボーナスです。マップを選ばないのも嬉しい点です。
これがもし"各"町の中心が生み出すのであれば、帝王進化でも最大10人、少なくとも6人の町の人を即座に手に入れることができるため、後半まで腐らないように思えます。
家ミスには注意する必要があります。
船の自動回復も、海戦ボーナスの中では強力です。船は体力が高いうえに戦闘をしていない時間が長いため、海マップでは必ず恩恵を受けることができるでしょう。
象のダメージボーナス軽減と転向強化もなかなか強そうです。
ベンガルはバトルエレファントがフルアップできます。象への対抗策には槍か聖職者、もしくはスコーピオンが有効ですが、そのうちの主な二つに対応できるのは嬉しい点です。
矛槍兵がバトルエレファントに与えるボーナスダメージは60なので、15も軽減するということになります。長槍兵では47から35まで落ちるので、特に矛を持っていない文明では対処が難しくなりそうです。
ただ後半に大きな力を発揮するボーナスが交易強化のみなので、エレファントで大暴れするには早くからしっかり交易を回す必要があります。
交易が食料も生産するチームボーナスは、自分のみではブルゴーニュのような高い効果は望めません。
具体的には次の通りです。
最大効率の荷馬車は、8人マップの1辺を4分22秒で1往復し、金122を取得します。これを分換算すると28G/mとなります。
実際には最長距離を取れない、地形や建物で邪魔される、荷馬車同士でぶつかるなどの原因からもう少し効率は落ちると考えられるので、7割程度の20G/mとしてみましょう。
滞りなく交易を準備できれば30~40体程度の荷馬車を回すことになるので600~800G/mです。食料ボーナスはこれの1割ですので約60~80F/m、研究を入れた町の人(23F/m)換算で2.6~3.5人分となります。
帝王中盤以降における町の人約3人分をどう見るか、と言われるとちょっと物足りなさがあります。
しかし実際にはスペインのボーナスが乗れば効果はもっと増えるでしょうし、チーム全体としてみれば4プレイヤー分、つまり12人分のアドバンテージを得られるので、じわじわと自チームを押し上げる効果を期待できます。
満を持して抜刀攻撃ができる射撃ユニット、戦車ラサが登場です。
実は日本の固有ユニット武士は、遠距離攻撃もできる歩兵として登場する予定だったのが、プログラミングの限界から実現できず今の仕様になったという噂があるくらい、AOE2にとっては待たれていたユニットです。
散兵とラクダに弱いということは弓騎兵属性のように見えますが、抜刀状態の処理が分からないので独自のアーマークラスを持っているかもしれません。
"機動力のある射手は強い"というのは史実でもゲームでも同じなので、おそらくこのユニットも活躍できることでしょう。加えて戦車ということならある程度の射撃防御と耐久力も期待できるので、射手と撃ち合えるのは嬉しい点です。
その耐久力を持ったまま、敵陣に突っ込んで近接攻撃で砲撃兵器を破壊して回るという運用方法も考えられます。
ただラサの気になる点はいくつかあります。
一つ目はユニットサイズです。朝鮮の戦車やボヘミアのワゴンのようなユニットサイズが予想されますが、それらのユニットとは違って近距離状態ではユニットサイズが大きいのは致命的です。ユニットサイズが大きければ敵ユニットの周りをうろうろ回ることになり、攻撃に参加することはできません。対処法として接敵するユニットだけ抜刀させ、後ろのユニットは射撃させるというものが思いつきますが、上級者向けの操作です。
二つ目は抜刀状態がどれだけ強いかということです。恐らく抜刀状態が取れることはどこかの能力が低くなっていることが予想されます。ユニットの能力を他より下げて近接能力を手に入れたのに、騎士に殴り負けたり重要な場面で遠投や大砲が壊しきれないようでは困ります。
三つ目はコストです。仮に朝鮮の戦車並みだとして、このユニットが数を貯められるのか、そして貯めたとしてコスト分きっちり仕事をこなすかどうか、というのはちょっと想像つきません。
