ミセスが好きだと知った日の話。

何かを好きであると自覚するのは意外と難しいのでは無いかと思う。
特に私の場合は「なんとなく良いな」と思って、そのシンプルな『良い』の辺りをふよふよ浮いているだけ。
それ以上のちゃんと形のある好きにいまいち辿り着かないことが多い。


ただし、Mrs. GREEN APPLEは明確に「あぁ、私はこんなにも好きだったのか」と自覚出来た。


Mrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)のことは気になるアーティストではあった。
分かりやすくその始点を言葉で表すならば『WanteD! WanteD!』がドラマの曲に使われていたのを偶然聞いた日である。

「だんだん簡単に心が壊れてしまうようになったな」
この歌詞の『れ』の声にそれまでラジオ感覚でテレビをつけっぱなしにして、何かしらしていた私は思わず顔を上げた。


ちなみにこの時はまだミセスの名前は知らない。
のんびりしていて、スタッフロールのどこかで流れたであろう名前を見逃したのである。
新聞の番組表を片手にGoogleにドラマの名前を問いかけて、この曲を歌っているアーティストが『Mrs. GREEN APPLE』というバンドであることを知ったのが出会いだった。

私に顔を上げさせたそのボーカルの名は、大森元貴さん。
バンド名と似合いの爽やかな名前だと思ったし、なんかすごく緑だなと思った。
農園というよりは、自然の森の中に青りんごがたくさん成っているような想像をした。


とは言っても、その時はそれ以上ミセスを追いかけようとも思わなかった。
ただ、『WanteD! WanteD!』が良い曲だったからTSUTAYAで借りられるだけミセスのCDを借りてきて一応一通り全部聞いた。
『Oz』が1番好きになった。



次に見たときは既にフェーズ2だった。
なんとなく休んでいたことは知っていたのだが、気がついたらいつの間にか戻ってきていた。
3人になって、メンバー全員が美しくなっていた。
バンドからミュージカルの出演者になったみたいだと思った。

初めて聞いたのは、『ダンスホール』。
あの歌っていた人が踊っていた。
というか、全員踊っていた。
器用だなと思ったし、ますますミュージカルみたいだとも思った。

それでも私は深くハマることなく。
遠巻きに「凄いなぁ」と眺めているだけで何もアクションを起こさなかった。
本格的にハマったのはここ数ヶ月の話になる。

きっかけは『ケセラセラ』だった。
私は何も見たいものが無い日曜日はNHKののど自慢を見ているのだが、そこでやたらよく歌われるなぁと思っているうちに興味が出てきた。
そんなに人気の本家はどんなものかとYouTubeでMVを見た。

私、号泣。


なんじゃこりゃ(賞賛)
そりゃ、のど自慢で歌う人も出てくるわと納得した。
ていうか、本家ミセスの歌が上手すぎた。
歌詞に歌い方から歌声から何もかもが合っていて、とにかく純粋に「歌、上手いね!!」と本当に思った。


それから歌番組でミセスを見ると、毎回毎回私は歌声で浄化しかけた。
子供の頃からそんな感覚があったのだが、私は美しさに対して異常に敏感に反応出来る。
特に視覚・聴覚に訴えかけてくるものがビタっとハマると、合法的にぶっ飛べる特異体質なところがある。

ブワワッと体に鳥肌が立って、脳味噌が蕩けていくような感覚になり何も考えられなくなる。
美しさに触れた時の体の反応の極致とはこういうものかと恐怖すら覚えた。
心臓が本当にバクバクするのだから、最早ミセスの楽曲はある意味私にとって危険なシロモノとなったが、美中毒にはこの感覚が辞められなくなった。


そうやって、少しずつ好きかもなと思い始めた頃に『コロンブス』の一連の騒動が起きた。
その日、遅めの朝に起きた私は何の騒ぎかいまいちよく分からず。
Xを眺めていると、どうもミセスのMVの話のようだと気がついた。
MVを見たのは既に良くない点を知ってからだったので、「ここが問題なのね」という程度の感想だけだった。
私もまたコロンブスという人に対して、船乗って大陸見つけたおじさんという知識しか無かったから尚更である。
今は彼の知られざる部分を知ったので印象も変わったが、この騒動が無ければ知らないままだっただろうと思う。


今までなら、ミセスにも試練か…と思うだけだっただろう。
だけど、そうじゃなかった。
私はその日、1日中ミセスのことを心配していた。
私が何も知らないだけで、何かしらの騒動はこれまでもあったのかもしれないがここまでの大炎上を見たのは初めてだった。
だから、どうしようもなく心配だった。

見ようと思っていたMステの出演はそのままだった。
よく分からないけど、見なければいけないと思った。
当日、番組が始まるまで怖かった。
本人達の方がずっと色んなものを抱えていただろうに。
どんなふうに見たらいいのか正解が分からなかった。


『Dear』はこれまで見たどの素晴らしいパフォーマンス以上のものを見たと思う。
大森さん、若井さん、藤澤さん全員がそれぞれ魂を削っているように見えた。
特に全ての出来事の先頭に立っている大森さんは、ライティングのせいか現世と別の次元の境目にいるような気がするほど命懸けに見えて圧倒された。

最後の『青と夏』は、涙を堪えられなくて泣きながら聞いた。
それは、ミセスは大丈夫だったという安堵だったのか。
それとも、起きた一連の出来事への悔しさだったのか。
もしかしたらどっちもだったかもしれないけど、とにかく泣いた。
だけど、演奏が終わった時に「良かった」と思ったのだけは間違いない。
それと同時に、私はこんなに心を痛めて費やすほどにミセスが好きだったことにようやく気がついた。


2017年から7年もかけてようやく私はミセスを好きになった。
スロースターターも良いところである。

お金も払ってないのに好きだとかファンだとか言っていいのかと悩んでいたが、最近大森さんが何やらインスタライブで色々と言及してくれた。
私は数値化出来るものは何も持っていない。
だけど、私が体感してきた自らの心身に出る反応を元にして言いたい。


私は、Mrs. GREEN APPLEが大好きです。(了)

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