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【AOE2:DE】歴史話: マリ

 ゲーム的な強さを考察するものではなく、ボーナスの由来やユニークユニットの歴史等を調べてみようというページです。
 単に趣味の領域ではありますが、雰囲気を楽しむのにはもちろん、ボーナスの一つの根拠を見るのは有意義なのではないかと思っています。

 ゲーム内テキスト、日英独ウィキ、英文サイトなどを参照しています。もし間違ったことを発見した方は、お知らせください。

注意
・大昔に動画作成にあたって調べたものです。
・過去に投稿した記事を再編集したものです。
・全37文明やろうという企画ではありません。


1.文明ボーナス

マリ 軍事属性: 歩兵
・建造の際に木のコスト -15%
・戦士育成所ユニットの遠距離防御力が時代進化毎に +1
・金の採掘の研究コスト0
チーム ボーナス:
・学問所の作業速度 +80%

固有のユニット:
・グベト (歩兵)
固有のテクノロジー:
・ティグイ (町の中心から矢を射る)
・ファリムバ (騎兵ユニットの攻撃力 +5)

2.マリの地理

まずは地理や経済など、いくつかのキーワードについて

・地理
 マリは西アフリカ内陸に位置しています。
 南には後の奴隷海岸、北にはモロッコを中心としたベルベル人の治める領地がありました。地中海 (北アフリカ) との間にはサハラ砂漠が広がっています。
 西アフリカ内陸にはニジェール川が大きく湾曲する形で流れていて、流域を肥沃な土地にしていました。ニジェール川に沿って主要な都市ができました。

マリMAP2

・サハラ交易
 紀元前から16世紀後半まで続いた地中海沿岸諸国との交易。交易路はサハラ砂漠を縦断する危険なものでした。地中海経済では金が欠乏していたため、積極的に交易が進みました。
 イタリアではトンブクトゥは西アフリカの黄金郷である、とまで考えられていたのです。
 マリ帝国にとって経済的に重要な役割を果たすと同時に、交易路はイスラムが伝播する直接的な要因となりました。

 マリの輸出物: 金、象牙、奴隷、コーラの実
 マリの輸入物: 塩、ガラス、陶器、武具

・塩と交易路
 マリ帝国首都、ニアニの北北西、約1500キロにあるタガザ(テガーザ)塩鉱が1030年頃に開かれ、交易中継地兼、岩塩の重要な生産基地として利用されます。このニアニからタガザに伸びる交易路は、西アフリカに塩を供給するための重要なものとなります。
 17世紀頃にはタガザ塩鉱は枯渇し、代わりに南南東160キロにあるタウデニ塩鉱が開かれますが、現在でもトンブクトゥにむけ、約750キロの距離をラクダが岩塩を運んでいるといいます。

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・ガーナ王国(8世紀から11世紀、諸説あり)
 マリ帝国ができる一つ前の国で、クンビサレーを首都とするソニンケ族の王国。ソニンケ族は多くの交易路を支配し、中継貿易によって栄えました。
 順調に勢力を伸ばしていったものの、1076年にユースフ率いるベルベル人の王朝、ムラービト朝によってクンビサレーが陥落し、滅亡してしまいました。
 その後反乱がおこり、まもなくムラービト朝が滅びると、スースー族(ソソ人)が力をつけ始めます。

・マリ帝国
 スンジャータの活躍によって、マンディンカ族がスースー族を退け、1230年代に建国されました。滅亡したガーナ王国の土地を吸収し、例によって交易路を支配します。強力な支配を行っていたわけではなく、諸民族の連合国家でした。

 以前より交易路によってイスラム教が入ってきており、聖地巡礼や苦行を王の義務とする習わしがありました。そのために王は征服事業を進める必要があったのです。マンサムーサは1324年に大規模な聖地巡礼をしましたが、それを実現させたのは莫大な資産と強力な軍隊でした。

 巡礼から帰還したマンサムーサは、モスク(イスラム教の教会)やマドラサ(制度化された高等教育機関)を多数建設します。サンコーレ・マドラサ(Civ4でいうサンコーレ大学)は世界遺産になっています。

3.文明ボーナスの出所

これを踏まえて、文明ボーナスについて考えていきましょう。

・建造の際に木のコスト -15%
 ニジェール川流域は肥沃な土地であり、農耕と牧畜はサハラ交易と共に西アフリカを支えていたようです。木材の供給はどうかわかりませんが、冬でも平均最低気温13度と温暖であり、ヨーロッパ諸都市のように不足することはなかったと思われます。
 また泥も建材として多く作られており、木材を比較的少なく建物を作ることができたことでしょう。

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・戦士育成所ユニットの遠距離防御力が時代進化毎+1
 マリ帝国の軍隊にはソファと呼ばれる兵士がいました。ソファ突撃歩兵部隊は木材や獣皮、竹のような葦で作られた盾を持っていました。この盾は顎から膝まで覆い隠すほど巨大でした。
 恐らく金属で作られた盾と違い軽く、持ち運びが容易だったと考えられます。