どんな活躍をするのか、もしくは全くできないのか、実際に使うのが楽しみなユニットです。
続いてユニークテクノロジーです。
象とラサの攻撃速度がアップするパイク制度は、弓懸が無いこともあって必須技術になるでしょう。射撃状態まで速度アップするかなど不明な点も多いですが、象とラサ(弓騎兵)の攻撃力+20%と言われれば恐ろしくなります。包囲攻撃技術を所持しているため、アーマーエレファントもめちゃくちゃ強くなるかもしれません。
町の人分の人口を空ける大乗仏教は実際のコストによります。
基本的にコストが食料と金のユニットを主力にする文明の帝王経済は、町の人120人になります。
詳細な仕様はまだわかりませんが、"荷馬車に適用されない、町の人を荷馬車に置き換える"ことを考慮しても、少なくとも90人くらいには効果が及びます。
交易したとしてもチームボーナスの交易強化によって3人ほど浮くと先ほど書きました。つまり12の人口スペースを余分に得ることができます。
人口上限ボーナスと言えばゴートです。それと比較すると、研究しなければいけないというデメリットはありますが、人口上限まで行かなくても効果を得られるというメリットもあります。
人口160前後で家ミスをしたり、前線の城が落とされて枠が足りないという経験は誰にでもあると思います。そう言ったケースでは既に町の人が125人くらいいることも多いので、もし研究していれば効果を得ることができて、事故が起きたときのダメージを和らげることができます。
更にゴートと違って象文明なので人口当たりのユニットパワーは高く、ゴートよりも恩恵を感じられると考えられます。
ただ、人口系のテクノロジーで行くとモンゴルUTである遊牧民が全く存在感がないので、本当にコスト次第という感じでしょう。
総評
全体をざらっと見た第一印象としては、町の人の価値を理解している、海戦を積極的に仕掛けられる、高コストユニットのための経済を作れる、ユニットの挙動を理解して細やかな操作ができるなど、使いこなすにはオーダーの知識と技量が求められるので、上級者向け文明となりそうです。
ただ一人で遊ぶ分には、やることは経済を育てて象の大軍で突破していくという単純明快な文明に見えるので、遊んでいて楽しい文明かもしれません。
■ドラヴィダ
・ドラヴィダ - 史実と地理
タミル系、いわゆるドラヴィダ人のヒンドゥー王朝である、チョーラ朝をもとにした文明です。位置は少し離れていますが、あのインダス文明を築いたのもドラヴィダ人だとされています。
ドラヴィダ人は現在では南インドに多く居住しているほか、東南アジア諸国にも住んでいるようです。
南インド一帯に広がるデカン高原では、紀元前から数多くの有力な王朝が興亡してきました。その中でもチョーラ朝はデカン高原と広大な海域を優れた陸海軍によって支配しました。
王の権威を高めることに成功したため、ベンガルと違い、一つの王朝で約400年もの間南インドを統治しました。
世界遺産にも登録されるような巨大な寺院を建造するほどチョーラ朝は力を持っていましたが、徐々に地方分権が進んで弱体化し、1279年、隣の王朝に滅ぼされてしまいます。
・ドラヴィダ - 文明ボーナス
軍事属性: 歩兵と海軍
文明ボーナス
-時代進化時、木材200を受けとる
-漁をする人と漁船の運搬量+15
-戦士育成所の技術コスト-50%
-散兵と象弓騎兵の攻撃速度25%上昇
-港で人口枠+5
ユニークユニット
-ウルミ剣士
突撃攻撃ができるユニーク歩兵
歩兵と建物に強く、射手に弱い
-アーマーエレファント
破城槌の置き換えユニットで、対建物用騎兵
遠距離攻撃に強く、近接攻撃に弱い
聖職者による遠距離転向不可
-ティリサダイ
複数の弾(投槍?)を発射する軍船
船に対して強い
ユニークな技術
-医療部隊: 象ユニットは1分当たり体力20自動回復する
-ウーツ鋼: 歩兵と騎馬は鎧を無視して攻撃する
・ドラヴィダ - 評価・感想
時代進化毎に木材+200が目を引く、海軍歩兵文明です。
