見出し画像

高校生の頃に感じた“ある危機感”がUターン就農のきっかけに。トマトを極めて地元に貢献 ー 長野県下伊那郡根羽村のまち自慢

根羽拠点(長野県下伊那郡根羽村)で教育事業に携わっている上村です。
長野県の最南部にある根羽村は、人口約850人の小さな村です。
今回は、根羽村でトマト農園を営む小林 智雄(こばやし ともお)さんに取材をしました。

根羽村出身の小林さんが、なぜトマト農園を始めたのか、今に至るまでにどのような苦労があったのか、そして今後の夢は・・?
取材を通して分かった、小林さんの熱い思いをご紹介したいと思います!



トマト農園を始めたきっかけとは?

中学生までは根羽村に住んでいましたが、高校進学をきっかけに隣町の飯田市に下宿をすることになりました。高校時代はバスケ部に所属し、農業には全く興味がありませんでしたね。
しかし、高校3年生になって進路を考える頃、地元根羽村の良さに気づいたと同時に、平成の大合併で小さな村や町がなくなっているところを目の当たりにしたんです。その時に「根羽村もなくなって、帰る場所がなくなるのは嫌だな」と思ったんです。
「農業がしたい」というよりも「根羽村のために何かしたい!」という思いの方が強くて。今考えると、トマト農家になることはその手段のひとつだったんです。
いずれは根羽村に帰って、村のために何かしたいと思っていて。それを軸に進路も考えていました。ですが、まずはとにかく長野を出てみたいという思いもあり、静岡県の大学に進学しました。

静岡で体感した「どん底」と、そこでの「学び」

大学生活が楽しくて、2年生まではキャンパスライフを満喫していました(笑)
私が所属していた農学部は3年生で研究室に入ることになっていて、そこで「農業を学びに来たんだった!」ってハッとしたんです。静岡県で栽培が盛んな作物の中から、根羽村の環境でも育てることができる「トマト」を選んで研究することにしました。他の野菜に比べてトマトは栽培が難しく、手をかければかけるほど美味しくなるのも魅力のひとつでした。
3年生になってからは生活が一変し、毎朝5時に起きてトマトを育てる毎日に。学んだことを生かしながら実際にトマトを栽培することが楽しくて、のめり込んでいましたね。
大学を卒業してすぐに根羽村に帰ることも考えたのですが、もう少し経験が必要だと思い、研修を行ったり就職をしたりして、5年間静岡で生活をしていました。
ただ、大学の研究とは違い、自分でハウスを持って広大な土地を管理するのは簡単なことではありませんでした。大学で学んだことに自信を持っていた部分もあったのですが、最初の頃はうまく育てることができず、それがとても悔しくて。心を入れ替えて、農家さんのところに行ってアドバイスをもらうなどして、試行錯誤を重ねていきました。
その甲斐あって、次の年には収穫量が格段に増えたんです。やっぱり手間ひまかけてしっかり育てれば、それが返ってくるんだと実感しましたね。これで自信がつき、根羽村で農園を始めようと決めました。

根羽村のために、これからも続けていきたいこと

いざ根羽村に戻ってみると、新規就農者は10年ぶりで、トマトを育てる人は誰もいませんでした。しかし、役場の方は土地を探してくれたり、助成金の申請などを行ってくれたりと、とても親身になってくれました。
最終的に、今の土地は地元の方が貸してくれることになり、村の方々には本当に感謝しています。そして、1年間は静岡県と根羽村を行き来して、2017年の春に小林農園をオープンしました。
誰もやったことがないからこそ、村の人には「大丈夫かな?」と心配されることもありましたが、自分が先駆者になることで、他の人に「根羽で何かしたい!」と思ってもらえると考えています。同級生と話していても「根羽村は働くところがない」と言われますし、確かに都会に比べると選択肢は少ないと思います。しかし、自分の農園で人を雇うことができれば仕事の選択肢も増えると思い、今はパートさんなどを積極的に採用しています。


小林さんのこれからの夢

今までは仕事に没頭することができていましたが、これからは家族との時間をつくったり、働き方を考えたりして、バランスをとる必要があると思っています。そうしないと、自分の成長が止まってしまうし、夢の実現が遠のいていくなと思うようになってきました。
自分は、20代でたくさん挑戦をして失敗をして、やりたいことができたと思っていますし、きっとこの経験が大切だったんだと実感しています。なので、若い人にもたくさん挑戦してほしいと思っています。
これからやりたいことは2つあります。1つは、本当に美味しいトマトの研究です。今は水耕栽培を行っていますが、土での栽培をしてみたいと思っています。どうすれば本当に美味しいトマトが育つのか研究をしてみたいですね。
もう1つは、根羽村の耕作放棄地をなくすということです。根羽村の農地面積は意外と多いのですが、立地や日当たりの問題でほとんどが使われていないという状態です。元々は、根羽村に貢献したいという思いが強いので、後継者が増えたり、耕作放棄地を減らすといったことにも挑戦していきたいと思っています。そのためには、まずは自分の農園を大きくして法人化したり、根羽村の農事組合法人と連携したりして、取組を広げることができればと考えています。




根羽村はなにもないけど、なんでもできるじゃんと思っている。」という一言が印象的で、その言葉通りまっすぐ挑戦し続ける小林さん。
小林さんのつくるトマトは、とても甘くて美味しいと評判です。毎年「小林さんのトマトが食べたい!」と遠方からもたくさんのお客さんがやってくるほど。

取材を通して感じたのは、美味しいトマトづくりへの情熱と技術だけではなく「根羽村のために」という小林さんの思いが詰まっているからこそ、美味しいトマトが育ち、たくさんのファンがいるということ。

小林さんの愛情たっぷりのトマトが気になった方は、ぜひサイトをご覧ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?