・金の採掘のアップグレード コスト 0
 マリは金山をいくつも所有しており、そこから採掘した金を輸出してヨーロッパやアラブから様々なものを輸入していました。トンブクトゥは黄金都市と言われていたようです。

・チーム ボーナス:学問所の作業速度 +80
 トンブクトゥに建てられたサンコーレ・マドラサ等の大学によるものだと考えられます。サンコーレ大学には、2万5千もの学生がいたといわれています。マンサムーサは法学や天文学の専門家を中東や北アフリカから招聘したようです。
 こうした学問所と活発な交易によって、トンブクトゥは国際的にもイスラム系学門の中心地としてしられるようになりました。これがチームボーナスたる所以でしょう。

4.ユニークの出所

 続いてユニークユニット、ユニークテクノロジーを調べてみます。

・グベト(投げナイフで戦う女性兵士)
 グベトの興りは、1650年頃、ダホメ王国(ニジェール川下流、奴隷海岸付近)にて、象を狩るために組織された女性狩猟集団のようです。
 グベトが兵士として出てきたのは1700年代になってからで、マスケット銃で武装した王の親衛隊として地位を得ました。1800年代になって軍事主義国家になると戦場に投入され、フランス軍相手に勇敢に戦いました。
 女性が戦場にて個人的に活躍することは珍しくありませんが、国家が組織する対外女性部隊というのは世界的に見ても稀です。

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 このように、時代、地理、成り立ちすべてが、マリ帝国とは一切関係ないようですが西アフリカを代表する戦士として、採用したのでしょう。


・ティグイ(町の中心が矢を射るようになる)
 成り立ちから見てわかる通り、マリ帝国は帝国とはいうものの、内実は諸部族の連合国家です。よって、ソファ(軍隊)も部族単位で編成されました。
 ソファはケレ・クルと呼ばれる、20人の歩兵部隊を一単位として構成されており、この一隊の権限をもっていたのがケレ・クル・ティグイと呼ばれる武官でした。
 このことからティグイというのは組織を取りまとめる役人だと想像できます。おそらくこの役人を研究することによって、防衛戦力を強化するということなのでしょう。

 ちなみにソファは四分の一が突撃歩兵部隊であり、残りが弓兵だったようです。
 突撃歩兵は前述した巨大な盾を持ち、投擲槍とナイフで武装していました。弓兵も突撃歩兵が持つような盾をもち、毒が塗られ返しが付けられた凶悪な矢を放ちました。また要塞に対しては火矢を用いるなど、強力な射手部隊だったと言います。

・ファリムバ(騎馬ユニットの攻撃力+5)
 マリ帝国軍には優秀な重騎兵部隊がいましたが、彼等はファリマ(勇士)と呼ばれる、宮廷に出入りできる身分の騎馬指揮官によって統率されました。ファリムバ(偉大な勇士)はファリマと違って皇室と血縁にあるようです。その社会的な役割は少々複雑らしいのですが、領主や総督、もしくは代官、役人といったもののようです。

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 ちなみに、このマンデカルと呼ばれる貴族の騎兵部隊は、50人の騎士によって構成されていました。貴族はスンジャータが建国の際に生まれました。弓を運ぶ16人の奴隷というように呼ばれていましたが、実際には領主といったところでしょう。
 アラブ馬、アイアンヘルム、チェーンメイル、ランス、サーベル、ロングソード、巨大な盾など、ヨーロッパやアラブから輸入した多くの装備品で武装していました。
 もちろん高価な軍隊であり、貴族の財力に頼ったこともありましたが、マンサムーサの時代には交易路が整備され、1万もの騎馬部隊が組織されました。

 この強力な騎馬部隊によって、マンサムーサは遠くの国境まで力を及ぼすことができたのです。

5.最後に

 こうして調べてみると、歴史や地理に基づいて文明ボーナスが設定されているようであり、良く研究された文明特性のようです。
 スペインやイタリアに交易ボーナスを取られていたことが残念ですが、矛盾はなさそうです。特に近衛騎士がないのはファリムバを意識した結果でしょう。重騎士というよりは重騎兵であり、できることならグラフィックも変更したかったのかもしれません。でもそれならハサーが似たようなポジションなのだから、重騎士の代わりにハサーがあってもいいような気がします。

 そんな中あまり関係のないグベトがユニークユニットとして採用されたのは、いくつか理由を考えることができます。
・グベトが西アフリカを代表する兵士だった
・貴族出身のユニーク騎兵はボヤールがあった
・強力な遠距離歩兵ユニットを出したかった
 スンジャータのキャンペーンをやっていると、グベトを活躍させようとする地形が目立ちますので、忍者にあこがれるように、グベトに燃えた開発者がいたのかもしれません。


 このように、ゲームバランスや多少の開発陣の趣味が入って追加パックは作られているようです。時間があれば他の文明も調べてみたいですね。開発陣の謎のこだわりが見えるかもしれません。

 それでは。

参考ページ
日英独wiki: 諸ページ
African Knowledge.com (非常に詳しく書かれていて参考になりました。)
http://africanknowledge.com/MendeMilitary.aspx

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