木材+200は海以外でも戦えるのは想像に難くありませんし、むしろ海戦よりも陸戦に向いているような印象を受けます。
建物割引ボーナスなどを含めた木材というくくりで考えると、領主進化時点で一番獲得量が多いボーナスです。
領主城主の進化後、すぐにやりたいことが何かと言えば、建物の建造です。そのために育成所用の木材をちょうど集めることを目標に、注意を払って経済バランスを動かしたりします。
それがこのボーナスがあることで、斥候にしても射手にしても素早く建設に移ることができますし、早くに畑を多く張れます。
即城主の場合でも鉄工所や市場用の木材をある程度気にしなくていいので、安定して経済を完成させることができるでしょう。
また城主に上がるまでに獲得できる木材400というのは、町の中心約1.5軒分に相当します。ブリトンの町の中心割引ボーナスで同じ量の木材を得るには3軒建造するプランが必要です。
獲得量はもちろんのこと、領主戦でもブームでも使える汎用性の高さという面でも、強力なボーナスと言えるのではないでしょうか。
漁をする人と漁船の運搬量アップも地味ながら嬉しいボーナスです。
海マップや小魚を取る特殊なマップをやるシーンが増えた現在、漁船の効率が上がるのは有効になる場面も多いでしょう。
特に漁船は時間が経つにつれて移動時間が増えて効率が落ちていくユニットです。大体領主終盤あたりになると外洋の魚を取ることになるので、そのあたりで実感できるボーナスなように思えます。
戦士育成所の技術半額は歩兵がフルアップできるドラヴィダにとって、攻守両面を支えるボーナスになることでしょう。
良く使う軍兵長槍矛に加え、ウルミを使いたければその他の研究もすることになるので、恩恵を受ける場面は多そうです。
比較対象になるのがブルガリアですが、全体で見たとき、軍兵戦術を"積極的にしたい"ブルガリアと違って、ドラヴィダは"してもよい"というボーナス内容なので、個人的にはこちらのボーナスの方が強そうだなという感じがします。
散兵と象弓騎兵の攻撃速度25%上昇というボーナスも、なかなか強そうに見えます。馬技術が皆無ですが、ドラヴィダには弓懸もあります。エチオピアの射手を考えれば象弓騎兵はそこそこ強くなるかもしれません。
歩兵文明の天敵と言えば射手で、そこに強いボーナスは有用です。射手文明は強力な文明が多く、そこを正面から抑えられるというのも嬉しい点です。散兵同士の撃ち合いになっても十分アドバンテージが取れます。
歩兵文明でありながら弓関係の研究は揃っていて、パルティアン戦術がないくらいなので、前衛としての役割をきっちりこなすことができそうです。
港の人口ボーナスは、実質港のコスト-25ということになります。
港は建ててもせいぜい3軒といったところなので、入手できる資源量としては物足りなさがあります。
しかし漁船経済は家ミスしやすいですし、港を建造した町の人がすぐに漁を始められると遊牧では安定するので、マップによっては数字以上の効果を期待できます。
突撃攻撃ができるウルミ剣士はAOE3に登場していた、インドの代名詞ともいえるユニットです。突撃はクースティリエが持っている能力で、40秒に1回、攻撃時に25ダメージを与える能力です。
クースティリエはチャンスがあればそこそこ使われていた印象なので、なにか大きな欠陥がなければウルミも活躍しそうです。見た目的にはショーテルウォリアと同じようなコストになりそうです。
クースティリエと違う点は、歩兵である、つまり数が多いということです。その分突撃回数が増えると考えれば、攻撃力は大幅に上昇しそうです。
歩兵ならではの使い方として、攻城塔の併用が考えられます。攻城塔に詰め込んで敵の近くまで運んでいき、射手の一軍に安全に近づいたり、近寄ってきた騎士に致命的な一撃を与えることができそうです。
一部を除いて歩兵UUは性質上、どうしても一芸、奇策の域を出ないので、メインに運用できる性能であってくれたら嬉しいです。
ティリサダイは帝王の時代から利用できる軍船で、軍船に強いのが特徴です。画像を見る限り、バイキング船と亀甲船の合いの子のような性質に見えます。
対船に強くて帝王から出せるということを考えると、ティリサダイを出すために制海権を取るというよりは、どちらかというと制海権を取り戻したり取り続けるためにこれを出して、キャノンガレオン船でダメージを広げるような使い方が良さそうです。
対船性能を売りにしたUUが高速火炎船より弱いと存在意義を問われることになるので、コストはいくらか高いにしても性能は安心できそうです。そう考えると、多少遅れても海を取り返せるチャンスがあるということで、手詰まりなときには海からの侵攻も視野に入れられそうです。
象ユニットの自動回復がつく医療部隊はコストにもよりますが強そうです。ヒットポイントを自動回復するベルセルクやマグレブラクダ、そしてらくだの体力を上げる狂信は、どれも強力な技術です。
特に象は体力が高く、ちょっと削れて残っているという状況が生まれやすいと思うので、積極的に研究したい技術です。破城槌の代替ユニットであるアーマーエレファントはもちろん、象弓騎兵を運用するのであれば、是非とも研究したい技術でしょう。
しかしベルセルクギャングやマグレブらくだは、コスト的にも性質的にも帝王中盤に研究するような技術です。象を回しているなかで城を建て、さらにこれの研究までするというのは通常のゲームでは現実的ではなさそうです。
城を建てやすいマップというのはいくつかあるので、そういうところなら狙ってみても良さそうです。
敵の鎧を無視して近接攻撃をするウーツ鋼は、敵の防御力が上がれば上がるほど、攻撃力がアップする技術と言えます。
リトアニアのレイティスが強いのは箱ボーナス有りきで、さらに耐久が低いために近衛騎士の方が好まれる傾向にあるようですが、このUTが全近接ユニットに適用されるとなれば、なかなかの攻撃力になりそうです。
ただドラヴィダは騎馬系能力が全文明最下位と言って程には技術が全くないので、実質歩兵のみになります。
効果的に使えそうなのは、UUや近衛剣士はもちろん、矛槍もなかなかいいのではないかと思います。素の攻撃力が低い分、逆に上昇割合は高いと言えるので、騎馬以外のユニットを殴ってもちゃんと戦果を出すようになるでしょう。
総評
長期戦は不利な一方で、鈍足ながら破壊力が高い、なんとも尖った前衛文明に見えます。木材ボーナスのおかげで汎用性、安定性は増していますが、経済ボーナスはそれくらいなので、城主中盤までで有利を取っておきたい文明です。地域固有ユニット化した象弓騎兵を使うなら、ドラヴィダがよさそうです。
ウルミ剣士の生産難度と移動速度によって、大きく印象が変わる文明になりそうです。今回の追加文明の中では最も扱いやすそうな文明に見えます。
■グルジャラ
・グルジャラ - 史実と地理
グルジャラはインド北西部を支配した、ラージプート族のヒンドゥー王朝です。日本ではプラティーハーラ朝の方が一般的な呼称のようです。
グルジャラは西暦750年ころから約300年ものあいだ、西にいるイスラム勢力の侵攻を食い止めながら、インド北部の大部分を征服しました。
もしグルジャラに力がなく、イスラムの流入がもっと早かったら、インドは全く違った歴史を歩み、ヒンドゥー文化も違ったものになっていたかもしれません。
・グルジャラ - 文明ボーナス
軍事属性: 騎馬とラクダ
文明ボーナス
-町の中心近くに木の実が2つある状態でスタート
-家畜動物を粉ひき所に駐留させ、無限に食料を生産することができる
-騎乗ユニットは+50%のボーナスダメージを与える
-港に漁船を駐屯させることができる
-ラクダと象ユニットの作成速度+25% (チーム)
ユニークユニット
-チャクラム投擲兵
遠隔近接攻撃をする歩兵ユニット
歩兵に強く、射手と攻城兵器に弱い
-シュリヴァムシャ騎兵
騎兵育成所で生産する矢をかわすことができる軽騎兵ユニット
射手に強く、槍兵とラクダに弱い
-軽らくだ騎兵
領主で作成できるらくだユニット
騎馬に強く、槍兵僧侶射手に弱い
-アーマーエレファント
破城槌の置き換えユニットで、対建物用騎兵
遠距離攻撃に強く、近接攻撃に弱い
聖職者による遠距離転向不可
ユニークテクノロジー
-クシャトリヤ: 軍事ユニットの食料コスト-25%
-国境警備: らくだ騎兵と象弓騎兵の近接鎧+4
・グルジャラ - 評価・感想
1から10まで特殊なボーナス、ユニークが揃っています。
まず序盤関係です。追加の木の実は2つはまだ想像できますが、羊が粉ひき所に駐留出来てゆっくりと無限に食料を生み出すとはどういうことでしょうか。
ボーナスにはありませんが、概要を見ると"屠殺するかわりに"とあるので、グルジャラはAOE3のインドや日本のように家畜を食べることができないのでしょう。ではゆっくりとはどれくらいなのでしょうか。多ければ多いほど効率は上がるのでしょうか。
この二つから想像できる序盤経済は、まず木の実に7人(木の実は羊より効率が悪い)割り当てながら先に粉ひき所を建てて羊駐留、立木を切って伐採所、猪と鹿を食べて進化、というものです。
無限かつ自動というと、ペナルティの意味でも収集速度はおそらくぐっと落ちるはずで、たぶん15分か20分くらいかけて、ようやく肉100(羊1匹分)が回収できるという感じになるでしょう。
羊が直接回収できず、一つの粉ひき所に5匹までしか入れられないなどの制限が付くなら、鹿は寄せずに粉ひき所で食べることになりそうです。
20分で羊8匹を入れて肉800を収集できる程度の速度と仮定すると、1分に食料40産出、これは町の人2人分に相当しますので、本来羊に割り当てる町の人の稼働時間も考えればなんだか妥当に思えてきます。
木の実の分かりやすい利点としては、町の中心近くにスポーンするということは、マップの状況に左右されないということです。とりあえず食料250が手元にあるというのは、どんなマップでも心強いボーナスです。
次に港に漁船をしまえるのは、誰もが夢想した待望のボーナスです。
一時期DEで標準機能になるのではないかという説も出ていましたが、文明ボーナスとして登場しました。
漁船は木材75と町の人より高コストで資源収集率も高いため、積極的に狙われる存在です。また最近のガレー船メタで撃破スピードも上がってきており、一旦避難できるのはとても嬉しいボーナスです。
とはいえ、先のボーナスを活かすなら粉ひき所を積極的に建てる必要があるため、海経済はかなり遅れることが予想できます。
領主の海は一旦取られるともう無理で、帝王技術もスカスカなので、海マップでは逆に羊ボーナスは一旦諦めて猪や鹿を食べて、どうにかして海を取るのが定石になるかもしれません。
騎乗ユニットのボーナスダメージ+50%は、ほぼラクダ専用と言っていいでしょう。
らくだの対騎馬ボーナスはらくだ騎兵が+9、重らくだ騎兵が+18なので、それぞれ+14、+27となります。+27と言えばもう矛槍一歩手前です。
増加量は落ちますが、ラクダ同士で殴りあってもダメージボーナスが発生するのも嬉しい点です。
ラクダが攻撃するのは基本的には騎馬のみですので、実質攻撃力大幅アップです。城主時代にラクダを強化できる文明は存在しないので、なかなか強力なボーナスなのではないでしょうか。
実は元インドUUの象弓騎兵も攻城能力を持っています。新しい象弓騎兵がもし元インドのUU並みのボーナスを持っているとしたら、精鋭象弓騎兵はこのボーナスで対建物+6、対防御施設+6まで攻城能力が上がるので、ロマン溢れる部隊が誕生します。
チームボーナスのラクダと象ユニットの作成速度+25%は、フンのボーナスに比べるとちょっと効果範囲が狭く見えますが、すぐに出したいラクダ系や数を揃えたい象系のユニットにとって、25%アップは大きいでしょう。他の生産速度アップ系ボーナスと重複しやすいことも良い点です。
グルジャラはトルコと同じく長槍兵以降を研究できないので、らくだの生産速度が速いことは重要です。
対歩兵性能をもった遠距離歩兵であるチャクラム投擲兵は、移動速度や射程、耐久力、命中率、ボーナス値など細かいスペックを見なければ、少し判断が難しいユニットです。
一つ比較対象になるのが、グベトとフランカスロウです。この二つと比べて出番は多いのでしょうか。
グベトは機動力と攻撃力を活かして奇襲や攪乱を、フランカスロウは耐久力と生産しやすさを活かして防御よりの運用をするユニットです。
それに比べ強みが対歩兵能力だということになると、出番は帝王中盤あたりで敵が矛を出して来たり歩兵文明だった場合ということになります。
文明ボーナス的にラクダ運用をするグルジャラの天敵として考えられるのが、ボーナスで殴る槍兵、低い耐久力を突く射手の二つです。もしくは、剣士を出して純粋なユニットパワーで押すというのもあります。
敵が槍兵を出してくれたら一つの対抗手段として活躍できそうですが、射手で対処された場合は無理です。
ただグルジャラには象や矢を避けるというユニーク軽騎兵がいるので、どうしても槍で対抗せざるを得なくなるでしょう。特にアーマーエレファントを見たら槍を作りたくなるはずです。
つまり、チャクラム決め打ちをするよりは、色々なユニットを出して敵が槍兵に頼らざるを得ない状況を作って、そこに合わせて出していくという運用になっていくでしょう。
ちなみにグルジャラは重石弓を持ってはいませんが、砲撃手を出すことができます。砲撃手の弱点は鈍足で脆いことなので、そこそこ耐久力か機動力を持ったユニットにすることで差別化をしそうです。
そう考えると、グベトとフランカスロウの中間に位置するような性能になるかもしれません。
シュリヴァムシャ騎兵は矢を避けることができる能力を持つとされるユニーク軽騎兵です。
特殊能力持ちなので金ユニットでしょうが、軽騎兵とわざわざ書くということは、中騎兵として設定されたステップランサーやタルカンよりは安くなりそうです。70F, 25Gあたりがありそうなラインでしょうか。
矢を避けるというのが一体どういう処理をするのかはまだ分かりません。
例えば10%程度の確率で矢を無効にするとかどうでしょう。もしくはクースティリエの突撃のように、時間で回復するゲージがあってそれを消費して無効にするのでしょうか。
前者だったら敵の射手数を確率分減らすことと同義なので強力ですが、後者だった少々扱いづらそうです。
いずれにせよ、射手は命中回数が落ちると途端に弱くなるので、これは対射手ユニットとして優秀かもしれません。弓戦術で町の中心を遅らせてでも弾道学を入れるのは、確実にダメージを入れるためです。それが崩せるのであれば、金を払う価値はあるのかもしれません。敵の陣地内での活動時間が伸びると考えても良いでしょう。
問題はコストとそのほかの細かい性能です。ステップランサーのように、特殊能力自体は変更がないのに、始め強くて1度の弱体化でそれ以降全然使われないというようなユニットにならないことを祈ります。
グルジャラはらくだ騎兵の一段階前の、軽らくだ騎兵を領主の時代で作ることができます。
これを対斥候用と見るのも一つあると思いますが、個人的には速攻戦術が気になります。イーグルスカウトのように極端なデバフを食らうのでなければ、らくだ騎兵の生産秒数は22秒と斥候より8秒、射手より5秒早いのです。さらにチームボーナスの生産速度アップによって生産時間が早まるとなれば、今までにない速度で騎馬ユニットを着弾させることができるかもしれません。
もちろんラクダは55F, 60Gと高額ユニットですので、オーダーは複雑で難しくなると思いますし、実現可能かどうかも分かりませんが、それ以外だと槍兵や射手に普通に迎撃されそうで使い道が思い浮かびません。
開発も何かしら意図があってこのユニークユニットを追加したと思うので、是非活躍して欲しい所です。
軍事ユニットの食料コスト-25%も、らくだ騎兵の近接鎧+4も、分かりやすく特大級のUTです。どちらか一つでもあれば、研究するために城を建てる意味があると言えるような効果です。
矛はおろか長槍も出せないので、きっちりラクダを強化して物量で戦っていく必要があるでしょう。
総評
初心者にはオススメできない文明、不動の1位がついに誕生したなという印象です。今まで序盤が特殊な中国、ボーナスを使った経済が難しいマレーやクマンやブルゴーニュ、アンチが特殊なトルコ、騎士がなく軍構成が特殊な南米などが挙がってきましたが、ここにきてすべてをとんでもないラインで兼ね備えた文明がやってきました。
まだ全く想像できませんが、こういう尖った文明は、めちゃくちゃ強いか、使い物にならないほど弱いかの極端な二択になるのがAOE2の常です。個人的には、シミュレーションゲームに変な文明があるのも良いことだと思うので、是非丸くならず、良い位置に落ち着いて欲しいと思っています。
■ヒンドゥスターン(元インド)
・ヒンドゥスターン - 史実と地理
ペルシア語でガンジス川を指すヒンドゥーと、土地を意味するスターンを合わせた言葉。古代ペルシア人はインダス川より東をヒンドゥスターンと呼んだといいます。
イスラム教であるパキスタンに対してヒンドゥー教地域をヒンドゥスターンというなど、特定の地域、具体的な年代範囲を指さず、インド全体を指すようなニュアンスで使われるようです。
旧インドからそうなのですが、今回追加された3文明と違いヒンドゥスターンは、ポルトガルがすでに航路を開いた後の、イスラム世界とヒンドゥー教が入り混じった近世的な雰囲気を持つ文明になっています。
・ヒンドゥスターン - 文明ボーナス
※太字は変更もしくは置き換えされた項目
軍事属性: 象と海軍
文明ボーナス
・町の人の作成コスト割引、暗黒-10% ~ 帝国-25%
・ラクダ騎兵の攻撃速度+25%
・火薬ユニットの防御力+1/+1
・帝王の時代にキャラバンサライを建てることができる
・ラクダと軽騎兵の対建物+2 (チーム)
ユニークユニット
グラム
複数の標的に攻撃するヒンドゥスターンのユニーク歩兵
射手に強く、騎兵に弱い
近衛らくだ騎兵
強力ならくだ騎兵
キャラバンサライ
半径10タイルの荷馬車を回復し、移動速度を上げる
ユニークテクノロジー
大幹道: すべての金の収入が10%速くなる
シャタニ: 砲撃手の射程+2
・ヒンドゥスターン - 評価と感想
強すぎて色々いじくりまわして無理が出てきたインドに、大幅なリワークが入りました。
今回旧インドからなくなったのが、漁をする人の作業速度+10%、すべての騎兵育成所ユニットの防御力+1/+2です。どちらも有用なボーナスでしたが、果たして弱体化したのでしょうか。置き換わったものを1つずつ見ていきましょう。
漁をする人の作業速度+10%の代わりに入ってきた経済ボーナスは、キャラバンサライの建造ができるというボーナスです。
キャラバンサライは効果範囲内の荷馬車の回復と移動速度上昇をする建物です。
移動速度上昇は交易効率が上げるのとともに、荒らしユニットから逃げる効果も期待できます。
隊商を研究した荷馬車は移動速度1.5でハサーと同等なので、10%でも上昇するなら、繁殖(移動速度+10%)を入れたハサーからも逃げることができます。
建造しなければいけない、複数建てないと効果がないという大きな枷を考慮するとそこそこ強くしても良さそうですが、ヒンドゥスターンにはUTの大幹道(元スルタン)もあることを忘れてはいけません。
コスト次第ですが、おそらくはポルトガルのフェイトリアよりは使える施設になることでしょう。
ちなみにキャラバンサライとは隊商宿のことで、イスラム系帝国が国家事業として交易路の整備を行う際に建てた施設です。サライはペルシャ語で宮殿や故郷を指します。
次に"すべての騎兵育成所ユニットの防御力+1/+2"の代わりに来たのが、ラクダ騎兵の攻撃速度+25%と、火薬ユニットの防御力+1/+1です。
ラクダの欠点は二つあります。一つは射撃防御の低さであり、もう一つはパワー不足です。
城主ラクダは射撃防御の低さがネックになるので、そこを補うボーナスが消えたのはなかなか痛いところです。ハサーが弱くなるのも悲しい点です。
ですが、もう一つの欠点である単純にユニットパワーで押されるときついという欠点を補うボーナスに変更されたと考えれば、単純な弱体化ではありません。運用意識を変える必要があるでしょう。
火薬ユニットの防御アップは誤差程度だと思うので、あまり気にしなくてよいでしょう。
チームボーナスの変更はラクダだけで見れば弱体化ですが、そもそもラクダで建物を壊しにかかること自体が戦況がだいぶ有利になった証拠ですので、元から絡んでくる要素ではなかったように思えます。
むしろ、軽騎兵の対建物+2が領主の斥候運用で役立ちそうです。柵や家を斥候で殴るのはもちろん、塔を斥候で壊すこともできるかもしれません。チームボーナスなので、逆サイドにも効果があるのが嬉しい点です。
象弓騎兵が他の地域固有ユニット枠に移動したことで、新ユニーク、グラムが登場です。ちなみにヒンドゥスターンは(今のところ)象弓騎兵は使えず弓騎兵となっています。
複数のターゲットに刺突攻撃する歩兵で、射手に強く騎兵に弱いということは、縦に範囲攻撃する攻撃に振った耐久低めのハスカールということでしょうか。
ラクダの弱点は射撃であり、そこを補うユニットがインドにはいなかったイメージなので、これは出番がありそうです。
調べてみるとグラムは助手を意味するアラビア語で、イスラム系王朝の奴隷兵士を指す言葉とあります。それにしてはなかなかしっかりとした装備を持っています。
城主ユニークテクノロジースルタンは、効果据え置きで大幹道に名前が変更になりました。大幹道はインドの東西南北を結ぶ、アジアで最古かつ最長の主要道ということなので、よりインドに寄せた形でしょう。
逆に帝王ユニークテクノロジーシャタニは、効果が砲撃手の射程+1から+2に上昇しました。
インドはそもそも砲撃手の影が薄く、さらに砲撃手の射程が1増えたところで、という感じだったために影が薄いテクノロジーでした。しかし射程が7+2なら投石器にもギリギリ対応できてぐっと安全性が増しますし、新UUグラムの対抗策に近衛剣士が出てくることも想像できるので、出番はかなり増えることでしょう。
インドはラクダをぶん回すことに集中して、それが通れば勝ち、通らなければ負けというゲームが多かった印象ですが、だいぶ編成に幅が生まれたように思えます。
総評
元のインドから、少し印象が変わった文明になりましたが、主軸ボーナスである町の人のコスト割引は健在なので、経済の強さそのままに軍編成に幅が出た感じです。
想像できる軍編成は、近衛らくだ+UU、火薬+ハサー、アーマーエレファント+火薬、矛+UUという編成で、どれもなかなか楽しそうです。莫大な金コストがかかりますが、それを可能にする後半経済ボーナスもしっかり揃っているので、最後まで息切れせずに戦うことができるでしょう。
逆により城主が厳しくなったように見えるので、しっかりと町の人を作って機をうかがいましょう。
■まとめ
ここまでお読みくださりありがとうございました。
発売後はMOD系が立て込むことを予想して、まだ不明な点が多いにもかかわらず、各文明約4000文字と長く書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
AORR(東南アジアDLC)文明の頃から、ネタ切れ感がある中で絞り出したような印象があったAOE2ですが、延々と個性豊かな文明を出し続ける開発陣には、感謝しかありません。
DE発売当初はバランス崩壊時代が続きましたが、それ以降開発のバランスを取る能力は上がっており、LotWもDotDも、ぶっ壊れでもなければ弱すぎることもない文明として、大会でもレートでも遊ばれています。
今回はいつにも増して尖った文明内容になっていますが、きっと上手く調整してくれることでしょう。
発売後はバランス調整パッチを除いて、おそらく記事も動画も出ないかと思いますが、MODの方を頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします。
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